この作品のレビュー
平均 3.8 (6件のレビュー)
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はじめにカラー写真がいくつか載っているのだが、出てくる植物があまりに多く、全く足りないので、検索しまくりながら読んだ。
画像と見比べながら読むと、伊藤さんの表現がいかに的確であるか、知っている植物につ…いてはなおのこと、感心する。
多肉植物の名前は漢字表記がスタンダードで、妖怪みたいな名前が不思議だし、意外に可憐な花を咲かせるものもあれば、ぎょっとするような奇妙な花を咲かせるものもある。タイサンボクの花は「高潔きわまりない」のに、実は「えげつない」。「赤が濃すぎて黒に見える。いや、赤は赤なのだ。邪悪ささえ感じる赤である。それが実から剥き身ではじけたままくっついているので、肉々しい欲望が凝縮した感じである。(p70)」
熊本に暮らしていたときはあの湿度の高さと日差しの強さがホントに厭で、葛があらゆるところにのたくっているのも植物の底知れぬ生命力を感じて嫌いだったのだが、伊藤さんの文章を読むと、その湿度も日差しもそのまま感じるし不気味な植物の力も如実に思い出すのだが、不思議に魅力を感じるのだ。ああ、熊本にいた頃、もっと自然を観察し、愛すこともできたのにと自分の感性の鈍さを残念に思う。
『犬心』は動物を飼って、老いと死を見た者は共感せずにはいられないので、伊藤比呂美ファンでなくても心に沁みるが、『犬心』はこの本と対になってるんだなと思った。人間にはどうにもならない生と死(動物、植物)を描いたという点で。『父の生きる』もそうか。じゃあ三点セット。この三作品は本当に傑作。
p23 犬や人は「老いて死ぬ」が、植物の「死ぬ」は「死なない」で、「死なない」は「生きる」なんだな、それがかれらなりの業なのだなと。
p66 殺しても殺しても植物は生き返る。この株をここで殺しても、どこかで別の株になって生き返るような気さえするのだ。われわれみたいに、個は個で、死は死で、個が死んだらもうおしまいみたいな、そんな生き方では決してない。
p110 植物の、名前も性格もわからない存在が不安なら、動物たちは?動物たちとは何もかもわかったつもりでいっしょに暮らしてきたが、ほんとうにそうか。夫なんて、セックスをしたら子ができたっていう一点しかわからなかった。子は育ったら離れていって別の人生を送る、というこの一点だけである。あとは、相手の感じることも考えることも、実はわからない。子犬のときから手の中で育ててべったりと依存され、何もかもわかったつもりの犬だって、痛み苦しみは共有できなかった。共有できないまま、老いて死んでいなくなった。続きを読む投稿日:2018.09.22
感じたところを、ここまで言葉にできるのかと思った。命が迫ってくる。生易しいものではない、生きるということ。猛々しく美しく、畏れも感じるほどの命の力が伝わってきて、植物と著者の力に衝撃を受けた。世界の植…物、日本の植物、帰化植物まで、長年ひたすら心を寄せてきたからこその、植物との距離感。リズミカルな気取らない文章に人柄がにじむ。その迫力と繊細さは幸田文を思い出す。たしか双方、60歳を過ぎたころに書かれたものを読んだ。心が熟しているから書けるのかもしれない。壮年になってこのような文章を書けたらどれほど素晴らしいだろう。続きを読む
投稿日:2022.10.28
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