花の鎖
湊かなえ(著)
/文春文庫
作品情報
驚きのラストが胸を打つ、感動のミステリー。
両親を亡くし、愛する祖母もガンで入院中、さらに講師として働いていた英会話スクールが破綻し金銭的に困っている梨花。
建設会社で働いていたが、伯父夫婦のすすめで営業職の和弥と結婚した美雪。
公民館で水彩画教室の講師をしつつ、和菓子屋でバイトをしている紗月。
そして、3人の女性の人生に影を落とす謎の男・K――。
大ベストセラー「告白」でのデビューから進化し続ける作家・湊かなえが放つ、感動のミステリー。
中谷美紀、戸田恵梨香、松下奈緒でドラマ化もされ、話題を呼んだ傑作。
※この電子書籍は2011年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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商品情報
- シリーズ
- 花の鎖
- 著者
- 湊かなえ
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2013.09.03
- Reader Store発売日
- 2020.05.15
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 368ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (600件のレビュー)
-
映画を見ていて、ふと白ける瞬間があります。主人公が電話に出る場面。いつの時代のケータイだよと、何だか気持ちがスッと引いてしまう感覚ってないでしょうか。恐らく映画撮影時は最新鋭機種だったであろうそのケー…タイが逆にその時代を象徴してしまっているが故に、物凄く古臭く、ダサく見えてしまうのだと思います。そして、その印象に引っ張られてその映画自体まで時代が特定されるが故に古臭く見えてしまいます。ケータイは過去にも現代にもありますが、変化が大きすぎるものの代表でもあります。一方で、同じ身の周りのものでも太陽とか月だとか、雨とか雪だとか、森の樹とか、花、まあ品種改良されすぎるものは別にして自然に咲く花なんかは時代が変わっても見る人に同じイメージを与えます。一方、人が作ったものであったとしてもその街の名物、例えばたいやきであったり和菓子であったり、こういったものもそれだけが描かれていてもそれがいつの時代かを特定することはできません。特定の時代を象徴しないもの、それだけではいつの時代か特定し得ないものがある。これは映画だけでなく小説であっても同じことが言えると思います。特定の時代を象徴するものが登場しない限り、読者はそれがいつの時代の話なのかを伺い知ることはできません。時代が変わっても人の心は大きくは変わらないもの。その時代、その時代に精一杯生きる、生きた人たちがいる。
勤めていた英会話スクールが経営破綻した梨花、父母を亡くし一緒に暮らしていた祖母が悪性腫瘍に侵されていることを知ります。手術費用の捻出に悩む梨花は、かつて父母が亡くなった時に援助を申し出てくれた『K』という人物を頼ろうとします。『親類縁者もおらず、わたしにはKさましか頼る人がいません。援助してくださいとは言いません。お金を貸してください。どうか手遅れにならないうちに祖母を助けてください』と手紙を書く梨花。そして、『K』から会いたいという返事が届きます。亡くなった母の誕生日に今も届き続ける『K』からの大きな花束。『K』とは誰なのか、何者なのか。
『美雪ちゃんの結婚のお世話をさせてもらえないかしら』、伯母の紹介から和弥と結婚した美雪。『子どもなど、結婚すればすぐにできるものだと思っていました』という美雪。でも、『一年経ち、二年経っても、子供は授かりませんでした』そんな二人。和弥は思い悩む美雪を庇います。その一方で、『目標ができたんだ。今自分の持っているものすべてを賭けてもいいと思えるくらい大きな目標だよ』と話す和弥。勤めていた会社を辞め、美雪のいとこが代表を務める設計事務所に移り、県が進める香西路夫の美術館の設計コンペティションへの出品に全力を傾けていきます。
『絵の道を志していたわけではない。学生の頃に高山植物の心覚えとして描いた花のイラストが、ある山小屋でたまたま出版社の人の目に留まり、有名な作家の山岳小説の表紙に使ってもらえることになり、あれよあれよというまにイラストレーターになって画集までだしていた』という紗月。そんな紗月は短大時代に加入したW大学の山岳同好会の歓迎会でその場にいた先輩に『お父さん』と呼びかけてしまいました。そこから始まる二人の関係、何万分の一かの確率での出会いの真実が明らかになっていきます。
『駅前のアカシア商店街にある「梅花堂」っていう和菓子屋』の『きんつば』、この街の人々に八十年以上にもわたって笑顔を送り続けてきた地元の名物。親子何世代にも渡って紡がれる地元の人なら誰でも知っている街の象徴が最初から最後まで作品のモチーフのように描かれていきます。また、『りんどう』の花が梨花、美雪、紗月のそれぞれの人生に豊かな彩りを与えていきます。
巧妙に張られた伏線の数々。中盤を過ぎる頃から、あれ、これ、もしかして?という謎解きがそこかしこに覗きだすと気持ちがどんどん集中していくのを感じました。そして、怒涛の伏線回収とホロリとくる結末。う〜ん、湊さんこういった作品も書くんだ、という驚きをまず感じました。解説の加藤泉さんも書かれているとおり、この作品は湊さんの『白』作品です。湊さんというと、うぐぐ、という嫌な読後感が定番です。それが、この作品の結末に読書が目にするのは、もう信じがたいような、目も眩むような後光が差す、神々しいまでの真っ白な世界です。素直に感動しました。
湊さんはこの作品を『次の自分を引っ張ってくれる作品だと思っています』と語られています。そして、『読んだ後で、誰かに「ありがとう」と言いたい気持ちが湧いてきたら、これほど嬉しいことはありません』とも語られる湊さん。
湊さんの作品を読んで9作品目にして、湊さんに思い抱いていたイメージがすっかり変わることになった、とても強く印象に残る素晴らしい作品でした。続きを読む投稿日:2020.03.29
物語の見せ方がとても綺麗だった。
3人の女性の展開や関係性が独立だったのが,徐々に紐解かれる感じがよかった。気づくタイミングは個人差ありそう…
もう一回読んで,伏線(?)を楽しみながら読みたい。投稿日:2024.03.29
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