【感想】群青の夜の羽毛布

山本文緒 / 文春文庫
(55件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
10
19
16
4
0

ブクログレビュー

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  • 四季子

    四季子

    不気味な感じがする女所帯の秘密が暴かれていきます。
    読み終えて多少はスッキリしたけれども、今後この家族はどうしていくのかなと。
    母親だけは救いがないような。
    ただ人は誰しも登場人物のどの人にもなりえるような気もして。
    多分皆幸せになろうとしたのにその方法がわからなくて、増悪がうずめいてしまう。

    他人事のような身近なようなお話です。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.11

  • みいちこ

    みいちこ

    BOOK・OFFでタイトルに惹かれて購入。あっさりとした文体で描写のイメージがしやすく、また物語も面白かったので一晩で一気読みしてしまいました。最後のシーンではあと数ページしかないと物語が終わってしまうのを惜しむほど毬谷家と鉄男からなる物語にどはまりしてしまいました。また読みたい小説です。続きを読む

    投稿日:2022.12.20

  • naonaonao16g

    naonaonao16g

    真面目って病気だ。
    正論が人を強くするのか、弱い人が正論に縋るのか。

    山本文緒さんの作品。わたしが初めて読んだのは、「プラナリア」だった。
    2020年6月末頃のことだ。
    そして、この作品のレビューをベースに、わたしはエッセイを書いて、初めて応募した。
    そんな大きな一歩を踏み出させてくれた山本文緒さんが、とても若くして亡くなられた。
    早い。早すぎるあまりにも。
    わたしはと言えば、遅かった。あまりにも遅すぎた。彼女の作品に触れるのが。
    「自転しながら公転する」
    この作品を読んで、もっともっと彼女の作品を読みたいと思った。
    もう、今ある作品を、魂を込めて読むことしか、今のわたしにはできない。
    これではまるでゴッホじゃないか。
    悔しい。寂しい。作品は作品として残るけれど、作品だって、生き物だ。わたしはそう思う。

    この作品は1995年に単行本で出版されている。
    1995年といえば、J-POP全盛期で、とにかく毎日違う名前の歌番組が、前日と違う放送局から流れていた時代だった気がする。子どものわたしには、歌詞はあまり入ってきてなくて、だけどとにかく曲を聴いてた。
    その裏側で、この物語もひっそりと存在していた。
    とても静かに。
    毛布でくるまれて、部屋の片隅で、息をひそめて。
    毒に侵された家族を、優しく包み込んでいたのだろうか。それとも、隠していたのだろうか。
    まるで家に根が生えていて、根ごと毒に侵されているような。
    主人公の様々な心身の不調。毒親は普通、これを放っておかない。なのにそれを放っておく違和感。
    主人公目線の章にも関わらず、確実に語られていない何か。巧妙にまだ語られていない何か。
    章の冒頭で語られるカウンセリングを受けている人物の正体。
    なぜ主人公はこんなに病んでいるのか。
    なぜ恋人はこんなにケアできるのか。
    違和感の正体は、最後にどばっと、溢れ出る。
    ここまでしないと、毒親の根は切れないのか。

    みんながみんな、自分のことを罰している。
    自分が誰かにしたことの罪を、ずっと抱えている。
    それを利用する母親。抜け出せない主人公。抜け出したい妹。共依存。
    毒親に植え付けられた罪悪感という感情は、他人から受けるどんな罰よりも思い罰なのかもしれない。
    ただの「真面目な人」では済まされない程の、強すぎる正論は、人を暴走させる。
    でもなぜ。
    正論で言うならば、暴走して人を傷つける方が悪いに決まってる。
    なのになぜ、正論が勝っているのだ。
    週刊誌でプライベートを明かした方が責められていいはずなのに、プライベートを明かされた方が謝っているのはなぜなのだ。
    正論は、真面目なのは、正しいけど、どこか間違っている、狂っている。

    最近複雑な音楽が流行っている中、昔の曲、特に90年代の曲って今より単純で聴きやすい。だから歌詞もすんなり入ってきて、浜崎あゆみとか今聴くと、なんか、かなりくるものがある。
    「人を信じることっていつか裏切られ~
    はねつけられる事と同じと思っていたよ~」
    リピートしてる。「A song for XX」この曲のメロディーと歌詞の威力は結構すごい。
    なんだかすっかり90年代に侵されている。
    続きを読む

    投稿日:2021.11.21

  • ユカリ☘

    ユカリ☘

    どうにもジャンルの分類に困る本だ。
    読む前に帯を読んで『恋愛小説』と登録したが、読み終えて、どうやら違う。なんだろう?
    ああ、そうだ。ホラーだ。と納得する。

    読みながら、首元に鋭利なカミソリ、エッジのきいたナイフを充てがわれているようなひんやりした感覚が付きまとう。
    読み終えてもなお、黒板を引っ掻くような言いようのない感覚。不愉快。
     
    父親にも母親にだけでなく、読みながら可哀想と信じていたサトルにまで湧く憎しみに近い怒り。
    鉄男には全員を構うことなく捨てて欲しい。
    いくら親が毒であったとしても、私はサトルがイヤだ。サトルを構っちゃダメだ。
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    投稿日:2021.11.14

  • kazekaoru21

    kazekaoru21

    このレビューはネタバレを含みます

    毒親の呪縛という題材の小説は数あれど、中でも強烈だった。読み終え、ぐったりエネルギー持っていかれた。主人公さとる(女性)24歳、体調を崩しメンタルをも病み(それには理由があった)、大学を中退、家事手伝いの身。行く場所といえばスーパーと図書館、地味な毎日。教師と塾講師をする母、厳格で激情型、娘を異常なまで操る(しかしとても気高く魅力的)。登場人物の中で一番屈託がなく真っ当な妹みつる。スーパーで出会ったさとるの恋人、大学生の鉄男(人間臭くて正直で憎めない)。
    その家独特の「癖」ってある。人様には見せたくない一面。人を招くより人様の家を訪問した方がどれだけ気楽かわからない(私の場合)。さとるに惹かれている鉄男は、徐々にさとるの家族に取りこまれ、様々な事情を垣間見、馴染んでゆく(感化されてゆく過程をみた)。最初に家族と一緒に食卓を囲む場面は面白かった。心理描写が分かりやすく、興味でどんどん読みが進んでいく。鉄男を婿養子にともくろむ母は、さとるの居ぬ間に鉄男に根回しをする。
    すったもんだがあって、何とこの母と鉄男は一時限りの過ちをおかしてしまう(この母のすることはわからない)。
    この家族は特殊といえばそうだが、ひとつひとつ取ってみると、世間で無さそうであるかもしれないって所がリアルだ。歪んでいる母、家族、だけどなぜ「愛着」は沸くんだろう。あちこちで行き場を無くしたさとるは、あれだけ放り出した家へ、それでも帰ろうとする。後半、父の存在が見えて、それからは目が離せない展開。映像が次から次へと飛び出してくる。イメージは暗い群青色。同じ作家さんでもこんなにカラーが違う。(前に読んだ「なぎさ」は海の水面の青というように。)
    ラスト、さとるは破滅させ、家族は・・。そこまでしなけりゃ親から解放されないとは。さとるを見ていると鬱積してる人のなれの果てのようだ。もっと感情を小出しにすればいいのに。きっと鉄男と出直せる。
    狂っているのは母。そして父の復讐、さとるの懺悔。でも父もさとるも狂っている、結果的には。やはりこれはとても怖い話だ。
    「他人には言わないような酷いことも家族の間では口にする、そして家という閉ざされた場所では、よその人には見えない恐ろしいことが起こっても、すぐ隣に住んでいる人さえ気がつかない」
    時々折り込まれるカウンセリングの部分が、真に迫っていて良かった。最後の3頁が心に染みた。父の愛を感じた。
    こんなに胸が締め付けられるとは。かなり好きです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.06.25

  • Yurico

    Yurico

    丘の上の家でひっそり暮らす不思議な女性・さとるに惹かれていく大学生の鉄男。しかし次第に、母親に怯え、他人とうまくつきあえない不安定な彼女の姿に疑問を募らせていく。母娘三人の憎悪が噴出するときに見えてくる、戦慄の情景とは―。恋愛の先にある家族の濃い闇を描いて、読者の熱狂的支持を受け続ける傑作長編小説。続きを読む

    投稿日:2021.01.27

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