漢字と日本人
高島俊男(著)
/文春新書
作品情報
「カテーの問題」と言われたら、その「カテー」が家庭か假定かあるいは課程か、
日本人は文脈から瞬時に判断する。
無意識のうちに該当する漢字を思い浮かべながら・・・・・・。
あたりまえのようでいて、これはじつに奇妙なことなのだ。
本来、言語の実体は音声である。
しかるに日本語では文字が言語の実体であり、
漢字に結びつけないと意味が確定しない。
では、なぜこのような顛倒が生じたのか?
漢字と日本語の歴史をたどりながら、その謎を解き明かす。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 漢字と日本人
- 著者
- 高島俊男
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2001.10.19
- Reader Store発売日
- 2022.12.16
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.1 (45件のレビュー)
-
本来日本語を表記するのに漢字はまったくあっていないというのが高島先生のご意見で、本書もそれが前提で書かれている。日本語と漢語(シナ語)は言語として共通点がほとんどなく、もし日本列島が無文字の時代に漢字…とアルファベットが周辺国で使われていたら、日本では間違いなくアルファベットが入ってきたはずなのである。
さらには、日本語を表記するのに漢字を採用したことで日本語が日本語として成熟する事ができなかったとする。無文字時代の日本語では抽象的な概念を表現するコトバはほとんど無かった。本来はコトバが熟成していく中で、日本語で抽象的概念をあらわすコトバが出来てきたはずが、漢字で表現することを先に覚えてしまい、日本語での語彙がでてくる事がなかったのである。かくして、漢字なしで日本語を表現できるすべがなくなったのである。日常的なできことの表現なら日本語だけで可能だが、抽象的な概念を使っての議論は漢字抜きでは成立しなくなったのである。
「みる」という日本語にあてられる漢字、見・観・視・看・診・覧・海松・水松、ATOKで変換してもこれぐらいがでてくる。高島先生に言わせるとこんな使い分けは無意味で「みる」と書くべしとのこと。この場合では観るをつかうとか、視るが正しいというような蘊蓄を垂れるのはナンセンスというのである。日本人は「みる」ときいたときに文脈から無意識のうちに該当する漢字を思い浮かべながら意味を理解しているというのであう。言語学では言語の実態は音声であり、文字はその影にすぎないとするが、日本語では文字が言語の実態になっており、漢字に結びつけて理解しないと意味が確定しない状態になっているとする。
「みる」は「みる」を書いて、一々漢字をあれはめる必要はないというのが先生の主張である。例えば英語で「take」はつかわれる文脈でいろんな意味を持つが、英語で「take」を書くときに意味に応じたかき分けがあるわけでは無く「take」はtakeとしか書かれない。
最後の数章は日本での漢字廃止運動について書かれている。先生も、和語を書く際には、一部のものはのぞいて仮名で書くのがよく、和語を漢字で書くのはよろしくないとする。しかしながら『「山」「水」「人」「家」のごとく、字もやさしく、またその意によってあてているものは、ながく習慣にもなっていることだからやむを得ない。特に「手」「目」「戸」「田」「根」「木」など一音のものはかながきするとまぎれやすいのでしかたがない。』とし、音読熟語についても漢字を使わざるをえず、この場合は「ほ乳類」「は虫類」といった書き換えはせず「哺乳類」「爬虫類」と書くべしとする。常用漢字はあくまでも漢字使用の目安で一般の社会生活で使われる日本語が対象だが、新聞社等マスコミがこれ幸いと使う漢字を制限しているという。一々活字を拾ってきて製版していた時代に使う漢字を制限するのは出版業界としてメリットがあったろうが、電子製版の時代にそのような手間かからなくなったのにである。
で、感想。高島先生の御説ごもっとも、であります。が、漢字が日本語をさらにゆたかにしてきたという事はありそうに思う。もともとの経緯はともかくとして漢文が日本文化にはたした役割とか見・観・視・看・診・覧といった使い分けが表記としての日本語をより豊にしているということもありそうである。いま「漢文の素養」加藤徹著をよんでいるが、漢字の果たした役割について高島先生とは違う観点からの考え方を知ることができそうである。続きを読む投稿日:2021.07.03
漢字が日本に取り入れられた歴史がおもしろい。
漢字の音は、3~6世紀の中国南北朝の時代につきあいのあった漢人の南朝から呉音が朝鮮や対馬を経由して入ってきた。平安時代の初めに、遣唐使が学んだ長安の漢語…が正音として取り入れられた(漢音)。鎌倉・室町時代には、主に僧侶によって南宋、元、明の頃の漢語が伝えられた(唐音)。
呉音は、如来や供養、精進などの仏教関係、外科、小児科などの医学関係に残っている。呉音以前の音も、相(さが)、馬、梅、銭、竹などに残っている。
漢語がngで終わる音を日本語で表現するために、奈良・平安時代には「ウ」「イ」とし、鎌倉・室町時代には「ン」とした。鈴(レイ、リン)、燈(トウ、ドン)、請(セイ、シン)など。奈良より前は、相(さが)のように後に母音を付けた。
漢語がt,kで終わる一、律、結、日、節、力、直などの音には、「イ」「ウ」を付けた。pで終わる急、蝶などは、最初は「ウ」をつけて「プ」と発音したが、日本語がパ→ファ→ハと変化したことに伴って、「フ」→「ウ」→「ウー」が付くようになった。また、雑、立、執、合、甲、納などのように、日本でpがtに変化したものがある。なお、現代の漢語では、語尾のp,t,kはすべて脱落している。
仮名は本の行間に書き込みをすることから生まれた。カタカナは、漢字の部分をとって略すことで、ひらがなは漢字全体の姿を略すことで作られた。
明治以降、西洋の用語を訳すために、音を無視して文字の持つ意味だけを利用した和製漢語がつくられたために、耳で聞いただけでは意味が確定しない同音異義語が大量に生まれた。一方、日本の文字を音標化して漢字を全廃しようとする動きが生まれ、その過程として戦後の昭和21年に使用する漢字を制限する枠組みとして当用漢字が制定された。続きを読む投稿日:2024.02.05
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。