【感想】エブリシング・イズ・イルミネイテッド

ジョナサン・サフラン・フォア, 近藤隆文 / NHK出版
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
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ブクログレビュー

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  • see_you_cowboy

    see_you_cowboy

    「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のジョナサン・サフラン・フォアの24歳の頃のデビュー作。なんの前知識も無く題名に惹かれて読み始めたが、ホロコーストにまつわる物語だった。感想がまとまらない。

    作者がモデルであるアメリカ人青年ジョナサンは、ユダヤ人祖父を助けてくれた女性アウグスチーネを探しにウクライナを訪ね、怪しい英語を使うウクライナ人青年アレックスとその祖父、犬のサミーデイビス・Jr. Jr.と旅をする。物語は3層構造になっていて、アレックスからジョナサンに宛てた手紙、アレックスの手記、ジョナサンが書いたウクライナの歴史小説が組み合わさる。アレックスの文章はユーモラスで、ジョナサンの小説は神秘的でエロスと死の香りがする。

    手紙と手記はアレックスの怪しい英語のために読んでいてかなりの取っつきにくさであるが、このウクライナ人青年アレックスが、通じないかもしれない言語を使って、それでも果敢にユダヤ系アメリカ人ジョナサン(と、ジョナサンを通した私達読者)に語りかけるところが肝である。アレックスは懸命に書く。最初はどことなく能天気に思われたが、旅が進むにつれ、異邦人であるジョナサンと心通わせるようになり、もっと、もっと、と話し、書く、きみのことをもっと話してください。それは二人の間にとても距離があると彼が自覚しているからだ。

    しかしその距離は実は彼らが思うほど遠く離れてはいなかった。旅の終わり、アレックスの祖父が堰を切ったように過去を語る。今まで誰にも言わなかった事を。ホロコーストのもとに「より小さな方の悪を選ぶ」という選択。アレックスの祖父とジョナサンの祖父は、ウクライナのどこかですれ違っていたかもしれない。どこかで何かがずれていればアレックスとジョナサンは出会うことは無かったーー。

    私はこの物語の終わりが好きではない。だが自分の弱さと愚かさに歯噛みをする日々の私には、アレックスの祖父を責める資格が無い。彼の過去の選択と、そして最後の選択は……何と言っていいかわからない。どちらも家族を思ってした事で、間違っているとも間違っていないとも言うことが出来ない。過去とのつながりを断つためにした事は、かえってその過去と孫のアレックス、そしてジョナサンとのつながりを強めてしまったし、アレックスは心がズタズタになっただろう。
    死なないで欲しかった。たとえそれまで自分一人で何十年も抱えていたとしても、旅を終えたアレックスと一緒に、自分の過去のその選択を、生きて考えていって欲しかった。そして作者はそうやって彼らを傷付けることで読者にボールを投げたのだ。

    この本には答えが無い。私が出来るのはずっと考えていく事だけだ。彼の、そして私の選択を。


    それと……読みながら、「映画になってそうだな」と思ってたら、なっていた。しかも何年も前に映画館に観に行っていた。読んでて全く気が付かなかったので脳がスポンジ状の可能性ある。
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    投稿日:2014.12.27

  • metempsychosis

    metempsychosis

    このレビューはネタバレを含みます

    祖父のルーツをたどるためにウクライナを訪れるジョナサン(作者自身をモデルとした人物)と、道案内役である少年アレックス(通訳)とその祖父(運転手)の3人が「トラキムブロド」という村を探すロードムーヴィー的な物語と並行して、1791年にはじまる「ジョナサン」の血族史が語られる。

    アレックスからJ.S.フォアへの手紙(現在)、アレックスが記すトラキムブロド探訪記、ジョナサンが取材後に記す自身の祖父についての物語(1934~41年)、1791年にはじまるジョナサン・サフラン・フォアの歴史(客観的視点から描かれている)、の4つのレイヤーによって全体が章立てされ、構成されている。

    このような多重的な視点(語り手)、少年が老人とともに「なにか」を探すために未知の土地を訪れそこでの出会いから物語が拡散していくところ、時間軸の自由な往来、そしてユダヤ人差別とナチスによる侵略という主題を設定しつつもそこにメッセージを持たせようとしない立場、などなど、のちの『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(主題としては自らの血やナチスによる侵略が9.11に置き換えられている)でのスタイルはすでに本作で確立していたことを知る。

    J.S.フォアのこの2作、さらに最新作の試み、を眺めると、ビジュアルライティングの比重が肥大してきているようだが、ビジュアルと物語の力とのバランスをどのようにとっていくのか、あるいはそれを超えるような新たなしかけを生み出していくのか、「これから」な作家だ。

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    投稿日:2013.03.26

  • yuru1165

    yuru1165

    装丁がカッコイイので借りた本

    誰かのレビューで100ページ過ぎたらおもしろくなるって書いてたので
    ガマンして読み続けたけど
    最後までおもしろくナイ

    最後まで読んだのでギリギリ星2つ
    最後まで読むのは苦行だった…続きを読む

    投稿日:2013.02.13

  • たろー

    たろー

    このレビューはネタバレを含みます

    『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のジョナサン・サフラン・フォアが若干24歳にして書き上げた長編デビュー作。長いこと絶版で、入手困難な状態が続いていたが、この度、電子書籍版が発売された(しかもキャンペーン中だったのか、無料!)ので、すかさず購入。

    物語はユダヤ系アメリカ人のジョナサンが祖先のルーツを探すためにウクライナを訪問し、そこでガイド役のアレックスと運転手役のその祖父と出会い、旅をするというもの。

    全体の構成として、アレックスからジョナサンへ宛てた手紙、アレックスがジョナサンとの旅でしたためた手記、ジョナサンが書いた小説の3つの文章が交互に書かれている。3つの文章がそれぞれ独特の語り口で交錯するため、(特に序盤が)読みにくいと感じるが、全体の1/3を過ぎると、物語は一気に加速し、読む者の心をつかむ。

    初めに語るべくはやはりアレックスのユーモアに富んだ語り口であろう。「ユーモアだけが、悲しい話を真実として伝えられる」と筆者のジョナサン・サフラン・フォアは語っており、そのことは単行本のあとがきでも指摘されているが、とにかく主人公アレックスの会話のリズム、言葉の選び方にはユーモアが含まれている。ジョナサンの質問には的を得ているようで、的を得ていないような肩すかしの回答で返し、通訳として祖父の間に立つと、ニュアンスを微妙に変えて互いに伝える。その様子はとても滑稽だし、読んでいて非常におかしい(翻訳は大変だっただろうが)。しかも、それが全く悪意を含んでいないところが良いのだ。温かみのあるウソ、実直な会話、だからこそ後半の悲劇的な局面がことのほか悲しく響いてくるのだ。

    そして、祖父の物語。終盤に一気に加速する。その描き方は巧みだ。それまで能天気でいた読者も、祖父の息もつかせない告白に一気に引き込まれる。「息もつかせない」とは文字通り、句読点や段落区切りがないのだ。それ故に、祖父の傷の深さ、ユダヤ民族の悲劇性がすごみを帯びている。これを若干、24歳で書き上げたとは驚き。

    本作は【僕の大事なコレクション】という邦題で映画化されている。
    私は映画版を先に見てから本書を読んだが、設定がまるで違うので、どちらも十分に楽しめる(孫アレックスの独特の言い回しなどは、映画版を見ていたらイメージしやすいだろう)。しかし、あえて注意を呼びかけるとすれば、映画と原作では全く設定が違うため、どちらかのイメージに引きずられてしまうことだ(祖父、アウグスチーネ、ジョナサン…すべての人物の設定が違うので、結末には驚くだろう)。

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    投稿日:2012.03.11

  • lukonto

    lukonto

    ユダヤという大きく深いテーマをユーモアの中で描いた力作。難点は翻訳。にもかかわらず、作品の魅力は十分に伝わるのだからこの作者は本当にスゴイ。

    投稿日:2012.02.19

  • saki

    saki

    5年前に買って読んだけど、序盤で理解不能になって挫折。。。

    それから読んでません。

    今度ストックが一通り終わったら読んでみよう。

    投稿日:2009.05.23

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