【感想】新宿歌舞伎町 マフィアの棲む街

吾妻博勝 / 文春文庫
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • motokoo68

    motokoo68

    「新宿歌舞伎町 マフィアの棲む街」

    時代が古いし長いけど面白かった!


    この本は、1990年代の闇社会の話です。
    作者は、今話題のセンテンススプリング(週刊文春)から「闇社会についてルポ書かない?」と声をかけられたそうで、
    この本は当時の文春の連載をまとめたノンフィクションもの。

    思っていたよりかなり長くて時間かかりましたよ(ーー;)


    すごい面白いんですけど、いかんせん時代が古すぎた!
    読み始めてすぐ「これ、今のルポはないの?」と悔しくなってしまいました。
    すごく面白いんですけど、20年以上前だから、今の歌舞伎町とは違うんだろうな、という残念感があります。

    ただ、そういう残念感があったとしても、読み物としては面白い。



    妖怪ウォッチの冒頭で、ウィスパーがケイタ君に
    「人間が住んでいる人間世界とは別に妖怪がすむ妖怪次元がある」みたいな説明をしてたんですけど、この本を読んですぐ、それを思い出しました。

    私は中央線をこよなく愛する人間でしたので、歌舞伎町にもよく飲みに行ってたわけですよ。
    その、私が知っている歌舞伎町を人間世界の歌舞伎町に例えるなら、ここで書かれている歌舞伎町は、妖怪次元です。
    見える世界が全然違っています。
    どっちの世界の住人なのかで、同じ歌舞伎町でも見えてる世界はまったく違うんだな、という衝撃がありました。
    小説やドラマでも闇社会の話はたくさんあるけど、これ、古いとはいえノンフィクションですからね。。。
    時代が違ったとしても自分の知ってる場所にこういう闇社会が広がっていて、ポッカリと間口を開けて落ちてくる人間たちを引きずり込んでいく生々しさみたいなのがあります。


    この連載してる当時、私は秋田の中学生。
    我々の学年はミュージカルをやったり見たりする機会が多々あったもので(笑)、
    中3の修学旅行では、花の東京、歌舞伎町にあるコマ劇場で、藤田まことのミュージカルを見に行くという、なんともいぶし銀な思い出があります。
    なので、この連載をしていた作者が歌舞伎町界隈をウロウロしていたときに、私も一瞬ウロウロしてたんですよ。

    上野の方にバスで移動してたらパトカーとか救急車の音が聞こえて、「東京ははおっかね〜」なんて言ってた思い出も。。
    アァ懐かしい。


    この本の話に戻します。
    この本は歌舞伎町の裏社会で暗躍するヤクザと各国のマフィアについての話なんですが、表社会も裏社会も共通してるな〜と思ったのが、
    世界は結局いつだってオトコとオンナを中心に回っているのだなという点でした。
    (当たり前ですが。)

    各国のマフィアが、日本で拡大していくときのキッカケは、まずその場所に自国のホステスを潜り込ませることなんだそうな。
    ホステス経由でカモとなる人間を集め、賭博やおクスリや拳銃売買だとかを広めていくとのこと。

    時代が変わっても男女問題ってのは常に人間の行動に密接に絡んでいて、人を幸せにもするし、際限なく不幸にも陥れる。
    時代によって価値観がかわるようなことがほとんどだけど、男女のあーだこーだは、紫式部の時代やそれ以前から続いている人の営みなのよね〜。
    なのに昔からそこに関しては人間っつうのはまったく学習できてない。。。
    男女問題。なんて奥深く愚かで愛おしいものなのだろう。
    頑張れベッキー!
    調子にのるな!ゲスな人!!(←旬なネタを放り込んでみた)



    あと、悪い人は、確かに法に触れる悪いこと色々やってるんだけど、別の価値観でみてると「なんて、働き者な人たちなんだ」とも思えたりもします(笑)。
    各国のマフィアとつながりがある人も、平日はレストランや工場で働き、土日に歌舞伎町でおクスリ販売してたりする人がたくさんいたそうです。
    そういうの知ると、根性なくて何やっても長続きしない日本人学生や、そもそも何にもしないで引きこもってる人と、
    平日も土日も休みなく働いてるマフィアの人たちと、一体どっちが頑張り屋さんなんだろう?
    とわかんなくなってきてしまいます。
    (まぁ、長続きしない学生も、引きこもってる人も彼らなりに精一杯頑張ってるんですけどね。)
    てか、普通に昼の仕事を続けられるスキルがあるなら、悪いことしないで普通に働いていこうよ〜〜と思ってしまう。。


    あと、面白かったのは、外国マフィアの下っ端の人たちは、日本の組に留学して組織のイロハを学んだりすることもあるとのこと。
    なんだろ。
    ベクトルがマイナスに向いてるだけで、やってることは海外に勉強しに留学するマジメな学生と同じじゃん(笑)
    もうそんな真面目にワル街道歩めるなら真っ当な方の道も歩めるのではなかろうか。



    いい人も悪い人も、オトコもオンナも、みんな自分の居場所を探しているだけで、人間の行動や思いの根幹みたいなところは変わらないもんなんだろうなぁ。
    うまいこと真っ当な世界で居場所を見つけられなかった人たちが、いわゆる闇社会で居場所を見つけていくっていうだけの話で。
    そう考えると切ないなぁ。
    真っ当な世界でどこかに居場所があれば、ヤクザ留学してるマフィアの人もMBA取得のために留学してたかもしれないのに。。。
    そしてこの本の時代もかなり闇は
    深いんだけど、今ってこの本の時代より確実にヤバい方向に進んでるんでしょうね。
    普通の人が薬物でたくさん捕まったりしてるし。。。
    見えない闇社会は我々の足元のすぐ下で、いよいよ間口を広げて人々の心の虚に入り込んでいくのでしょう。
    こわいわ〜。

    これを読んでる間に、現実世界では
    センテンススプリング砲が何発も発射されました。
    このルポも文春。
    昔っから攻めてたんですな〜。
    続きを読む

    投稿日:2016.02.20

  • 亮

    ノンフィクション。この手の本を読むことはあるが、ルポライターでも、黒社会、所謂アンダーグラウンドを取材する方は命懸けだろうね。
    堅気の人間としては、最早、小説を読んでいるようにしか思えない。

    しかしながら、実際に体を張って取材に取組む姿勢には圧巻としか言いようがない。取材過程で、拳銃を口に突っ込まれたり、注射器で刺されたりと。

    警察の情報を一切頼らず、個人の力のみでよくここまで調べ上げられるものだなと。

    この本が書かれたのが98年。
    暴対法や新宿浄化作戦から、もう10年は経つ。
    高々、五百メートル四方の歌舞伎町に様々な欲が渦巻く。
    誰しも、飯は食べに行くし、買い物もしてる。
    ただ、そのすぐ真裏では実際に、切られ撃たれ沈められるという事が起きている。

    上海、香港、福建。果てに、中東、その他、アジア近隣諸国から、と。

    マイナンバー導入に伴い、また、諸々出てくるのだろう。

    知らなくて良いことは知らなくて良いね。
    続きを読む

    投稿日:2015.11.19

  • りとる

    りとる

    書いてあることが本当だとして、凄い取材力。
    素朴な疑問だけど、膨大な時間とカネがかかっているが、これでペイしたのだろうか。

    自分が東京に来た頃には、歌舞伎町にそんな危険な印象はもはやなく、ちょうど地元の図書館で高校生の頃に馳星周の不夜城を読んで、妙に憧れた記憶が思い起こされる。続きを読む

    投稿日:2015.09.23

  • tweetyukky

    tweetyukky

    解説馳星周。『不夜城』を書いている時に付箋だらけにして読んだ本だそうだ。我ながらハマってるなあ(笑)

    投稿日:2013.09.12

  • 有坂汀

    有坂汀

    ここに描かれているのは1990年代半ばの新宿歌舞伎町の風俗ですが、この時期は歌舞伎町にとってすさまじい魑魅魍魎が跳梁跋扈したころだったということを改めておもい知らされました。

    この本が書かれていた当時の1990年代半ばの歌舞伎町は本当にヤバい街だったらしく、僕もこの当時の話はいろいろな文献や酒の席でそれとなく聞いたことがあって、あまりの出来事にフィクションだろうと思っていたら、この本を読んでいて、現実にそういうことが起こっていたんだなぁ、ということを目の前に突きつけられたような気がして背筋が寒くなったとことを覚えています。

    このルポルタージュが書かれていた当時の歌舞伎町は福建省からの中国人マフィアやコロンビアの麻薬組織が徐々に日本に進出してきたころで、当時のニュースを思い返しても凄惨な事件が多かったことを覚えています。筆者は歌舞伎町で単身、長期取材を敢行し、麻薬密売人、無国籍売春クラブ、挙銃密売―、闇世界ににうごめく中国人、コロンビア人、イラン人を追って書き上げた本書には正直言って
    「よくこのヒト生きていられたなぁ」
    という驚きを隠せませんでした。

    特にそれを感じた場面は中国人の犯罪組織に深くかかわる男への取材の場面で自分の持っている時計にナイフを突き立てられたシーンからでした。そして、終盤のハイライトは三人のイラン人が行方不明になったという事件で、彼が「キーパーソン」と思われる男と彼の店でサシで向き合う場面でした。その結末はどうかご自身で確認していただきたく思いますけれど、改めてこの街の持つ「業」のすさまじさとあらゆる欲望を飲み込んでいく姿に戦慄を覚えました。

    普通に飲み食いをして遊んでお金を払う分には別に危なくもなんともないんですが、ある時点から一歩入り込んでしまうとそこにあるのはそこの見えない闇なんだと、そう感じました。だからこそ、ヒトはあの街に引き寄せられるのかもしれません。
    続きを読む

    投稿日:2011.11.11

  • office4690

    office4690

    このレビューはネタバレを含みます

     本書は馳星周『不夜城』の参考資料と本人が解説で書いている。小説では大沢在昌『新宿鮫』などもある。映画では09年ジャッキー・チェン主演の『新宿インシデント』などがある。こちらは映画とは言え、とてもリアリティがあり密入国をする中国人が新宿にたどり着くあたりは圧巻だった。

     どこの国にも不良はいるのだが、最初から不良だったわけではない、外国人が生きるために違法なものに手を染めていく。お金になればなんでも請け負う外国人はなりふりなどかまっていられない。密入国のために莫大な借金をし、支払いが滞ると国の両親が殺されることすらあるという、そんな切羽詰った状態なのだ。黄金の国ジパングは過去のものではない。

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    投稿日:2010.09.21

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