頂上至極
村木嵐(著)
/幻冬舎時代小説文庫
この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
宝暦治水の話。江戸時代、幕府から薩摩藩に木曽三川の分流工事が命ぜられた。ただでさえ難工事なのに、住民や地元役人は非協力的。最終的に工事は完成するが、工事期間中に薩摩藩士50人以上が切腹し、最後に総奉行・靱負までもが切腹した。靱負と佐江の別れのシーンでは涙がこぼれる。読みやすく、良い話だった。
レビューの続きを読む投稿日:2022.10.02
<薩摩義士>という話しが一定程度知られていると思うのだが、本作はその挿話を基礎にした物語ということになる。
江戸時代には「御手伝普請」なるモノが在った。幕府が諸大名に命じ、諸大名は示された仕様に依拠し…て資材や人員等を自前で手配して工事を遂行するということになる。幕府として、諸大名が財力を蓄え悪くするためにやらせていたことらしい。この「御手伝普請」なるモノで築かれた、有名な城郭の石垣等が色々と伝わっていると思う。
<関ヶ原合戦>から150年も経ったような宝暦年間(1750年代頃)、この薩摩の島津家に対して幕府はこの「御手伝普請」を命じた。
遂行すべく工事は、木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合って流れる、尾張・美濃・伊勢に跨る地域での治水工事である。
気が遠くなるような大工事であるのだが、これに懸命に取組んだ薩摩の人々に関して、<薩摩義士>と顕彰されているのである。
本作はその<薩摩義士>の代表ということになる、“総奉行”として現場の総指揮を執った家老の平田靱負(ひらたゆきえ)と、何人かの人達が主要視点人物に据えられて展開する。
平田靱負は島津家の国元に在った6人の家老の1人で、「御手伝普請」を受けざるを得ない中、方々に頭を下げて廻る役に他ならない“総奉行”は、自身が引き受けなければなるまいと考えて手を挙げる。そして苦難に満ちた任務が始まるのである。
平田靱負は、朝鮮出兵や関ヶ原で苦悶したであろう島津義弘や、関ヶ原で島津家の軍勢の大将で、伯父でもある島津義弘を逃すために奮戦して討死した島津豊久という先人達に思いを巡らせながら、国元から連れて来た者達で無事に工事を竣工させて帰ることを願って懸命だ。
本作の平田靱負と妻の佐江は、互いに「人生のパートナー」と言い得るような好い関係だ。平田靱負が恃みにしている部下が在って、その部下の妻が佐江の友人でもあり、部下の夫妻には娘が在った。お松である。お松の母(=佐江の友人)が他界していることもあり、平田靱負夫妻は半ば自分達の娘同然にお松と接していた。このお松は、家に「御手伝普請」に参加する者が無いことから男装して“松之輔”を名乗って同行し、父親から習い覚えた算勘の知識を活かして仕事をすることになる。
“松之輔”ことお松も本作の主要視点人物となるが、更に他の女性の主要視点人物も在る。“総奉行”の平田靱負以下、全体の指揮を執る関係者が滞在した庄屋の屋敷に在る、庄屋の後継者の嫁であるカナだ。カナは、少女時代に水害で親を失って庄屋の家に引き取られた。長じて庄屋の息子に望まれて嫁になった。気が利く、要領が良いというのでもないカナだが、折角産まれた息子が夭逝してしまって義母に少し辛く当たられているという感だ。加えて相次ぐ水害で、夫も何となく荒んでいるのだが、カナは懸命に働こうとする平田靱負達に接して心動かされる。
「木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合って流れる、尾張・美濃・伊勢に跨る地域」は利害関係者も多く、色々と面倒な条件を幕府側に押し付けられて工事に取組む薩摩の島津家が最初から信頼されているのでもない。そういう中で、「懸命に働く姿」で人々が動かされるという顛末が爽快である。
何か「読後感」が好い物語だ…続きを読む投稿日:2020.07.08
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