きのうのオレンジ
藤岡陽子(著)
/集英社文庫
作品情報
笹本遼賀、33歳。都内のレストランで働きながら、人並みに、真面目に生きてきた。だが、胃の不調で受けた検査は予想外の結果――突然のがんだった。どうして自分が? 絶望に襲われた時、弟の恭平から荷物が届く。それは遼賀が15歳の頃、故郷の山で遭難した時に履いていたオレンジ色の登山靴で・・・・・・。「おれはまだ生きたい」、過酷な現実を突きつけられても懸命に前を向く遼賀と、彼を支える家族を通して誠実に“生”と向き合った感動長編!――「弱音を吐かない人は、いつだってたったひとりで闘っている」
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商品情報
- シリーズ
- きのうのオレンジ
- 著者
- 藤岡陽子
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2023.08.21
- Reader Store発売日
- 2023.10.05
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 336ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (65件のレビュー)
-
こちらもフォロワーさんの感想を読んで、Amazonですぐにポチった一冊。
こういう小説に出会えるから、本当にフォロワーさんの感想ってありがたい(^^)
うるうる(ToT)
感動。。。
なんだろうな、…悪い人が居ないんだよな。
みんな温かい。
主人公の遼賀の人となりも愛せるし、弟の恭平も、看護師の矢田泉も、バイトの高那も、本当に登場人物、全員が素敵。
藤岡陽子先生の作品は超読みやすいからか、心に響いてくる。
ガンガンくる。
何度か号泣しそうになる自分を、ドウドウと抑えつつ読み進めた。
岡山出身、東京のレストランで店長をしていた笹本遼賀が胃に違和感を覚え、バイトにも心配され検査を受けることに。
悪性腫瘍、、、癌だった。
検査を受けた病院で、高校時代の同級生と出会う。
遼賀には双子と誤解されていた弟が居た。
皆は双子だと認識していたが、実は母の双子の妹が産んだ従兄弟だった。
15歳の頃、弟と父と冬山を登山した時、遭難したことがあった。
その時、弟が履いていたオレンジ色のブーツを弟が送ってくる。
すっごく悲しいのに、人が皆んな温かくて、じぃーーーーーんときた。
最後の最後まで温かくて、読んで良かった。
素敵な小説でした。続きを読む投稿日:2024.01.07
2024.5.31 読了 ☆9.4/10.0
「弱音を吐かない人は、いつだってひとりで闘っている」
がん宣告を受けた<彼>と、彼を支える<家族>の物語。心揺さぶられる感動長編。
「おれはまだ…生きたい」懸命に前を向く遼賀と、彼を支える家族を通して誠実に“生”と向き合った傑作長編。
この作品を知ったきっかけは、BOOKOFFの小説コーナーの一角に設けられた、まさにこのサイト「ブクログ」の高評価レビュー作品を集めた本棚に並べられていたことでした。
読み終えてすぐに、あの時手に取って良かったと感じました。
身の上話を挟み恐縮ですが本作の感想を綴る上で不可欠なので書かせていただきますが、闘病ものは、自分自身もかなり大きな病を経験し実際に治療の苦しさや副作用の残酷さ、入院患者側の気持ちなどが少なからず手に取るように分かるからこそ、余計にリアリティを帯びて迫ってきます。
病に大小はあるとは言え、その辛さは人それぞれでも、本作に登場する主人公の遼賀の過酷な運命と現実は自分の日にならないと感じました。
それゆえ、比較対象が自分の中に実体験に基づいて存在してるからこそ、彼を待ち受ける現実が恐ろしく感じるのです。
彼や彼を支える側の人々の辛さ、苦しみ、優しさ、葛藤、不安などさまざまな感情に、何度も心揺さぶられました。
だけど同時に彼は、どう生きるかという意志を、どう生きていくかという覚悟を絶対に手放さない。
病に冒されても、深刻な状況に陥っても、死が目前に迫ってきても、彼はどう生きるかという己の意志を貫くのです。
そんな彼の生き様に、生きることと死ぬこと、というか、死ぬこととは生きること、生きることとは死ぬことなんだということを読者に痛感させてくれます。
本作は闘病生活を綴る作品でありながら、遼賀の弟の恭平や母親、同級生で担当看護師の矢田泉、職場同僚の高那など、遼賀の周りの様々な人の視点から見た遼賀が語られ、その一つ一つに涙が零れました。
特に印象的なシーンがあります。
遼賀が矢田に対して自分の苦しさを「わかるなんて言ってほしくない」と辛く当たる言葉に、矢田が返した言葉に乗せた想いは著者の藤岡陽子さんが最も伝えたいメッセージだと胸深く刺さりました。
“時々、どうせ死ぬのならこんなに辛い治療を受けることもないかと思う自分もいる。なにもできないんだ。副作用で死んだようにただ横になってるだけで、ただ時間だけが過ぎていくんだ、おれにとっては貴重な時間が・・・」
「遼賀くんの気持ちはわかるよ」
「いや、わからない。たとえ矢田がこれまで何百人の患者を看ていたとしても、この先何千人の患者と出会ったとしても、この苦しさは絶対にわからない。わかるわけがない。
・・・わかるなんて言ってほしくない」
どうして私にはわからないの?」
「矢田は病気じゃないから」
「なにそれ」
「私だって・・・私たちだって一生懸命やってるよ。義務、惰性、意地・・・いろんな感情を抱えながら毎日毎日、それこそもう何千人もの患者さんの看護をしてきたの。少しでも苦痛が和らぐようにって、必死になって。疲れが溜まった体を引きずるようにして出勤することだってあるの。次から次に割り当てられる仕事を必死にこなして、休憩を取る暇もない日もあって、それでも患者さんの苦しみを完全になくすことはできなくて、懸命に治療を続けてきた人が亡くなることもあって、自ら命を絶つ人もいて・・・。でも落ち込んでる暇もなくまたベッドを作り直して新しい患者さんを迎えるの。もう毎日めいっぱい。余裕なんてどこにもない。それでもね、私はいつも思ってる。この患者さんの病気がよくなりますようにって。それだけはちゃんと絶対に願ってるの。だってそれしかできないから。願って励まして。それ以外になにができる?」”
この場面に、自分と同じく涙した人も多いのでは…
遼賀も特段メンタルが強固なわけでもなく、まだ30代の若い一男性です。
当たり前だけど悩み、落ち込み、狼狽えます。しかし、周囲と共に生かし生かされていることに気付き、(生を諦めるのではなく)優しさ・目標を取り戻していきます。
そんな遼賀の姿を追ううちに、もしかしたら自分も厳しい状況下で、変われるのかな、希望を捨てちゃいけないなと思えました。
読み手だけでなく、登場人物皆が明日への希望をもらえた気がします。
〜〜〜〜〜印象的な言葉〜〜〜〜〜
“大学病院で医者をやっていたら、がん患者なんて珍しくもないだろう。それは十分にわかっている。それでも、あのいきなりの告知はあまりにも非情ではないだろうか。どう告げられても悪性は悪性だが、でももう少し違う言い方があったんじゃないのか。それに明日入院しろというのも無茶な話だ。こっちは定年退職して隠居している身じゃないのだ。仕事の引き継ぎもしないまま入院なんてできるわけがない。
怒りをぶつける相手が他にいないのでひとしきり松原を恨んだ後、それは違うぞと自分に言い聞かせる。がんの告知をする直前に見せた、松原の表情。あの医者も悪い結果の告知をしたかったわけではないのだ。あの人はなにも悪くない。自分が病気になったのは、誰かのせいではない。”
“ひとりで生きるというのは、自分の弱さや脆さにもひとりきりで立ち向かわなくてはいけないということなのだ。そんな当たり前のことを病気になってようやく実感する。ひとりは気楽、自由だと言っていられるのも、降りかかる火の粉を自分で払いのける力があるうちだけだ。若かろうが老いていようが、男だろうが女だろうが、病気は怖いし、死ぬのはもっと怖い。その底知れぬ恐怖を垣間見たいま、この先ひとりで生きていく覚悟を持たなければいけない。”
“恭平の怒り。矢田の落胆。母の狼狽、それらを引き起こしているのが自分の病気だと思うと、遼賀は情けなくてたまらなくなった。自分がこんな病気にさえならなければ、家族や友人をこれほど苦しめることはなかった。迷惑をかけることはなかった。どうすればよかったのだろう。東京でひっそりと死んでいけばよかったのかもしれない。独りで病気に向き合う恐怖に耐えられなかった自分を、改めて恥じた。
「やめてくれよ」
「おれは、お母さんや恭平や矢田が言い争うのは見たくない。喧嘩の原因が自分だと思うと、本当に・・・辛いんだ」
家族や友人が自分のために時間を削っている。神経を摩り減らしている。だからこれまで弱音を吐くことは許されないと思っていた。恭平も母も矢田も、忙しい日々の中で自分の生活を支えてくれているのだ。もうひとりでは、病院に出向くことすらできなくなった自分のために。だから前向きにならなくてはいけないと奮い立たせてきた。でも自分のことで周りの人たちが疲弊していく姿を見るのは、耐えられない。
“怠くて重くて、体のあちこちに痛みがあるこの体はもう元通りにはならないいだろう。それでも心は、心だけはこのところ一日一日軽くなっていくように感じる。いまはそばにいる恭平たちよりも父や祖父のほうが近くに思え、二人が死を目前にして考えていたことがわかる気がする。自分はいい人生を生きた。悔いはない。二人とも、そう思っていたに違いない。
みんなにありがとうを伝えたい。
忙しい日々の中、闘病を支えてくれた恭平に。どんな時でも変わらない愛情を差し出してくれる母と祖母に。そばにいるからと故郷に戻ってきてくれた矢田に。いまも変わらず慕ってくれる高那に。いまはただ感謝を伝えたい。
最期に人はたったひとつの気持ちをもって逝くのかもしれない。このところ、そんなことをよく考える。
遼賀は草木の匂いを思いきり吸い込み、両目を閉じた。
「みんな、ありがとう」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本作に登場する登山靴、実家や店舗に植えられた蜜柑、夕陽に染まる故郷の山…それらが放つ暖色のオレンジがとてもいい味を醸し出している、愛あふれる物語でした。続きを読む投稿日:2024.06.03
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