掌に眠る舞台
小川洋子(著)
/集英社文芸単行本
作品情報
「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」
金属加工工場の片隅、工具箱の上でペンチやスパナたちが演じるバレエ「ラ・シルフィード」。
交通事故の保険金で帝国劇場の「レ・ミゼラブル」全公演に通い始めた私が出会った、劇場に暮らす「失敗係」の彼女。
お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活することになった私。
演じること、観ること、観られること。ステージの彼方と此方で生まれる特別な関係性を描き出す、極上の短編集。
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商品情報
- シリーズ
- 掌に眠る舞台
- 著者
- 小川洋子
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2022.09.05
- Reader Store発売日
- 2022.09.05
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (41件のレビュー)
-
久しぶりに読む小川作品。今回はタイトルにあるように様々な演劇が使われている。
ただ今回は今一つ世界観に入り込めなかった。これは小川さんのせいではなく私の問題。いずれ時を置いて違う状況の時に読み返したい…。
「指紋のついた羽」
バレエ『ラ・シルフィード』
舞台を一緒に見に行った少女と縫い子の交流。繋がっているのかいないのかという危うさだったり、縫い子の心がボビンケースの中に入り込むというところが小川さんらしさか。
「ユニコーンを握らせる」
テネシー・ウイリアムズ『ガラスの動物園』
”昔、女優だった人”という伯母。その”女優”というのがこれまた頼りない。叔母宅に滞在した数日間が淡々としているのに濃い。
「鍾乳洞の恋」
『オペラ座の怪人』
歯のブリッジを取り替えて以来、痛みに悩む女性。そしてそのブリッジの中から得体の知れない生き物が出てくるように。
この歪で怖いものを大切に扱うというのが小川作品によく出てくる設定。読み終えてみれば恋愛もの?
「ダブルフォルトの予言」
『レ・ミゼラブル』
これは正しく小川さんの真骨頂といった話。交通事故の保険金で得た金が偶然『レ・ミゼラブル』全79公演のチケット代と同額だったことから毎日通うことにした女性。ある時彼女に声を掛けてきた女は劇場に住んでいるという。
それにしても小川さんはよくこういう設定を思いつくものだと毎度感心する。
「花柄さん」
これも小川作品ではありそうな話。コレクションも過ぎれば、それが積もり積もってついには形を失くしていき悍ましいものと化していく。
主人公なりのこだわりが花柄とプログラムにもらうサイン。サインをもらう相手は主人公同様目立たぬ存在でなければならない。一方で「花柄」の方は主人公を際立たせている。分かるような分からないような。
「装飾用の役者」
ムーミン?
これまた小川さんらしい、コンパニオンが受けた奇妙な依頼の想い出。依頼人の老人一人のために舞台に作られた部屋で暮らし、老人一人のために芝居を演じる。
老人の目が怖い。
「いけにえを運ぶ犬」
シベリウスとストラヴィンスキー作品を聴きに行った男性の想い出
セントバーナード犬が曳いてやってくる本屋。渡り鳥の本がどうしても欲しいがお金のない少年(男性)は良からぬことを考えるが…。野生の本能?
「無限ヤモリ」
この作品のみ演劇関係ないな…と思ったら芝居小屋の廃墟が出てきた。
子宝に恵まれるという温泉地の保養所に滞在する女性。
宿の夫婦が売っているのは一対のヤモリ。そのヤモリの尾同士が絡まり縺れ合うと無限ヤモリになり、そのミイラは子宝のお守りになるという。
ラストシーンのインパクトはこの話がダントツ。もう誰もかれもが歪んで見える。
悍ましさと美しさ、シュールさと儚さ、現実感と虚構、様々な境界線を今回も楽しませてもらった。続きを読む投稿日:2022.11.25
このレビューはネタバレを含みます
舞台、お芝居をテーマにしている短編集。小川洋子さんの書く文章はどこか現実味がないのにするすると自分の中に入ってきて、読後感がなんだか一抹の寂しさを感じる、そんなところがやっぱり好きだなと思わされた1冊…でした。
レビューの続きを読む
指紋のついた羽
工具箱を舞台に少女がスパナやペンチを使って繰り広げられる『ラ・シルフィード』のお芝居と、少女と縫い子さん、ラ・シルフィードにあてた手紙のやりとりが目に浮かぶようでした。なんでもない工場に散らばるがらくたたちが小川洋子さんの手にかかると一つ一つに物語というか生きているような命が吹き込まれる感じがするし、その情景が目に浮かびますよね。
ユニコーンを握らせる
ローラ伯母さんという、「昔、女優だった人」の家に、試験のために数日泊まる主人公の話。ガラスの動物園はもともとある戯曲なんですね。もし何かで見れたり読めたりするなら触れてみたいです。1枚の絵にすべての気象が描かれた水彩画、1日一目ずつ編まれる手袋、細部の小道具ひとつひとつがほんとに魅力的でした。
鍾乳洞の恋
この中だと一番小川洋子さんの書く不気味さグロテスクさが文章に現れてたお話だと思いました。左下の奥歯から生まれ出る何か、鍼師の院長とのやりとり、依頼されて読んだオペラ座の怪人…すべてが入り混じっていって最後にはよくわからないまま終わったお話でしたけど、その雰囲気、終わり方含め好きなお話でした
ダブルフォルトの予言
これが一番好きかもしれないです、自分も行ったことがある帝国劇場のあの景色を思い出しながら読めたのも楽しかったし、舞台を見て満足げな表情を浮かべて出てくる人の波の描写と、誰にも気づかれない失敗係の彼女のなんというかギャップがとっても良かった。
花柄さん
花柄のスカートがトレードマークの女性の話。彼女が追い求めるのは舞台を観劇することではなく、公演後に俳優にサインをもらうこと。そのもらったサイン入りのパンフレットが、地層のようにベッドの下に広がっている…この話と次の話は、特に、あるテーマからこんなにも独特な世界観を広げられるのが本当にすごいなと思った1遍でした。
装飾用の役者
コンパニオンとして働く主人公のお話。
お屋敷に住み込み、舞台の上で「装飾用の役者」として働く依頼を受けた彼女。
いけにえを運ぶ犬
馬車の本屋(引いているのは馬じゃなくて犬だけど)が売っている、渡り鳥の本がどうしてもほしい主人公のターンと、春の祭典を演奏している演奏会のシーンが交互に来る1遍。これだけ舞台?お芝居?って思ったけど、おばあちゃんの、語りのシーンがそれにあたるのかな?読み返して確認します。
無限ヤモリ
読後感が、これだよ〜!小川洋子さんの作品は!!と個人的になったので、このお話が最後になっているのはとってもいいなと思った1冊。温泉の保養所に止まりにきた主人公と、管理人の夫婦、芝居小屋で鬼ごっこをしている保育所の子どもたち、理容室の鉄道ジオラマ……どこかノスタルジックで寂しさを感じるような、それでいて無限ヤモリという奇妙な存在と、果たして主人公はなんのためにこの保養所に来たのか…?という不信感にも近い気持ちが、最後の舞台の片隅で泣いている男の子とのシーンでふっと軽く霧散するような、それでいて寂しさもあるような感じがとっても好きでした。これも読み返して色々確認したいなあ。
総じてどれも小川洋子さんらしくて大好きな一冊でした!続きを読む投稿日:2024.04.13
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