死刑執行のノート
ダニヤ・クカフカ(著)
,鈴木美朋(翻訳)
/集英社文庫
作品情報
死刑執行まで残り12時間となったアンセル・パッカー。彼は「完全な善人も、完全な悪人もいない、だれもが生きるチャンスを与えられてしかるべきだ」と信じている。獄中で密かに温めた逃亡計画もある・・・。この〈連続殺人犯〉の虚像と実像を、アンセルの母親であるラヴェンダー、アンセルの妻であるジェニーの双子の妹ヘイゼル、ニューヨーク州警察の捜査官であるサフィことサフラン・シンという、いずれも後に死刑囚となるアンセルの人生に大きく関わり、また自分自身の運命も歪んでしまった女性たちの目を通して、浮き彫りにする。エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長篇賞受賞、衝撃のサスペンス!
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商品情報
- シリーズ
- 死刑執行のノート
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2023.11.17
- Reader Store発売日
- 2024.01.11
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 440ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (7件のレビュー)
-
死刑囚と家族、命の物語… 少しだけ感情の扱いや選択を間違えてしまった人々の未来 #死刑執行のノート
■あらすじ
死刑囚であるアンセルは、間もなく執行の時を迎えていた。彼は刑務官と通じており、直前に脱…走する計画をしていたのだが…
同時になぜ彼は死刑囚となってしまったのか、出生から現在に至るまで、家族や様々な人との関わり合いを描いてゆく。果たして脱走は実現するのか、そして関係者たちにはどんな未来がやってくるのか。
■きっと読みたくなるレビュー
家族や命を実直に描いた作品。心の奥底にある善悪の価値観と、欲望、不安、恐怖といった人間の裏側にある感情が、静かに書き記されています。
死刑囚なんて言うと自分には関係のない話と思いがちですが、作品内の登場人物は決して特別ではなく、どこにでもいる普通に人々。少しだけ感情の扱いや選択を間違えただけ。
読み進めるのにパワーがいる作品ではあります。しかし人間が生きるとはどういうことなのは、なぜ裁かれるような罪を犯してしまうのか、覆い隠された部分を知ることができるのです。
本作は筋書きよりも人の感情をつぶさに描いた純文テイストに進行してゆく。登場人物の苦しみや葛藤が丁寧かつ表現豊かに書かれていますので、じっくりと味わってもらえると思います。ひとりひとりのキャラクターがあまりに切なすぎるので、一言ずつコメントを寄せてみました。
〇ラヴェンダー(死刑囚の母親)
つい彼女が悪いと思ってしまいがちだが、物語の最後まで読み進めてゆくと、彼女こそ救ってあげなければならない人だった。子を想う母の気持ち、愛情が痛々しく涙が止まらない。
〇サフィ(死刑囚の幼馴染であり、現在は刑事)
人生で失望することも多いですが、これほど辛いシーンもあまり見たことがない。ただ親友クリステンの存在が大きく、これからの人生の希望になってほしい。
〇ブルー(死刑囚の姪)
彼女がいたおかげで、死刑囚も読者も救われる。しっかりと現実を受け止め、人生に糧として学び、明るく生きてほしいです。
〇ヘイゼル(死刑囚の妻ジェニーの双子の妹)
ずっと端から関わってきた女性、心の奥底からの叫びが聞こえてくるし、実は一番死刑囚の気持ちと近い人物かもしれない。姉とは別の人生を歩めて本当に良かった。
〇アンセル(死刑囚)
世の中には恵まれない環境で育った人はたくさんいる。それでも幸せな家庭を気づいたり、社会に貢献している人もいっぱいいるということを知って欲しい。ただ幼い頃の愛情不足、青年期における成長不足が犯罪に繋がってしまう。他人事だと思わずに、社会全体で支えなければなりません。
■ぜっさん推しポイント
罪を犯せば罰が与えれれる。
世の中の秩序を保ち、すべての人々が幸せに安心で暮らすためであり、被害にあった人や家族にとって償いのひとつでもある。しかし亡くなった人は帰ってこないし、事件の関係者たちも辛くやりきれない思いが残るだけ。彼らは必死にその時その時を生きているだけで、幾分かの選択肢などないし、行為自体にも目的も善悪もないのだ。
果たして誰のための罰なのか。
ただ自分の人生に責任を持っていけなければならないという教訓が、しっかりと胸に刻まれる。人生にやり直しはきかないし、苦しみながら人生の終わりを迎えるのは絶対に嫌だからだ。続きを読む投稿日:2024.04.27
時間経過や視点の切り替わり幾つもの仕掛けでアンセルという人物を探っていく物語。
「実存的恐怖と自信喪失」
最後の謝辞を呼んで腑に落ちた。
この物語はアンセルがいかにも自分自身であるかのように描かれ…ている。ーーーあなたはこう考えた…。
まさにクカフカ自身が感じていた実存的恐怖を体感させられる。
実存的恐怖とは、人生に意味がないのではないか、あるいは自分自身のアイデンティティに混乱を覚える内的葛藤のこと。
アンセルは幼少期に体験したトラウマによって上手く形成されなかった部分をなんとか知識や哲学によって埋めようとしていた。それは恋愛でも殺人でも埋められず、結局は血の繋がりという確かなものを求めていたのではないだろうか。そして、手に入れた矢先に…。
発達症や精神疾患は過去に体験したトラウマ体験が大きく影響していることが分かってきている。アンセルは産まれながらのシリアルキラーではない。身寄りがなく、弱い自分を曝け出す場所が無かったことがこの悲しい物語を産んでしまったのではないだろうか。続きを読む投稿日:2024.03.31
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