シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』
廣野由美子(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.0 (14件のレビュー)
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「ジェイン・エア」を源泉として、それに続く女性作家たちは、「若草物語」「赤毛のアン」など、困難を教育で克服し、「シンデレラ」などの童話のように他力本願でない、自分の道を自分で切り開く物語を生み出した、…と言う。
”いつか王子様が”・・「シンデレラ」「白雪姫」「眠り姫」、これらは童話という文化遺産として受け継がれ、大人の小説にも取り入れられ、それゆえ、今日においても「他力本願」な傾向は受け継がれてしまう。フェミニズム、男女共生など外側からの変革が声高に言われるのは、逆に社会がそうでないからで、「外側」を変えるのは女性が羽ばたく必須条件だが、劣らず重要なのは「内側」からの自立志向である。
御伽はなしや児童文学は子供向けの読物として軽くみられがちだが、文学は影響力が大きく、未来へと続く子供への影響大である。もっと再評価されるべき領域だという。
19世紀終わりから20世紀初頭ころ、「少女の試練の物語」が生まれた。「若草物語」1868-69.「少女レベッカ」1903、「赤毛のアン」1908、「リンバロストの乙女」1909、「あしながおじさん」1912などである。これらは孤児などの逆境にあっても多くは「教育」を自ら欲し身につけることで自分の道を開く少女の物語だ。この源泉をたどると「ジェイン・エア」1847にたどりつくという。これらの物語の作者は、自身で道を切り開き、それを小説にした。ブロンテのイギリスよりはアメリカで花開いた。
また最近のディズニー映画にも少し変化がみられ、2015年の「シンデレラ」、2014年の「マレフィセント(原作眠れる森の姫)」、2013年の「アナと雪の女王(雪の女王)」などは、いくぶん原作に手が加えられ、100%受け身ではない要素が加わっているとする。
ただ、「ジェイン・エア」がアメリカで花開いた、とするアメリカの状況説明のところが、『コロンブスがアメリカを「発見」したとき、初めて西洋の歴史のなかに登場するアメリカは、それ以前の文化伝統をもたない』と記されている。これにがくっとしてしまった。
アメリカ文学は、旧大陸の文学、主に英文学を元にして発展し、他の国のように民間伝承や詩歌から始まっていないと続く。
「発見」ときちんとかぎかっこをつけて表現したのだから、ひとこと ”先住民の神話などには関心を持たなかった” とか入れて欲しかったなと思った。
2023.9.20第1刷 図書館
メモ 読んでないのをよんでみたくなった
〇イギリスに根を下ろしたシンデレラストーリー
「パミラ」1740サミュエル・リチャードソン 書簡体
「ウェイクフィールドの牧師」1766オリヴァー・ゴールドスミス
「エヴェリーナ」1778フランシス・バーニー
「エメリーン」1788シャーロット・スミス
〇ジェイン・オースティン1775-817
イギリス小説をロマン主義からリアリズムへと方向づけた作家
「分別と多感」1811
「高慢と偏見」1813
「マンスフィールド・パーク」1814
「エマ」1815
「説得」1818
「ノーサンガー・アビー」1818 流行小説のパロディ
〇ブロンテ姉妹
「ジェイン・エア」1847シャーロット・ブロンテ1816-1855
「嵐が丘」1847エミリー・ブロンテ1818-1848
「アグネス・グレイ」1847、アン・ブロンテ1820-1849
「ワイルドフェル・ホールの住人」1848アン・ブロンテ
〇アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち
「若草物語」1868-69ルイーザ・メイ・オルコット1832-1888
「リンバストロの乙女」1909ジーン・ストラットン・ポーター1863- 森林湿地帯の自然とロマンスを結びつけるのが特色 1924映画化
「少女レベッカ」1903ケイト・ダグラス・ウィギン1856-1923
「少女パレアナ」1913エレナ・ポーター1868-1920
「あしながおじさん」1912ジーン・ウェブスター1876-1916
〇自分らしさと強さの肯定~「ジェイン・エア」からの飛躍
「赤毛のアン」1908ルーシー・モード・モンゴメリー1874-1942
〇ジェイン・エアからの変容
・ジョージ・エリオット1819-1880
「フロス河の水車場」1860
「サイラス・マーナー」1861
「ミドルマーチ」1871-72
・フランシス・ホジソン・バーネット1849-1924
「小公子」1886
「小公女」1905
「秘密の花園」1911
〇ルーマ・ゴッデン1907-1998
「チャイニーズ・パズル」1936
「貴婦人と一角獣」1938
「黒水仙」1939 ベストセラー映画化1947
「河」1946 映画化1951
児童文学
「人形の家」1947
「ねずみ女房」1951
「ディゴダイ」1972 ジプシーについての若者向け小説 キジィという題でBBCドラマ化
自身のダンス学校経営の経験から
「木曜日の子どもたち」1984
木曜日の子どもとは、幼いうちから音楽やバレエなどを習い自立の道を歩む子供をさす。少年・少女のジェンダーを超えた「ジェイン・エア」の改変物語と捉えられる。
また、果たせなかった夢を娘に託す母の物語であり、
プリマバレリーナになる夢をかなえられなかった母はその夢を、娘クリスタルに託して生きている。自分には恵まれなかった機会をありったけ自分の娘に与えたならば、きっと娘は成功するだろうという妄想。母となったジェイン・エアがいかに我が子を育てるかという物語が含まれている、とも解釈できる。
「ナイチンゲールの歌を聞いて」1992(邦題「トゥシューズ」)続きを読む投稿日:2024.02.08
起立!礼!英米文学論における少女小説の源流と発展に関する講義を始めます!
あくまで文学の見地から「女性が最終的に『内側』から自らを変えていく」物語、即ち「強固な内発的意志」(それぞれp8)を示すよう…になる物語の起源をシャーロット・ブロンテの英古典『ジェイン・エア』に定め、この作品が後代の米文学へどのような影響を与え、また、現代の‘強いヒロイン像’を結ぶかの流れを主要各作品を例にとりながら解説を交えつつ200ページくらいにまとめられた一冊。
非常にわかりやすく、各作品の紹介もどれもこれも興味を掻き立てられるものばかりで、あっという間に積読が増えてしまいやした。
従来のいわゆる「シンデレラ・ストーリーの型」には「おとなしく従順で、か弱い」「不遇ななかでも美徳を貫いてひらすら耐え抜き」(p26)、これが肝心だけどももちろん容姿は端麗で、最後は資産家や権力者に見初められて結婚して、いつまでも幸せに暮らしました。めでたし。というのが絶対的ヒロイン像としてある訳だが、『ジェイン・エア』は違う。全く違う。
主人公のジェインは容貌悪く気性荒く、遠慮なく憎悪を振り撒いて周囲と衝突を繰り広げるという人物な上に、やがて結婚を意識した相手には隠し妻がいた、という正に踏んだり蹴ったりの人物設定。ただ、彼女が決定的に違うのは主張と研学によって自らの居場所を勝ち得ていく点。王子様が迎えに来るのを待つだけのヒョロい女性ではないのだ。
その後「自らの人生を切り開いていくジェイン・エアの精神は、アメリカにおける『開拓者精神』と相通じるものがあった」(p55)という考察の通りアメリカ女流文学界に受け入れられて進化・発展し、カナダで『赤毛のアン』へとバトンは受け継がれて今なお支持を得ている訳である。
一方で行きすぎた『ジェイン・エア』の精神は「シンデレラ・コンプレックスを乗り越えられない女性への蔑視や優越感、あるいは能力偏重主義を生み出し、競争心を煽るという」(p209)側面があるのではとの指摘を挙げられている事も付け加えておく。そう言われればそうかもしれないけど、そうなのかな?
私個人は『ジェイン・エア』も『赤毛のアン』も恥ずかしながら読んだ事が無かったので大変新鮮に興味深く読む事が出来ました。
1刷
2024.6.15続きを読む投稿日:2024.06.16
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