【感想】今こそアーレントを読み直す

仲正昌樹 / 講談社現代新書
(61件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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9
2
0

ブクログレビュー

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  • djuax

    djuax

    英では契約や慣習法の基本原理を確認する形で新たな制度が構築されていったが、日本では政権が交代するたびに大宝律令・御成敗式目・武家諸法度など、基本となる考えがどのように継承されてきたのか曖昧。日本で制度論的な保守主義を考えるのは困難。天皇制以外に守るべき制度がないため、日本の保守思想は、制度よりも精神論や文化論に力を入れてきた(例:西部邁・佐伯啓思)。ただし、細部を見れば、日本の法・政治にも慣習は見られる。日本の憲法には、政党の役割に関する規定はなく、政党が何のために存在するのかについて規定がないにもかかわらず、立法府は政党の協議によって運営されてきた。p.214『精神論ぬきの保守主義』★4

    個人と共同体の境目。宗教・習俗・風習は生まれた時点で他者から与えられるもので、自分の意志だけで選択できるわけではない。徹底したリバタリアンでも、自分で選択したわけではない共同体の文脈の中で、共同体の中の他者と互いに制約し合いながら生きていかざるを得ない。p.181『不自由論』★4

    現代思想が日本で急速に人気がなくなったわけ。構造主義・ポスト構造主義をけん引していた思想家が亡くなった後、仏でスターが現れなかった。日本の大学で第二外国語の比重が低下し、仏・独語を読める・読もうとする研究者が激減した。学生の間でフランスやドイツの文化に対する憧れが弱まった。哲学の業界で、英語圏の影響力が高まり、仏・独の影響力が低下した。p.284『現代思想の名著30』★3

    ************
    『悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える』★4
    『いまを生きるための思想キーワード』★3
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    投稿日:2024.05.01

  • snowdome1126

    snowdome1126

    ハンナ・アーレントの思想を、彼女の著作を軸に、現代にひきつけた問いから整理した書。少ない文章量の中で鋭くまとまっていて、読み応えがあった。

    今回とくに面白かったのが、第二章「『人間本性』は、本当にすばらしいのか?」。

    「アーレントは、そうした冷厳な現実を踏まえて、『人間性のすばらしさ』あるいは『ヒユーマニズム』を無邪気に信じ、それを信じることによっていつかユートピアが実現できると思っている"良心的"な知識人たちに警告を発しているのである。無邪気な『人間性』信仰は、その理想に合わない者を排除する全体主義に繋がりかねない、と。」

    私自身、思想や哲学の本も、新聞やテレビのニュースも、今の現状を見通す物語を期待して読んでいるふしがある。現実はそんなに単純ではない、冷静であれ、と釘を差された気がします。
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    投稿日:2024.02.14

  • つー

    つー

    やはり最後まで一気に読んでみて感じたことはただ一つ、解りづらいの一言である。それは本書がわかりづらいのではなく、ハンナ・アーレント自体の考え方が非常に中庸的というか、世の中のわかりやすい議論が白が黒か左か右かといった風潮の中で、極論はなくあくまで白と黒左と右の中間地点にいるからではないだろうか。これはよく考えれば当たり前のことで、日本の政治を見ていれば感じることが多い。政党全体でまともな頭の人たちがあれだけ集まっていて、与党と野党の意見がすっぱり割れるなんて事はあり得ない。ましてや100人を超えるような組織の構成員が全員右か左かなんてあり得ないし、どっちつかず、よく言えば双方の良いところどりになって当たり前だからだ。アーレントは著書「全体主義の期限」において全体主義の成立を説明するが、確かにマルクスの様に労働階級が資本家の搾取から解放されるための闘争とするのに対して、大衆が深く考えずに明確な意見に迎合していく危うさを説いている。これくらいならまだまだ基本的なアーレント読者にはわかりやすいのだが、極端な状態を極力否定していくイメージが私の中では強い。
    私生活においても恋愛などから多くの学びと影響を受けていたと思われるが、そうした背景には本書は触れずに、あくまでアーレントになり切った筆者が、彼女の主張を代弁していく形をとっており面白い。またその解説も「分かりにくい」「掴みどころがない」事を大前提に書いてくれているおかげで、アーレントの今まですっ飛ばして読んでいた世界から、立ち止まって考える時間をくれるものとなっている。
    世の中そんなに、左も右もはっきりしておらず、自分の意思を示さずに、ただ大きな力に流されがちな我々一般市民に対して、責任持った発言と行動を強く呼びかけ、自分主義から公共の利益に考え方をシフトする。そんな本来社会ができて当たり前の事ができていない現代社会。改めてアーレントが再注目されている背景には、そうした政治や考える事を避ける国民に対して大きな警鐘を鳴らしてくれる。
    ちなみに本書の構成はアーレントの人物性に先ずは若干触れ、その後「悪」とは何か、「人間の本性」人が如何にして自由になれるなか、そして実践・参加することの意義と意味という流れで、アーレントの著書である「イェルサレムのアイヒマン」や「全体主義の起源」「人間の条件」を引きながら筆者自身の解釈を展開していく流れになっている。新書のページ枚数に纏めるのはその選択も大変だったであろうが、我々読者がアーレントに触れやすい内容だと思う。
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    投稿日:2023.08.26

  • 中尾

    中尾

    アーレントの思想がますます分からなくなった(いい意味で)確かに彼女のイデオロギーや思想の立場を定義するのは非常に難しい。アーレントをよく知らなかった時は、リベラル論者だと思っていたが、一般的には右寄りの認知されている、しかし日本では左派から評価を受けることも少なくない。複雑な理論であるが故に、右・左の二元論で片付けるのは不可能なのだろう。続きを読む

    投稿日:2021.05.29

  • アリサカユキ

    アリサカユキ

    わかりやすい、または受容しやすい政治は、全体主義につながる恐れがある、人それぞれが、政治に直接関わろうと関わるまいと、「複数性」が保たれる事が大事。と言う風に読みました。

    投稿日:2020.05.23

  • keiwacollege

    keiwacollege

    なぜ人々はナチスを支持したのかという問いに、人類社会の構造や進化から答えたハンナ・アーレント。難解なその思想をわかりやすく解説。

    投稿日:2019.12.27

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