逆ソクラテス
伊坂幸太郎(著)
/集英社文庫
作品情報
逆転劇なるか!? カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える(逆ソクラテス)。足の速さだけが正義・・・・・・ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが(スロウではない)。最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも(アンスポーツマンライク)。など短編全5編の主人公はすべて小学生。デビュー20年目の新境地ともいえる本作は、伊坂幸太郎史上、最高の読後感! 2021年本屋大賞第4位。柴田錬三郎賞受賞作品。
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商品情報
- シリーズ
- 逆ソクラテス
- 著者
- 伊坂幸太郎
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2023.06.20
- Reader Store発売日
- 2023.06.20
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 336ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (446件のレビュー)
-
【読もうと思った理由】
ブクログの他の書籍の感想欄に何度か書いたが、20代の頃にもっともハマって読んだ作家が伊坂幸太郎氏だ。それこそ、デビュー作の「オーデュボンの祈り」から「死神の浮力」ぐらいまでは、…文庫化作品はすべて読んだはずだ。ただ、そこからは新作が出ても、必ず読む作家ではなくなり、少しずつ伊坂作品から遠ざかっていた。オブラートに包まない言い方をすると、伊坂作品に飽きてしまったのだ。それは、決して伊坂氏の力量が落ちたとかそんな事ではなく、たしか著名な作家も言っていたと思うが、1人の作家が生涯で本当に面白い作品を書けるのは、よく書けて6作品ぐらいだという。
伊坂作品はトータル20作品近く読んでいるので、どうしても物語の構成なども含め、ある程度は展開が読めてしまう。じゃあなぜ今回読もうと思ったのか?と言うと、「金閣寺」の雑感にも書いたが、一つは、タイトルに惹かれたからと言うことと、実はもう一つ理由がある。確か今年だったと思うが、雑誌で辻村深月氏の特集をしていて、そこで伊坂氏と対談をしていた。そのとき伊坂氏が辻村氏に自分の代表作を上げるとすると?的な質問をされての回答が「逆ソクラテス」だったはずだ。(その雑誌は立ち読みしただけなので、正確な質問の内容は思い出せないが、逆ソクラテスに対する思い入れは、かなり大きかった印象はある。)そのときにこの作品は読まないとなと思った。
確か僕の記憶が正しければ、ファンの人たちは代表作を聞かれると、初期の頃の作品(アヒルと鴨とか、重力ピエロ、ゴールデンスランバーなど)を上げるであろうが、僕は逆ソクラテスが、かなり良い出来だと思っている的な回答だったと思う。40作品ほど書いた作者が、代表作を聞かれて答えた作品は、読むべき作品だと思った。僕が本の感想の最初の項目にこの【読もう思った理由】をあげているのは、ただの慣習ではなく、プロフィールにも書いているが、本が売れなくなった現在でも、年間で約7万冊の新刊が発売されているという。何万冊の中から、次に読む本を決めるのは、皆さんもそれなりに悩んで決めているはずだ。実は僕も、それなりに考えてから決めている。僕が感想欄で重要度が高いと思っているので、【読もうと思った理由】を最初に書いています。
【伊坂幸太郎氏ってどんな作者?】
(1971年5月25日 - )
千葉県松戸市出身。東北大学法学部卒業。この時期の東北大学には、薬学研究科に瀬名秀明、文学研究科に佐藤賢一、理学部に松崎有理と円城塔など、現在小説家として活躍している人物が在学していた。大学卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら文学賞に応募、2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。数年後に作家専業となった。宮城県仙台市在住。
2002年の『ラッシュライフ』で評論家に注目され始め、2003年の『重力ピエロ』で一般読者に広く認知されるようになった。それに続く『アヒルと鴨のコインロッカー』が第25回吉川英治文学新人賞を受賞。本屋大賞においては第1回から第4回まで連続ノミネートされた後、2008年の第5回に『ゴールデンスランバー』で受賞。同作品で第21回山本周五郎賞も受賞。なお直木賞については、2003年『重力ピエロ』、2004年『チルドレン』『グラスホッパー』、2005年『死神の精度』、2006年『砂漠』で候補となったが、2008年、同賞の影響力の高さゆえに環境が変化する可能性を憂慮し、選考対象となることを辞退している。2020年に『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞。2020年より山本周五郎賞の選考委員を務める。
著作の多くは中国語訳、韓国語訳が出版されており、タイ、インドネシア、フランス、ドイツ、イタリア、ロシアなどでも刊行されている。英語圏では、2011年にアメリカで『ゴールデンスランバー』(英題『''Remote Control''』)、2021年にはイギリスとアメリカで『マリアビートル』(英題『''Bullet Train''』)、2022年にはイギリスとアメリカで『グラスホッパー』(英題『''Three Assassins''』)が刊行。『マリアビートル』(英題『''Bullet Train''』)は、英国推理作家協会が主催する、2022年度ダガー賞(通称:CWA賞)の翻訳小説部門(旧名称:インターナショナル・ダガー賞)にノミネートされた(日本人作家のノミネートは、横山秀夫、東野圭吾に続いて3人目)。
【あらすじ】
「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担当の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか?表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。
【感想】
「デビューしてから二十年、この仕事を続けてきた一つの成果」
上記は、あとがきのインタビューの受け答えの一部抜粋だ。皆さんは伊坂幸太郎氏の印象とか作風は?と聞かれればなんと答えるだろう?例えば、まったく別の複数の物語が終盤近くになって伏線回収されていく爽快感だけでなく、別々の物語が繋がっていく構築力が好きとか。辛いストーリーでも何故か爽やかさがあるのが好きとか。はたまた、意外に座右の銘的な名言が好きとか。色々な意見があるだろう。僕はこの作品を読んで、上記に上げた全てがバランスよく詰まった作品だと感じた。そりゃ、デビューして20年以上も経つのに、日本の作家陣のトップに君臨し続けるのも、“ごもっとも“と言わざるを得ないと感じた。改めて感じたのは、伊坂氏は他の作家が羨むほどに、売れ続ける要素を、掃いて捨てるほど持っているなぁと感じた。
伊坂氏といえば、ラストに向かっての伏線回収は言うに及ばず、僕が意外に好きなのは、色々な作品で印象に残る名言が多い。
ベタではあるが、「ゴールデンスランバー」の「信頼と習慣」は、今でも僕の座右の銘の一つになっている。実は今作でも名言がある。
「僕はそうは思わない」
この言葉って、相手との関係性によって、言えるかどうかのハードルが全く違ってくる。例えば自分の部下であれば何の問題なく言えるが、クライアントや、二つ以上階層が上の上司には、途端にハードルがめちゃくちゃ上がる。そう、日本人であれば嫌でも空気を読むとか、相手の顔色を伺うなど、頼まれてもいないのに、良くも悪くもしてしまう。だけど本当は相手が誰であれ、言わないといけない時は、堂々と言わないといけないよなぁと、今作を読んで改めて思った。
今作は伊坂氏も言っているが、小学生にこそ読んで欲しい作品と言っているが、大人が読んでも、読み方と思考の深さによっては、十分楽しめる作品だなと感じた。
作品自体は300ページほどだし、とても読みやすい。特に意識して読まなければ、数時間ですぐに読めてしまうだろう。ただ伊坂氏が、20年作家を続けてきた、一つの成果と言い切っている作品なのだから、哲学書や思想書を読むときのように、深く思考しながら読み直すのもアリだなと思った。
【雑感】
次は予定通り、「人間の建設」を読みます。というか、もう3回ぐらい読了しているのだが、自分の中で、感想がなかなか纏まらない。それほどに読み応えがあり、気づきが多い本だ。ここで「次に感想をアップします」と、宣言でもしない限り、いつまで経っても自分で考えが整理できそうにもないので、考えを纏めてから感想をアップします。続きを読む投稿日:2023.06.27
『逆ソクラテス』
『スロウではない』
『非オプティマス』
『アンスポーツマンライク』
『逆ワシントン』
5編全部面白かった。最高の読後感という肩書きは伊達じゃなかった。あえて1番好きなのを上げると『…スロウではない』かな。ゴッドファーザーのやり取り良過ぎる。全編読んでて、いずれも彼らの話をもう少し読みたいと思わせてくれる。
大人にも子どもにも読んでほしい逸品。続きを読む投稿日:2024.06.11
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