流転の中将
奥山景布子(著)
/PHP研究所
作品情報
「なぜ、朝敵と言われなければならないのか。我らに何の罪があるというのか」幕末、火中の栗を拾うようなものと言われながらも、京都守護職を拝命した会津藩主・松平容保の弟である桑名藩主の松平定敬は、京都所司代として、兄と共に徳川家のために尽くそうとする。しかし、十五代将軍・徳川慶喜は大政奉還後、戊辰戦争が起こると容保、定敬を連れて江戸へ戻り、ひたすら新政府に恭順。慶喜に裏切られる形となった定敬らは、恭順を認めてもらうには邪魔な存在として遠ざけられてしまう。一方、上方に近い桑名藩は藩主不在の中、新政府に恭順することを決める。藩主の座を追われた定敬は、わずかな家臣と共に江戸を離れることに・・・・・・。朝敵とされ、帰るところも失い、越後、箱館、そして上海にまで流浪した男は、何を感じ、何を想っていたのか――。新田次郎文学賞&本屋が選ぶ時代小説大賞受賞作家が、哀しみを心に宿しつつ、転戦していく松平定敬の姿を感動的に描く歴史小説。
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商品情報
- シリーズ
- 流転の中将
- 著者
- 奥山景布子
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2021.05.20
- Reader Store発売日
- 2021.05.28
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (5件のレビュー)
-
タイトルの『中将』とは『桑名中将』こと桑名藩主・松平定敬のこと。
兄の『会津中将』こと会津藩主・松平容保はよく知られているが定敬の方は詳しい経歴を知らなかったため、興味深く彼の『流転』の物語を読んだ。…
幕末というと薩長側の視点の物語が中心になってくるのだが、桑名側から見ると全く違う物語になる。明治という新しい時代を築いた薩長中心の人々が単なる野心と私怨で徳川を追いやった嫌な人たちに見えてくる。
『養子の責は重いぞ』
定敬の胸に何かとよぎるのは亡き父の言葉。同じ養子として尾張藩主となった兄・慶勝は早々に徳川を見限り薩長と連携した。逆に会津藩主となったもう一人の兄・容保は新政府軍と徹底抗戦する道を選んだ。
定敬は容保に頼まれて援軍を送るべく米沢藩、仙台藩と交渉の旅に出るがいずれも断られ、逆に恭順を促される。
『謝罪と言われるか。我らになんの罪があるか。答えていただきたい』
恭順を促す米沢藩の使者に対する定敬の言葉はグッと来た。徳川宗家・徳川幕府を守り必死に闘ってきたのに、いつの間にか『朝敵』だと言われ徳川幕府ではなく『新政府』というものが取って代わり、そこに『恭順』するために『謝罪』をしろと迫られる。
更には忠義を尽くしてきた将軍・慶喜にも見放され、桑名藩家中にすら見捨てられたも同然の状況に追い詰められる。
やり切れないだろう定敬の気持ちは理解出来るし、自分の納得行くまで抗いたい気持ちも分かる。だが結局は彼の望むように闘うことすら出来ず、ただ北へ北へと敗走する形になるのが切ない。
慶喜も榎本武揚も土方歳三も定敬を利用するだけ利用し見捨てていった。
一方で桑名藩家老・酒井孫八郎の視点で見れば、何とか桑名藩を存続させることで多数の藩士たちのこれからを守ろうと必死に『恭順』で交渉を進めているのに、肝心の藩主・定敬が『恭順』に反対し北へ逃げていくというのは何と身勝手なと思える。
桑名藩家中も『恭順派』『抗戦派』に分かれ、脱藩する者も後を立たず空中分解寸前。
酒井は『抗戦派』はもちろん『恭順派』からも叩かれ追い詰められ、新政府側からは監視されストレス爆発しそうで同情する。
『生まれに従い、家に従い、命に従い。
これまで何一つ、自ら選び取ったことなどないのだ』
養子として桑名松平家に入った定敬には何一つ思い通りになったことはなかった。藩の行く末のような重要なことが自分の知らないところで決められている。そして好きな女性と共に生きることも出来ない。
そんな定敬が唯一自分の意志で行ったことは上海へ逃げることだった。この物語のように本当に船の雑役として潜り込んだのかどうかは分からないが、兄・容保のように戦で闘ったのではないものの、定敬もまた最後まで抗い納得行くまで闘ったのだなと思う。
『下の者に罪をなすりつけ、上にある者は何もなかったかのように生き延びる。そうすることで、全体が延命する。
自分の生きてきた幕府、大名…武家の家というのは、さような仕組みだったということだろうか』
定敬が国を出たいと思うほどの絶望感。だが現代(日本に限ったことではないが)もさして変わっていないように思うのが悲しい。
それでも定敬が家中に見捨てられたのではなくてよかった。少なくとも家老の酒井は最後まで定敬を救うべく動いていた。その酒井はなんと35歳という若さで亡くなっている。このときのあまりの重圧が寿命を縮めたのだろうか。
高須松平家の四兄弟(慶勝・容保・定敬・茂徳)の物語をいつか大河ドラマで見てみたいように思う。続きを読む投稿日:2021.07.12
今回は桑名藩から見た、幕末。今まで、新撰組、大村益次郎、勝海舟、会津藩の幕末を見てきたが、これまた壮絶な日々の末、一体何の誰のための闘いだったのか、また分からなくなった。
どこまでフィクションで事実か…分からないけれども、くじ引きで藩政を決め、上海に流れ着く藩主というのは、現実は小説よりも奇なりを体現しているな、と思った。
土方や榎本と御三方の対立は、なんかお互いが味方でありながら忌み嫌いあっているのがよく伝わってきて、もどかしい気持ちになった。
やっぱり幕末は良いものではないけど、興味をそそられるな。続きを読む投稿日:2022.12.29
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