- 最新巻
風刃(ふうじん)迷宮
竹本健治(著)
/光文社文庫
作品情報
インドの古代遺跡で火災が発生。死者も出たこの事故で、牧場典子は、幸運にも逃げ出すことができた。「体を屈めながら走るんだ」という謎の声に従って・・・・・・。次々に事件が起こった。六本木の路上での殺人、巣鴨での質屋の女主人の失踪――。一見関連性のない、不可思議な事件の真相は、一体どこにあるのか? 天才囲碁棋士・牧場智久シリーズ!
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商品情報
- シリーズ
- 武藤類子&牧場智久シリーズ
- 著者
- 竹本健治
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社文庫
- 書籍発売日
- 2002.03.20
- Reader Store発売日
- 2022.12.23
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- シリーズ情報
- 既刊4巻
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この作品のレビュー
平均 2.5 (2件のレビュー)
-
もう風刃迷宮と巡り合うことはないかも、なんてセンチなレビューを書いたら1カ月後にブックオフで見つける。(光文社文庫版)
当時のカッパブックスと比べて2段6歩の字画ではないせいかやけに紙枚が厚い。そして…これも当時感じた通り凶区の爪から緑衣の牙の3冊とは一線を画すレトリックミステリだ。続きを読む投稿日:2016.07.20
このレビューはネタバレを含みます
評価
レビューの続きを読む
サプライズ ★★☆☆☆
熱中度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター★★★☆☆
読後感 ★★☆☆☆
希少価値 ★★★☆☆
総合評価 ★★☆☆☆
● サプラ…イズ ★★☆☆☆
牧場智久と典子の異母兄弟であるトム・マッキーバーという人物を登場させたり,天野不巳彦が黒幕であるかのような思わせぶりな終わり方をするなど,サプライズを感じさせる要素はある。しかし,解説にもあるが過剰な伏線があるというか,どうにも割り切れない,すっきりしない終わり方なので,素直に驚けない。サプライズとは意外性なのだが,後で振り返ったときに伏線が分かりやすく,「そうだったのか!」と感じないと驚けない。そういった意味ではもやもやしたものが残るこの作品にサプライズとして高い評価は付けられない。★2で。
● 熱中度 ★★☆☆☆
先が気になるという要素はあるのだが,唐突な場面返還が多く,主体が誰かが明らかになっていないので,読みにくい。まるで翻訳モノのミステリのような読みにくさがある。そのため,物語に没入できない。トム・マッキーバーについても,そもそもそのような人物が本当に存在するかどうかすら,物語では断定的に書かれていないが,あたかも牧場智久の行動のような形で描かれているので混乱が生じる。主体の分かりにくさ,場面転換の多さ,説明不足で分かりにくい描写などが相まって,あまり熱中できない。途中で読むのをやめる人もいそう。★2で。
● インパクト ★★★☆☆
最後に牧場兄弟の異母兄弟のトム・マッキーバーが登場するという部分はインパクトがある。そのほかの部分は,いろいろ解釈できるという終わり方なのでどうにもインパクトが薄い。解説にもあるが,意味ありげな伏線が多数ちりばめられているのに,一つの線を結ばない。その点が分かりにくくなり,総合的なインパクトを削いでいる。一言でまとめると,トム・マッキーバーが出てきたところは驚いたが,それ以外はよく分からない話の小説となっている。とはいえ,トム・マッキーバーの存在はインパクトがあったので★3で。
● キャラクター ★★★☆☆
牧場智久は脇役状態。典子もヒロインというほど活躍できず。むしろ,三崎祐子が,それなりに活躍している。多数の登場人物が,それなりに魅力的に描かれているので,キャラクター性はある。★3で。
● 読後感 ★★★☆☆
エピローグに書かれている典子の父の思い出の多数の風車のある風景が何を意味するのかが分かりにくい。亜天野の存在も宙に浮いた状態。表面的には謎が解決しているのだが,多数の謎が残った状態で終わる。すっきりしないので読後感はいいとは言えない。かといって,一応,解決しているので悪くもない。そうすると★3になる。ただし,読後感がよくも悪くもないというわけではない。むしろ,きっちり終わらせてほしいという不満がある。
● 希少価値 ★★☆☆☆
涙香迷宮が出て以降,竹本健治の著作は結構再販されており,手に入りやすくなっている。とはいえ,この作品はどちらかというと評価が低く,新刊では手に入らなそう。古本だと安く手に入る。プレミアはない。★2で。
● 総合評価 ★★☆☆☆
解説にもあるが,過剰な伏線が一本に収束しない。読後感というより未読という印象で,多数の謎が残ったまま作品が終わるという竹本健治らしい作品。この形で傑作とするには,途中の部分を相当面白いものにする必要がある。匣の中の失楽はそのレベルに達していた作品だったが,風刃迷宮はそこまでのレベルではない。よって,どちらかというと失敗作…きちんと終わらせてることができていないという評価につながってしまう。個人的にはあまり好みの作品ではない。評価も厳しめ。★2で。
メモ
プロローグは日本人女性が外国の遺跡で火事にあった日本人女性の話。天野不巳彦の研究室。天野は助手の宮本真琴から,かつて自分が精神科医を開業していたときの患者だった久保田康平が殺されたことを知る。牧場智久の親衛隊の1人である三崎祐子は,友人の結城太一とある事件の捜査をする。
六本木で殺人事件があり,その被害者が持っていたメモに牧場典子の名前があった。このことから典子は事件に巻き込まれる。
祐子が捜査の最中,容疑者に追われ崖から落ちる。そのとき,牧場智久と思われる少年が助ける。
誰かが牧場家を盗聴している描写。結城太一による捜査。結城太一は牧場智久と思われる人物に出会う。
祐子は独自の捜査で,自分が目を付けていた兵藤という家と六本木の殺人事件の被害者が持っていたメモにある「兵藤啓吾」につながりがあると考える。
太一は兵藤の家に忍び込み,短歌・俳句フォーラムで三田,葉川,兵藤(ハマナス)がつながっていたことを知る。
天野は久保田について警察に話を聞く。
電車で典子は牧場智久と思われる少年に会う。どこか普段と雰囲気が違う。
牧場智久が天野の研究室を訪れる。智久は六本木にはここしばらく,行っていないという。奈々美は六本木で智久を目撃したと言っていたが,話が合わない。
行方不明になっていた巣鴨の質屋の女主人の遺体が発見される。祐子はスイート・ブライアがハマナスを意味することを知る。そして,六本木にあるスイート・ブライアというゲームセンターに向かう。祐子はその店で古くからの遊び仲間である「ぺーさん」の出会う。祐子はペーさんの車でレインボーブリッジに向かい,兵藤伸平というスイート・ブライアの店主が殺人犯の可能性があること,捜査に協力してほしいことを伝える。しかし,ぺーさんこそが兵藤伸平だった。
典子は片山奈々美のアドバイスもあって,フリーライターのショーシン・サンダという人物に会う。典子とサンダはスイート・ブライアに行く。そして,兵藤が祐子を連れているのを見て,兵藤達を追う。警察の篠崎も捜査の過程でスイート・ブライアに行くことになり,祐子達を追う。
レインボーブリッジの近くの倉庫に典子とサンダが入る。その奥にはふつうの住宅の部屋があった。サンダは典子のストーカーをしていた男だった。インドの遺跡の事件で彼女を失ったサンダは,典子を逆恨みする。
典子を助けたのは智久…ではなくトムという少年だた。天野とトムの会話。
典子と祐子は助かる。篠崎の登場。火災があったのは兵藤伸平の家。兵藤伸平と三田章親の死体が見つかる。六本木の事件の被害者はスイート・ブライアの元オーナーである古賀敏幸だった。兵藤はスイート・ブライアの経営が苦しかったので,質屋のオーナーである杉山昌江(葉川由香里)を拉致し,横領した財産を店の再建のために充てる。三田の典子へのストーキングは別の犯罪。別の犯罪が最後に重なっただけに見える。しかし,突き落とし事件の被害者である久保田康平は兵藤の住居の前の代の住人だった。古賀のメモになぜ,二つの事件の関連人物の名前があったかは分からない。
天野と須藤の会話。天野が会った少年,牧場兄弟の異母兄弟を名乗った少年は「トム・マッキーバー」という名前だという。
祐子は牧場智久に会う。智久は携帯電話を持ったことがないという。一応,謎は解明したようにも見えるが,解明していない謎があるようにも思える。古賀のメモに典子と三田の名前があったのはなぜかなど…。
刑事の篠崎は天野に疑いの目を向ける。今の解決は天野が事実を捻じ曲げて導いた偽の決着なのでは。
典子は杉山昌江の死体が見つかった山に行く。そこで無数の風車を見る。それは,典子が父との思いでとして覚えているものと同じ風景だった。
須藤信一郎 宮本真琴(天野の助手) 片山奈々美 三崎祐子 トム 結城太一 弥生 三田章親 葉川由香里 兵藤啓吾(ハマナス) 植島皓明 スイートブライア続きを読む投稿日:2018.04.11
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