カメラを持て、町へ出よう 「観察映画」論(集英社インターナショナル)
想田和弘(著)
/集英社インターナショナル
作品情報
世界中の映画祭で喝采を浴びたドキュメンタリー映画『選挙』や『精神』。「観察映画」というユニークな手法を実践する気鋭の映画作家が、いかにして、そしてどのような哲学のもとにドキュメンタリーを撮り、編集し、公開し、経済的にサバイバルしているのか。受講者と共にインタラクティブな形式で語る。ドキュメンタリーとは、世界を切り取り、その断片を再構成することで、作り手の見方や体験を観客と共有する芸術様式。ドキュメンタリーの作り方と哲学を通じて、読者に新たな「世界の見方」のヒントを提示する。
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商品情報
- 著者
- 想田和弘
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社インターナショナル
- 書籍発売日
- 2015.07.24
- Reader Store発売日
- 2022.09.29
- ファイルサイズ
- 6.3MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (6件のレビュー)
-
ドキュメンタリー映画を制作するというとは、どういうことなのか、どんなコンセプトで、どんな方法(撮影、編集)を用い、どう公開するかというところまで、余すことなく語られている。何より、行間からいかにも映画…を制作することが好きなんだという思いがひしひしと伝わってくる。続きを読む
投稿日:2021.08.18
このレビューはネタバレを含みます
ドキュメンタリーとは、目の前の世界をカメラによって切り取り、その断片を再構成することによって、作り手の世界の見方や観客と共有するための芸術様式です。したがって、「ドキュメンタリーをどのように作り、ど…う見せるか」という問いは、煎じ詰めれば「世界をどう観て、どう受け止め、どう生きるか」という問いにつながります。それは、この世界に生きる私たちすべてが、問わなければならない課題でしょう。(p.9)
レビューの続きを読む
観察映画の十戒(pp.36-40)
(1)被写体や題材に関するリサーチは行わない。
(2)被写体との撮影内容に関する打ち合わせは、「(待ち合わせの時間と場所など以外は)原則行わない。
(3)台本は書かない。作品のテーマや落としどころも、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。
(4)機動性を高め臨機応変に状況に即応するため、カメラは原則、僕が一人で回し、録音も自分で行う。
(5)必要ないかも?と思っても、カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。
(6)撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。
(7)編集作業でも、あらかじめテーマを設定しない。
(8)ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。
(9)観客が十分に映像や音を観察できるよう、カットは長めに編集し、余白を残す。その場に居あわせたかのような臨場感や、時間の流れを大切にする。
(10)制作費は基本的に自社で出す。カネを出したら口も出したくなるのが人情だから、ヒモ付きの投資は一切受けない。作品の内容に干渉を受けない助成金を受けるのはアリ。
観察映画では、一見お互いに矛盾するような要素も共存している。矛盾するようでいて、実は矛盾しない。これ、たぶん世界そのものがそういう構造になってると思うんです。その、互いに矛盾するものが共存している「世界の構造」を、なるべくそのまま掬い取りたい。(p.68)
観察映画でカメラを向けるっていうことは、そうやって普通は通り過ぎてしまう現実にあえてカメラを向けるわけはないですか。カメラを向けて、よく観てよく聴いてしまうわけです。
で、よく観てよく聴くとですね、通り過ぎていた、当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃなくなってくるんですよ。なんか急に、全然違うものに見えてくる。それが「発見」なわけですよね。今までは自動的に処理してたようなこと、右から左へ処理していたようなことを、今までのようには処理しないわけです。それが「観客」の効果なんですよね。(p.101)
つくづく思ったのは、編集という作業は、自分が体験した「過去」を現時点から再解釈する作業であるということであす。なんかね、タイムマシンみたいな感じだった。1年半前に撮ったものを、現時点から観るわけじゃないですか。(p.115)
僕はそういう偽もmンを、疑問のまま宙ぶらりんにしておく。「宙ぶらりんにしておくほうが面白いんじゃないか」と考えるのが観察映画です。映像の多義性をなるべく残しておく。(p.126)
「映画は第一に内容、第二に戦略」という言葉。僕はこれを今でも座右の銘にしている。この「第一」と「第二」の順序が大事なんです。(中略)僕はやっぱり、「自分の世界観や体験を他人と共有する装置」として映画というメディアを選んでいるわけで。いわば「芸術としてのドキュメンタリー」を目指しているので、戦略から入るわけにはいかないんです。(p.227)続きを読む投稿日:2021.04.19
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