【感想】タンノイのエジンバラ

長嶋有 / 文春文庫
(50件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
9
22
10
2
0

ブクログレビュー

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  • ksk84

    ksk84

    好きな作家・長嶋有さんの作品、久々に読んだことのない作品を…と手に取った本作。

    いやぁぁぁーーー、この作品めっちゃ素敵ですねーーー( ̄∇ ̄)

    長嶋有さんは何作か読みましたけど、一番最初に読んだ「猛スピードで母は」を読んだときの衝動を思い出させてもらった気がしました…
    そうそう、長嶋有さんの良さはコレだよなぁ…と。

    一言で表すと「もう空気感最高過ぎ」なのかなと…(´∀`)
    個人的には「エモ写実主義」ってワードが浮かびました、けっこう気に入ったんだけどどうだろう…(笑)

    潔い装飾しすぎない文章、密度が濃すぎず作品全体に漂う程良いヌケ感、けっして現実を美化し過ぎない(自分はそこがとても写実的だなと感じる、現実っちゃこんなもんよねのラインを逸脱しない)、でもそれでいて希望を忘れない前向きな物語…言葉にするとそんなところが好きなのかなぁと。

    上記の良さがあるので、短編とはとても相性が良いんではないかな…とも思ったりもしました。
    猛スピード…に続く代表作にして良いんじゃないかなと。

    最近アウトドア本ばっかりでサボっていたので、読書熱を復活させてくれた長嶋有さんに感謝( ´ ▽ ` )笑


    <印象に残った言葉>
    ・こういうシチュエーションの映画があるな。孤独な男と女の子が旅するような。比べれば現実はいつも垢抜けない。(P29)

    ・トレイから瀬奈の忘れていったCDが出てきた。ビールを飲みながら改めて聴いてみた。夢は信じるだけじゃ駄目、とかなんとか、聞いたふうなことを歌っていた。(P38)

    ・あぐらをかく姉をみるのは初めてのように思う。忍び込む姉も金庫やぶりをする姉も初めてなのに、私が感じ入ったのはあぐらだった。(P45)

    ・弟は階段の途中で立ち止まった。振り向くと今度はジャンパーのポケットから蜜柑を取り出した。弟はその場で皮を剥き、三つに分けると、姉に二つ手渡した。姉は振り向いて私に一つくれた。(P104)

    ・「そうか」とあっさり納得した。僕に軽く微笑みかけるとまたすぐに目を閉じた。僕は二つ並んだ横顔を横目に、成田までをついに眠らずに過ごした。(P144)

    ・それから、自分でも信じられないほどの大きな声で叫んだ。声が出尽くすと、また息を吸った、金切り声をだした。声を振り絞ると体がびりびりと震えるのが分かった。手をにぎられて、目と耳が熱くなった瞬間に似ていると思った。はずみで目から涙がぽろぽろと出てきたが、気にせずに叫んだ。悲しいのだから、涙は出てもいいのだ、と秋子は思った。(P216)


    <内容(「BOOK」データベースより)>
    人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。
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    投稿日:2023.08.20

  • 葦

    エリザベス女王が亡くなって頻繁にエジンバラというフレーズを聞いてたタイミングで、あ そうやと思って読んだ。タンノイのエジンバラってそういうこと〜?って表題作読んでなった。四作とも題名が出てくるタイミングが絶妙〜と思った。と同時にそこを題名にするんやおもしろいという感覚にも。続きを読む

    投稿日:2022.09.29

  • 枝乃

    枝乃

    このレビューはネタバレを含みます

    短編集。表題作は、隣家の母親から娘を預かる男も、男に預けられた女の子も、どこか緩い。山も谷もないが、一期一会の思い出には十分な一夜の話。「夜のあぐら」愛人、ニート等々、複雑な家庭環境ながら陰湿な感じはなく、三姉弟や父娘の淡泊で不器用なコミュニケーションが目立つ。姉妹が、実家の金庫を盗もうとする様子もどこか笑いを誘う。「バルセロナの印象」弟夫婦と姉のスペイン旅行。「三十歳」哀愁が残る読後感。

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    投稿日:2022.07.26

  • chisa

    chisa

    長嶋有さんの作品、久々に読んだ。
    一番印象的だったのは夜のあぐら。
    大人になってからのほどほど距離感のある兄弟関係。父の体調悪化で、実家に来て初めて知る新たな父の愛人など、場面に入り込んでしまう描き方が素敵だ。
    最後の三十歳も面白い。ピアノと関係のない仕事がいいと選んだパチンコ屋。そこでの出会い。
    ひとつ一つの判断、エピソードが、そう考えることあるなあと思う。淡々としたかきぶりだけど、心地よく読み終わった。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.29

  • na2ko3

    na2ko3

    「バルセロナの印象」
    「あれだけが楽しみだった」という、バルセロナオリンピックのキャラクターグッズをめぐるやりとりが面白かった。
    手に入れて舞い上がるほどうれしいわけでもなく、失くして塞ぎ込んでしまうほどでもない。
    でもそのくらいやってのけたのと同じだけ、連れの二人を奔走させる。
    誰の願望も取りこぼしてはならない。悔いが残ってはいけない。せっかくスペインまで来たんだから!
    この意地こそ、海外旅行の醍醐味なのかもしれないと思った。
    大人らしい諦めのよさを大人が手放す数日間。
    けろっと日常にもどるところまで想像できて、それも楽しい。
    続きを読む

    投稿日:2022.03.21

  • まっしー

    まっしー

    ■きっかけ
    netflixのthe crownを見ていて、エリザベス女王の旦那フィリップ殿下が「エジンバラ公」と呼ばれてるのを聞いて、突如「タンノイのエジンバラ」という単語を思い出した。

    ■概要
    然アパートの隣人の女性から小学生の女の子を預かってほしいと言われた。その子は部屋でタンノイのエジンバラに興味を持っていた

    ■感想
    長嶋有の文書って落ち着くなー。久しぶりに小説読んだけど、なんの特徴もないエピソードをこんなに楽しく読ませるなんてすごい!読後爽やかな気持ちになりました
    続きを読む

    投稿日:2022.03.03

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