紙屋ふじさき記念館 物語ペーパー
ほしおさなえ(著者)
,おかざきおか(カバーイラスト)
/角川文庫
作品情報
名古屋の紙こもの市に出店した帰り、手伝いの百花と莉子は紙の勉強のため、仕事で美濃和紙の産地である美濃市に立ち寄る一成に付いていくことに。そこでは和紙の紙すきを体験したりかつての職人たちの歴史を学ぶ。旅行中の会話で、一成は忙しかった両親に代わり、祖母で前社長夫人の薫子に預けられ面倒を見てもらったことで、彼が紙に対して誰よりも詳しくなり愛情を抱くようになったかを知る。大手製紙企業の藤崎産業は同族会社で、先代の祖父から変わって一成の叔父が現社長になっていた。その息子で一成のいとこ浩介は昔から何かにつけ一成をライバル視して、会社では営業課長として記念館の不要論を唱えていた。「記念館がなくなることをあきらめていたけど、残さなくてはいけないと思うようになった」という一成の言葉を受け、百花も奮起し応援する気持ちになる。
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商品情報
- シリーズ
- 紙屋ふじさき記念館
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2020.09.24
- Reader Store発売日
- 2020.09.24
- ファイルサイズ
- 2.6MB
- シリーズ情報
- 全7巻
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この作品のレビュー
平均 3.7 (25件のレビュー)
-
第2弾。
① ふじさき記念館、館長一成の美濃市行きに同行して百花と友人の莉子は、紙漉きを体験する。
美濃和紙の歴史、千三百年というのに驚き、紙の良さを伝えるだけでなく、和紙を使う文化や習慣自体も復…活させなければならないと思う。
和紙の中に秘められた可能性を探り、和紙を今の世の中にふさわしい形で生かすことが、必要だと感じた。
かなり詳しく美濃和紙について書いてあるので、とても勉強になった。
一度、美濃市へ足を運んでみたいと感じた。
② 彫金デザイナーの雫のパッケージのアイデアやディスプレーなど百花の意気込みが、ジンジンと伝わってくるので、応援したくなる場面が盛りだくさん。
ここでは、一成の従兄弟が登場するのだが、彼の嫌味もサラリとかわす一成が男前である。
③ 一成の大学時代のゼミの先輩のお店、新刊と古書の両方を扱うセレクトショップ「文字箱」で記念館のグッズを扱ってもらう。
そこで、百花は亡き父の小説を見る。
これも何かの縁…なのかと思ってしまう。
記念館と文字箱とのコラボで、蝋引きしたペーパーに小説の一部を印刷することを思いつく。
それが、物語ペーパーになる。
この発想と直ぐに実行に移し、自分で見本を作ってみるというのが、とにかく凄い。
おとなしかった百花が、成長したなぁと感じる。
次々とアイデアが、湧いてくるのに、若さなのか…とも思いながら、ますます応援したくなる。
続きを読む投稿日:2022.02.16
★僕は記念館を守ると決めた(p.191)
すべてがうまくいく小説ってのはいいもんです。
「本美濃紙」薫子さんとの会食。/美濃市で紙漉き体験/紙の歴史と自分ができることを考える百花。
「garden …diary」記念館に物販スペースを設ける。/彫金アクセサリーと和紙。/一成にライバル心むき出しのいとこ、浩介。
「物語ペーパー」小冊子研究会の大学祭用冊子作成。/栞に蠟引き紙を。/一成の先輩、綿貫の書店。/コラボ企画として考えた「物語ペーパー」。/積極的になりつつある百花。
■紙屋ふじさき記念館についての簡単なメモ(★は主要語)
【一行目】
そもそものはじまりは叔母からの誘いだった。(第一巻 麻の葉のカード)
やっぱり、そんな簡単に覚えられるものじゃないよなあ。(第二巻 物語ペーパー)
【空き箱】《そうですね、なにも入れません。入れられません。空き箱だからロマンがあるのです。》麻の葉のカードp.13
【朝子/あさこ】瓜生朝子。藤崎産業の前社長の妻である藤崎薫子の秘書。おおらかさと有能さをあわせ持つ。一成のことをファーストネームで読んでいたのを聞き恋人なのかと百花は最初思ったが関係者は全員藤崎さんなのでファーストネームで呼ぶしかないのだとわかる。
【荒船莉子/あらふね・りこ】→莉子
【飯田市】水引の産地。百花の母である冬海と叔母である紫乃の産地でもある。
【石井】小冊子研究会の後輩。一年女子。スイーツを擬人化したイラストを描いている。
【乾】小冊子研究会の後輩。一年男子。四百字以内の超短編ミステリを高校時代からブログに書き続けている。立花ゼミ所属。
【今村紫乃/いまむら・しの】→紫乃
【いろいろ紙ノート】百花が余り紙で父といっしょにつくっていたノート。けっきょくなにも書けなかった。記念館でそういうコンセプトのノートを出すことになった。正式な商品名は莉子の案で「紙の絵本」となった。
【上野/うえの】箱屋さん。一成の信頼も厚い七十代。
【瓜生朝子/うりゅう・あさこ】→朝子
【江戸からかみ】「いろいろ紙ノート」特装版の表紙に使われた。《和紙に装飾をほどこしたもの。「からかみ」つまり「唐紙」。平安時代に中国から伝来した紋唐紙『北宋の彩牋(ほくそうのさいせん)』を手本にして作られるようになり、おもに襖の装飾として発展したらしい。》物語ペーパーp.11
【小川真琴/おがわ・まこと】小冊子研究会の前部長。家業を継ぐ予定。
【薫子★】藤崎薫子。藤崎産業前社長の妻。大株主でいまだ発言権は強い。八十歳になってSNSをはじめた。偏屈な一成のことを心配しており新しいなにかをもたらしてくれそうな百花を取り込もうとしている。《いまは限られた一部の人に高級なものを売るより、多くの人に小さな幸せを届けた方がうまくいく時代だと思う》麻の葉のカードp.210
【柿渋紙】「いろいろ紙ノート」普及版に使われた三種類の紙のひとつ。柿渋を塗って丈夫にした紙。水にも強い。伊勢型紙や和傘にも使われた。
【一成★/かずなり】紫乃の知人。端正な顔立ち。ぶっきらぼうなタイプ。紙屋ふじさき記念館の館長。父は藤崎晃成、母は歌手のめぐみ。株式会社藤崎産業の社長の甥ということになる。
【紙こもの市】さまざまな業者が出店しさまざまな紙のアイテムを出品する。盛況。見ていると語彙が低下し「きれい」「素敵」「かわいい」しか発しなくなり、皆、紙の亡者になる。三日月堂の印刷物なんかもあるかも。
【紙の絵本】→いろいろ紙ノート
【紙屋ふじさき】《江戸期創業の紙の店。日本橋にあり、以前は和紙専門だったが、明治にはいって洋紙も扱うようになった。戦後は株式会社藤崎産業と名前を変え、書籍用紙から医療用の不織布まで幅広く扱う大手企業になっている。》麻の葉のカードp.29。薫子の肝いりで現在では和紙を扱う部門として「紙屋ふじさき記念館」がある。
【紙屋ふじさき記念館★】株式会社藤崎産業の日本橋にある旧本社ビル四階で創業当時からの資料を集めている。館長は一成。もうすぐなくなるかもしれないが薫子は残したいと考えているので一成にハッパをかけている。
【カルトナージュ】《フランスの伝統的な工芸品よ。厚紙で作った箱に紙や布を貼って飾るの。》麻の葉のカードp.18
【木谷/きたに】百花たちの大学の先生。近代小説の舞台になった町について古い地図と現在の地図を比較しながら記述を検証する。という話からすると『菓子屋横丁月光荘』の木谷先生と思われる。
【クラフトパンチ】型抜き用のパンチ。さまざまな型があるらしい。
【孤独】《百花、人はみんなひとりなんだ。だから生きているあいだは、まわりにいる人といっしょに過ごそう。》物語ペーパーp.277
【坂本泉/さかもと・いずみ】小冊子研究会の先輩。四年生。莉子の高校時代の先輩で小冊子研究会に誘った。現在就活で苦闘中。
【真田/さなだ】久川の助手。
【紙胎/したい】紙に漆を塗る手法。
【紫乃★/しの】今村紫乃。百花の叔母。冬海の妹。独身。日日草という器の店をやってる。おおらかなタイプ。
【小冊子研究会★】大学で百花や莉子が入っているサークル。部員は百花、莉子、乾、石井、松下、森沢、西園。と小川、坂本。
【ZINE/じん】個人の趣味でつくる雑誌。小冊子研究会のメンバーには個人でつくる人もいるらしい。
【髙子】日本橋の高島屋屋上で飼われていた象。
【髙島屋】記念館の近所にあるようで、百花がおにぎりを買いに行ったりしている。薫子と特別食堂に行ったりも。阪急百貨店の大食堂みたいなもんかと思ったけどもっとずっとステータスが高いようです。
【立花】百花たちの大学の先生。乾がゼミに所属している。『菓子屋横丁月光荘』の立花先生と思われる。三年次に特定の土地をテーマにした冊子作りを行う。小冊子研究会のメンバーには立花ゼミの人も多い。
【たとう紙】着物を包む紙。
【地域猫通信】西園が毎年大学祭で勝手に販売している個人誌。地域猫と仲良くなるというコンセプト。ピンボケやブレブレだったりしてまともに猫は写ってないがなぜかよく売れる猫好きたちの謎。
【彫金】日本には和彫と洋彫があるらしい。洋彫は柄付きのタガネで前に向かって彫り進め繊細になりやすく、和彫はタガネを金槌で叩きながら手前に彫り進め力強くなりやすいらしい。
【東京紙こもの市】→紙こもの市
【戸川/とがわ】漆芸家。螺鈿が得意。
【徳山/とくやま】紙屋ふじさき記念館の、一成の前の館長。
【豊崎翠/とよさき・みどり】→翠
【西園】小冊子研究会の先輩。三年男子。立花ゼミ所属。
【西山製本】古い綴じ方の製本ができるようだ。
【八十八夜】豊崎翠が祖母から継ごうとしているお茶の店。リニューアル中。
【久川/ひさかわ】建築士。八十八夜の改装を請け負った。
【日日草】紫乃の経営している器の店。一週間単位で作家の個展やグループ展を開いている。
【房野/ふさの】和紙作家。八十八夜の壁面を飾る紙をつくった。
【藤崎晃成/ふじさき・あきなり】一成の父。薫子と正一の次男。自由奔放で人を惹き付け広い人脈を持つ。現在はヨーロッパ支社で新規事業の開拓に携わっている。妻は歌手のめぐみ。
【藤崎薫子/ふじさき・かおるこ】→薫子
【藤崎一成/ふじさき・かずなり】→一成
【藤崎浩介/ふじさき・こうすけ】第一営業部。一成のいとこ。雄一の長男。仕事はできるらしい。どうも一成にライバル意識があるらしく一成に対するとプライドだけ高い小物感丸出しになる。一成の方はめんどくさいヤツだくらいにしかとらえていない。藤崎産業から和紙の取り扱いを削除したがっている。
【藤崎雄一/ふじさき・ゆういち】薫子と正一の長男。藤崎産業の現社長。秀才で常にトップクラス。先見の明もあり和紙のノウハウを生かし医療用不織布などを開発して会社を大きくした。
【淵山雫/ふちやま・しずく】神々しいほど美しい女性。元モデル。彫金系のアクセサリーのデザインをしていて「shizuku」というブランドの代表でもある。作風は繊細で儚くてごてごてぎらぎらしておらず価格もそう高くなく女子大生でも手が出るくらいだとか。
【古い文化】薫子いわく《全部を取り戻さないとダメ、と思ったら、なにもできない。どこにも行けない。》物語ペーパーp.44。《自分につなかる歴史を次につなげるための真剣な遊び。》物語ペーパーp.101
【細川紙】埼玉県小川町でつくられる和紙。ユネスコ文化遺産に登録されている。
【真琴】小冊子研究会の先輩。四年。家業を継ぐ予定。
【松下】小冊子研究会の後輩。一年女子。高校時代に短歌の賞を取ったこともある和風美人。
【翠/みどり】豊崎翠。薫子の友人の孫。祖母がやっていた人形町のお茶の店を継ぎたいと考えている。
【美濃和紙】ユネスコの無形文化遺産に登録されている和紙のひとつ。《美濃和紙は光の和紙だよ。》物語ペーパーp.64。美濃市では百花さんも莉子さんもかなりたくさん紙製品を買ったようで、金持ちやなあ・・・と思いました。
【美濃和紙の里会館】紙漉き体験ができるらしい。一日体験やと四枚も漉くことができるらしい。と思いましたが百花さんは当初四枚しかと感じたようです。五日体験とか一ヶ月体験とかのコースもあるそうです。
【耳付きの紙】端っこがきれいにカットされたものではなく毛羽立っているタイプの紙。おおむね高級品。
【無形文化遺産】和紙では石州半紙、本美濃紙、細川紙が選ばれている。ユネスコが選定。
【文字箱】綿貫伸一郎が開いた書店。
【物語ペーパー】百花発案。物語の一節を和紙に印刷し蠟引き紙にしたもの。「文字箱」との共同企画にできないかと思った。使った作品は吉野雪彦の「屋上の夜」。「物語ペーパー」という名称を聞いただけの時点では新刊なんかが出たとき作って配布する書店販促用のペーパーとかを想像してました。
【百花★/ももか】吉野百花。吉野冬美と雪彦の娘。大学二年生。紙アイテムが好き。どうやら紙そのものが好きなようで包装紙や量り売りの紙に惹かれる。手先が器用で豆本をつくったりもしたが絵のない本、文字のない本だった。大学では日本文学専攻でサークルは「小冊子研究会」。
【百花の祖母】飯田市で以前は水引をつくる仕事をしていた。
【森沢】小冊子研究会の先輩。三年男子。動画撮影が得意でネットにもアップしている。題材は主に自転車旅行。
【柳田/やなぎだ】昔、記念館の近くで筆耕の仕事をしていた。仕事柄よく来ていたそうだ。
【ユネスコ無形文化遺産】和紙で登録されているのは石州半紙(せきしゅうはんし)、本美濃紙(ほんみのし)、細川紙の三種。いずれも楮だけでつくられている。
【吉野冬海★/よしの・ふゆみ】百花の母。雪彦の妻で十五歳年下。紫乃の姉。編集者。現実的なタイプ(と百花は考えているようだがそうでもなさそう)。
【吉野百花/よしの・ももか】→百花
【吉野雪彦★/よしの・ゆきひこ】百花の父。作家。故人。冬海の夫で十五歳年上。結婚したときはすでに作家だったので母も作家としての吉野雪彦しか知らない。紙が好きで手帳屋になりたかったのだとか。百花といっしょにいろんな紙を使ってノートをよくつくった。百花が小学生のとき事故で他界。無口だったそうだ。《頭にある言葉は、全部原稿用紙に吸いこまれちゃってたんじゃないかな。》麻の葉のカードp.307。《お父さんのことは、全部お父さんの書いた本で知ったような気がする。》麻の葉のカードp.308
【落水紙/らくすいし】和紙。小さな穴がたくさん開いてレースのようになっている。《紙漉きで、まだ紙が乾く前に水をシャワーみたいにあてる》麻の葉のカードp.26
【莉子★/りこ】荒船莉子。百花の友人。大学で同じ「小冊子研究会」に入っている。コミュニケーション力やプロデュース力が強い。父親は秩父の出身で川越に親戚がいるらしい。いずれ他作品の登場人物がゲスト出演することもあるかも?
【列帖装/れつじょうそう】綴葉装(てっちょうそう)とも言う。「いろいろ紙ノート」特装版に使われた。《平安時代後期以降の仮名文学に用いられた綴じ方なのだそうだ。数枚の紙を重ねてふたつ折りにしたものを何組か、糸でつなげる方法だ。綴じたものを根本まで開けることができ、開いたとき完全に平らになる。》物語ペーパーp.10
【蠟引き】ガリ版印刷、たくさん作ったなあ・・・
【和紙】繊維が長いので洋紙より丈夫。《人が作ったのではなく、自然から生まれたものみたいだった。》物語ペーパーp.72。《和紙の底にある力をすくいあげて、人々に見せる》p.192
【和紙の原料】よく知られているのは楮、三椏、雁皮。
【綿貫伸一郎/わたぬき・しんいちろう】一成の大学時代の美術史ゼミの先輩。会社勤めしていたが違和感を覚え新刊と古書と文具を扱うセレクトショップのような書店「文字箱」を日本橋に開くことにした。続きを読む投稿日:2023.07.21
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