キルタイム・オンライン 無能少年は受け継ぎし神スキルで電脳世界を無双する
渡葉たびびと(著者), 夕薙(イラスト) / 富士見ファンタジア文庫
作品情報
第二の世界とも称される最先端VRゲーム〈キルタイム・オンライン〉。憧れのNo.1プレイヤーに秘めた資質を見出された『無能』少年は、伝説の神スキルを受け継ぐことになり・・・・・・。超弩級の電脳バトルアクション!
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商品情報
- シリーズ
- キルタイム・オンライン
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 富士見ファンタジア文庫
- 書籍発売日
- 2020.02.20
- Reader Store発売日
- 2020.02.20
- ファイルサイズ
- 6.8MB
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この作品のレビュー
平均 5.0 (1件のレビュー)
-
煩悶し、苦悩を続けたタイムラグ。やってきた刹那の勝利とキルタイム。
巨悪は元より「悪」不在にしてリアルとバーチャルの両輪立てが光った快作『暗殺拳はチートに含まれますか?(略称:暗チま)』にてデビュー…された「渡葉たびびと」先生が世に再び送り出した最新作です。
今。具体的には2020年より少しだけ先の未来、五感を再現して仮想の世界に飛び込んでいくそんな技術が確立した、そんな遠くない未来を描いた物語になります。
題材も前作と同じくとしてVR――ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)、そしてそんな「少年少女の遊び場」で繰り広げられる格闘ゲームです。
「暇を殺す(≒潰す)」ためと銘打たれたその舞台の名は、ちょうど本書と同じく「Kill Time Online」。
装画は数々のゲーム、ライトノベルなどでキャラクターデザインを担当されている「夕薙」先生。
風抜けるような可憐さと、撃ち抜けるようなカッコよさ、行間に込められたちょっぴりの遊び心を拾いだし、美少女から俗物まで描き出します。「カクヨム」で先行連載された本文にさらなる彩りを加えてくださっています。
さて。
今度は、敵がいます。
『暗チま』が電子の世界に位置を変えたとしても、同好の士と技を比べ合うフレッシュで健全な「スポーツ」的な「ゲーム」の楽しさに終始したこと、同ジャンルでは異色の作風であることを振り返り考えますと。
巨悪に立ち向かう本作は、ある意味で王道の筋立てに立ち返った形に立ち返った形になるのかもしれません。
言うならば今回の敵は、薄汚い「大人の論理」。延々と描いても面白みも何もないだろう「利権構造」。
だったら、同じ大人の世界に任せようという小癪ぶった論理は今はいりません。そういった舞台裏はストーリー上では排されて、小気味良く「子どもたちの賛歌」を謳い上げるためと割り切っちまいましょう。
だって、この物語は変わらない「ボーイ・ミーツ・ガール」。
きっと、少年と少女の対等な恋物語はいつの時代も変わらずに読者と観衆の目を引き付ける。時代を越える。少年は、加速した時の中で、停止した空間の中で、君のための逆転を演出します。
ゲーム内で一番欲しかったスキルという名の才能を得られない、そんな絶望を前に胸をかきむしった主人公「神里柊(シュウ)」、それを打破するための光明を持ってきたヒロイン「天堂絵礼奈(エレナ)」。
落として上げる、常道の手法を活かした導入部は約50ページ。一巻で行けるところまで行ってやるという気概を感じました。
さしずめこれは疾走の物語。主人公に与えられた能力が「時」に関連するというのもその印象を後押しします。
そうして、私が感じたのは十万字という括り、文庫本一冊という縛りで、出し切ってやろうという気迫なのです。
必然、「これから」を予感させる、普通の物語という形に収まったことも否めません。
けれど、それでも作家「渡葉たびびと」が有する遊び心、女の子同士の親愛を愛するという気持ちは健在です。
そして、それに加えて何者かになりたいけどなれない僕たち私たちに向けた苦悩と、それを乗り越えようというエールは普遍的なメッセージとして読者に届くと私はそう信じています。
ここでタイトルに話を戻しますと「キルタイム」とは主に対人戦で敵を打ち倒すのに要する時間を意味する「ゲーム用語」でもあります。
このように作品全体を包括する象徴的なタイトルの後に昨今のネット発小説で見られる説明的なタイトルを副題として後付けするのが、最近のタイトル命名の流行りのようですが、さもありなん。
案外この副題、挑発的か煽情的だったりしますね。
ここで「チート(ずる)」という言葉も思い浮かんだ方も多いのかもしれません。
ここで言う「チート」とはゲームを本来の仕様とは異なる挙動で動かす方の意味で合っています。
とはいえ、昨今では「ゲーム」を連想させるネット発小説の隆盛も目立つところ。
本来後ろ暗い意味なのに、得た強大な力のことを「チート」だ「壊れ」だなど言って、無邪気にはしゃいでる主人公が目立ち。
また、何の努力もなしに神様からもらった力を振るって悦に入るだけ、という偏見も根強いのかもしれません。
具体例は挙げません。所詮は漠然としたイメージにすぎませんので。
なんにせよ本作は、そういったネット小説ならではのイメージをほのめかしつつ、冗談めかして言うことによって上品にいなしているのでその辺にも好感が持てました。
「チート」を授ける「女神」と自らのことをうそぶくヒロインと、それを受けて代わりに戦う主人公。
今更説明が必要かは置いといて、転生の場に立ち会って大体勇者の誕生を見送る女神さまって、ネット小説というカテゴライズの中でもジャンルは違うにせよまぁテンプレ(お約束)ですよね。
私は好きですが。特にこの物語の場合は同じゲームの盤上に上がる対等の人間であることもあります。
そんなわけで正面戦闘を行うプレイヤー(作中の名称は戦神(ストライカー))と、後方支援を行うエンジニアという形で主人公とヒロインの役割分担がされていたりします。作中でも正面切って戦えないことを気に病むヒロインに対して主人公から言及があったりで、この辺は簡潔ながらに深いなと感じました。
後方支援チーム(+ヒロイン信奉者の戦えるサブヒロインの「アリサ」)がヒロインを筆頭に女所帯ってのもにぎやかで楽しいのです。
特に口絵その2で主人公&ヒロインの間に割って入るアリサの絵はとみに良かったと言っておきます。
続刊でにぎやかし役の子たちの掘り下げも欲しくなるのは、コミカルパートの軽快さを証明しているようです。
あと私見ですが、やはりこの物語はプロローグで語られた「何者にもなれない絶望」が効いていますね。
「外付けの希望」があってこそ主人公自身のスペックが花開き、爽快感が生まれる一方で眼前の敵を素早く打倒していくといっても、貰い物の力ゆえにどこか後ろめたいヒロイックさにつながっている気がします。
勝ち負け以前の問題として金や身柄を賭けた全く不健全なゲーム内「闇経済」が成立してしまっているので、そんな輩を打倒する上で致し方ないわけですが。
強大な力にはリスクがつきもので、それでバランスを取っているような部分もあるとはいえ、進んで反動を受け入れるように動く主人公の姿が胸を衝きます。だからか、どこか好きです。
ちなみに、前作からひるがえって主人公の戦闘スタイルが格闘の応酬というより一瞬でやるかやられるかの駆け引き、手札の切り合いに移り変わったのは好みが分かれるかもしれませんが、情報開示のタイミングが的確だったので個人的に相当惹かれました。
説明パートに間髪入れずに敵の襲撃を加えつつ、行き着く暇のない濃密な二日間を、最低限の情報と、それでも漏れだす遊び心によって、前述したようにスピーディーに終わらせます。
本作における「悪」は前述した通りに(少なくとも現時点では)舞台裏のため、姿こそ見せることはありません。
けれど、アイコンとしての巨悪に、表舞台を頂点のままに去った男「ゴルロワ」を設定して一気に決戦に向けて畳かけるそんな構成も本作の見どころでもあったりします。
ゴルロワ個人としてはTHE・俗物としか言えない悪党だけれど、ショーマンシップと強さは本物の男だったりで、戦い憤りながらもどこか笑みがこぼれてしまういましたが。
ただ、それも彼のヒール成分だけに由来するものとも限らないようですよ。
先ほどはああ言いましたが、強敵と戦い終わってみれば再戦を匂わせる心地よい感触が戦後にやってくる、高らかに「ゲーム」の良さを謳い上げるメッセージ性も本作の美点なのです。
とはいえ、ゴルロワの打倒によって一旦は話を閉じることになります。
「これから」長く続くだろう戦いを示唆したこと、それにここ一巻ではゲーム内での分身「アバター」を介した交流に割り切った構成なので、リアルも気になることも確かなのですが、きちんとキリ良く終わっています。
あと、わざわざ「無(エンプティ)」と「なにもない」ことを銘打たれた当初の主人公のスキルが、単にコンプレックスの発露させるための作劇的事情に留まらない、作為的なものを感じるなど、二巻に向けた材料はそろっているように感じました。
ここでひとつ余談ですが、プレイヤーひとりひとりに与えられた固有スキルのことは、作中用語では天の配剤か「ギフト」と名付けられているんですよね。これを素直に「gift」、英語でいう贈り物と解釈してもいいんですが、もうひとつ同音同スペルのドイツ語で解釈すると大変なことになったりします。
なんにしても天から与えられた才は時にその多い少ないによって人を苛むのです。
だけど、楽しむという一点に考えと魂を置くのなら、その苛みも苦しみも楽しめる気がするのだから不思議なものですね。私は主人公の得た自分のためだけの悲しみも、楽しむための財産だという意見に賛同します。
作中では名があったりなかったりする連中の悪意に晒されて嘲笑される場面が意外と印象的に残されていると思うんですが、誰かを指さし嘲るのが楽しみであるというつもりは毛頭ありません。
だって、楽しむということは悲しみも喜びも、怒りだってすべて含んでいてこその楽しみなのですから。続きを読む投稿日:2020.02.23
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