三年間の陥穽 上
アンデシュ・ルースルンド(著)
,清水由貴子(訳)
,下倉亮一(訳)
/ハヤカワ・ミステリ文庫
作品情報
子どもの人身売買を防止する団体に届いたのは、全裸で犬のリードを巻かれた少女の写真だった。グレーンス警部は、写真の手がかりを元にデンマークへ向かう。そこで明らかになったのは、ダークネットを通じた世界8カ国、21人にのぼる小児性愛者の存在だった。一斉逮捕のためには、グレーンス警部が小児性愛者を装い、ネット上でリーダーと接触する必要があった。残されたのは24時間。〈グレーンス警部〉シリーズ最新作。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 死刑囚
- 著者
- アンデシュ・ルースルンド, 清水由貴子, 下倉亮一
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ミステリ文庫
- 書籍発売日
- 2023.05.23
- Reader Store発売日
- 2023.05.23
- ファイルサイズ
- 2MB
- ページ数
- 336ページ
- シリーズ情報
- 既刊9巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.7 (4件のレビュー)
-
グレーンス警部シリーズはついに終章を迎えつつあるのだろうか? そんな心配が胸を駆け巡る。それほど、しっかりと主人公の現在の日々、そして彼が過去に残した禍根から響いてくる痛みが、のっけから描かれてゆく…からだ。亡き妻と、彼女が胎内に抱きかかえていた生まれなかった娘。グレーンス警部が毎夜、警察署の個室のコーデュロイのソファの上に身を横たえながら心に彷徨わせる孤独。帰って来ない家族への想い。
本書では、傷つけられる子供たちというテーマが描かれる。聞いたこともないほど残酷な性被害を受ける、少年少女たちの存在が浮き彫りにされる。子供たちを犠牲にして自らの歓びや商売に結びつける鬼畜の如き親たち。彼らを結びつける悪魔のネットワークの存在。グレーンスが亡き妻の墓参りの後で出会ったのは、行方不明のままの娘のための空っぽの墓に花を捧げる女性だった。
そしてその出会いにシンクロするかのように、行方不明の娘を三年間待ったという夫婦が、娘の捜索を諦め、その死を認め葬儀を行うことになったという報道を、グレーンス警部は耳にした。何故? 何故? 何故? グレーンスの頭の中で鳴り響く疑問が、その行方不明の娘の葬儀に、執拗に待ったをかける。行方不明の娘の双子の少年もまた、グレーンスに、彼女は生きていると思うと告げる。双子特有の直感のようなもの?
この物語の導入部は、警察が認めてしまう捜査終了に抗い、個の力で子供たちを性の奴隷として商品化する悪のネットワークを暴こうと決意するグレーンスのある意味、心の物語だ。相変わらずテーマは重く、そして世界レベルでもある。
もう金輪際潜入捜査はやらないはずのピート・ホフマンは、またもグレーンスの訪問を受ける。否、ピート個人ではなく、ホフマン一家がである。敢えて家族をも巻き込んでのグレーンスの説得に、ピートは暴力の形で激しい怒りをぶつけるが、何と妻がピートを説き伏せる。許し難い犯罪ネットワークをぶっ潰すよう要請するグレーンスのためではなく、失踪した娘とその母たちのために。
前半は、この状況の構築だけで、ぐいぐい読まされる。後半は、お馴染みのダブル主人公のうち、ピートの潜入シーンが例によって核心部となるが、彼自体の命も脅かされるほどの敵方の慎重さと疑い深さに、我らが主人公は、シリーズ最大の危機を迎える。
いつも思うのは、この作者の現代的なテーマの確かさと重さ、そして構図のしたたかさである。本書も、スピード感のある描写と共に、心の揺らぎや、状況の不安定感が全編を包むことで、全編、絶え間ない緊張が走り続けるものである。読者側の感情に訴えかけてくる人間性という救いが作品の中に見え隠れしなければ、あまりに過酷な物語として生理的にも受け付けられないテーマですらある。
それでもグレーンス警部に関わる深い人間描写と、ピート・ホフマンという人間の運命性とを梃子のように使い分け、作品全体に強烈な力学を加えてゆくその小説作法は、いつもどの作品でも極めて素晴らしい上に、現代的な情報小説の側面も持ち、なおかつ時代と世界への警鐘を忘れない骨太の作品ともなっている。それがこのシリーズのいつもながらの特徴なのである。
構成はこの上なく素晴らしく、プロローグで偶然に出会う忘れ難き名無しの女性との出会いのシーンが、ラストシーンに置いてグレーンス警部の心の中の状況として奇妙な響きを持つようなエンディングとなってゆく。一種不思議な感覚で終わるこのラストシーンもまた、この手練の作家の持つ魅力なのだ、と言って良い気がする。
一気読み必須の語り口と、作者の健在ぶりを間近に見てしまうと、この先のグレーンス警部やピート・ホフマンとの再会がますます楽しみになる。そんな興奮冷めやらぬ読後を、ぼくはいま、多少の微熱とともに持て余しているのだと思う。続きを読む投稿日:2023.07.16
「何やら面白そう…」という小説に出くわし、以前に愉しんでいたシリーズの最近作であることが判れば「是非!」と手にしてみたくなる。
スウェーデンの小説の翻訳だ。ストックホルム警察のグレーンス警部が活躍する…シリーズである。
本作は、個人的な色々な事情を抱えながらも、過ぎる程に熱心に仕事に入り込んでいる頑固な老警部―本作では60歳代に入っていて、ストックホルム警察本部の最年長グループのようになっている…―のエーヴェルト・グレーンスが事件に向き合うのだが、グレーンスが頼みにしている、現場潜入要員のピート・ホフマンの活躍も痛快だ。物語は大まかに、グレーンスの視点で綴られる部分とホフマンの視点で綴られる部分から成っている。
物語の冒頭、グレーンス警部は墓地に在る。他界した妻の墓参りで、色々と想い巡らせている。
シリーズを通してこの妻の件が出て来る。事故で頭を負傷して、意識が無い状態で長く生きていたが、終に心停止で死亡ということになって埋葬されたという経過だった。
墓地の何時も腰を下ろしているベンチで、グレーンス警部は不思議な女性に出くわした。女性は幼い娘を失ったと言う。娘は駐車場で車から連れ去られ、行方不明となり、3年経った頃に“死亡認定”したのだということだった。墓地には「空の棺桶」を埋葬したのだと語った。
グレーンス警部はこの出来事が引っ掛かり、出くわした女性の娘が行方不明になったという日に、別な4歳の幼い少女がショッピングモールで姿を消して行方不明になったという件が在ることを知った。少女が何処かで存命なら7歳になっている筈だ。
やがてグレーンス警部は3年前の事件を担当している警部補に事情を訪ね、娘が行方不明になったという一家を訪ね、間もなく“死亡認定”をするということ、未だ妹が居ると信じ続ける双子の兄のためにもそうして区切りとしたいとする両親の話しを聴く。それでも探すべきではないかと、グレーンス警部は両親と揉める。
こうした一連の様子の中、グレーンス警部の様子が少しおかしいと感じた警部補は上司の部長に進言し、結果として部長はグレーンス警部に長期休暇取得を厳命した。
暫く休暇の日々を過ごすグレース警部だが、オフィスに忍び込んで、帰らずに眠ってしまうことも多いオフィスのソファ―シリーズでは、深夜や早朝にこのオフィスに据えたソファに在るグレーンス警部という場面が多く在る…―で考え事をしていれば、他部署の知り合いの捜査員から情報が寄せられた。行方不明から“死亡認定”となった幼女の件でグレーンス警部が揉めた経過を知っていた捜査員が寄せたのは、ネット上に出ていた、幼女が身に着けていたという「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真だった。これは母親の手作りということで、本人の所持品である可能性が非常に高いと見受けられた。行方不明の少女の足跡とも言える。
こうしてグレース警部は、幼い子どもを弄ぶ、虐待をするというような小児性愛という傾向の者達が在って、色々な国々に在る「同好」の者達のグループが色々と在るということを知る。
やがて「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真の出処を辿り、グレーンス警部は隣国デンマークのコペンハーゲン近郊に在る警察署に至る。小児性愛グループの問題に懸命に取組む、IT関係担当の女性捜査員が仕事をしている場所を訪ねたのである。
上巻ではグレーンス警部が事案に出くわし、大変な事件で、許されざる罪を犯している者を逮捕してグループを壊滅させなければならないと挑戦を始める。他方で、永年の疲労や、個人的な悩みを余りにも長く抱えて精神状態が好くないかもしれないと、心配する職場関係者に仕事の現場から遠ざけられてしまっている。それでも動かずには居られない訳だ。続きを読む投稿日:2023.07.13
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。