いくさの底
古処誠二(著者)
/角川文庫
作品情報
「そうです。賀川少尉を殺したのはわたしです」第二次世界大戦のビルマ北部。日本軍警備隊が駐屯することになったある山村で、一人の将校が殺害される。村人には死因を伏せたまま、連隊本部から副官が派遣され事態収拾が始まるが、第2の殺人が起きてしまう。通訳を務める日本人商社員、依井の視点から描かれる正体不明の殺人者と協力者とは? 第71回「毎日出版文化賞」「日本推理作家協会賞」(長編部門)W受賞作! 「戦場」という閉鎖空間の山村を舞台に、重厚繊細に描かれた戦争ミステリの名作!
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商品情報
- シリーズ
- いくさの底
- 著者
- 古処誠二
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2020.01.23
- Reader Store発売日
- 2020.01.23
- ファイルサイズ
- 1MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (6件のレビュー)
-
これぞまさに古処さんにしか書き得ない戦争小説×ミステリ。改めて古処さんの戦争小説の凄みを感じた作品です。
舞台は太平洋戦争下のビルマの小さな村。戦争小説といっても、この小説では大きな戦闘もなく、殺人…事件こそは起こるものの特攻や玉砕といった、戦火の悲劇が描かれるわけでもなく、非情に地味な展開が続きます。
古処さんの文体も、感情や修飾的な著述を排した静かなものなので、前半は退屈に感じるところも多いかもしれません。
事件が起こってからが俄然面白くなってきたかなあ。戦時下、ビルマ、この状況ならではの犯人の見当と推理の仕方がかなりロジカル。
そこに、被害者の中将の過去の行動の不審な点も相まって、どんどん本格ミステリらしくなってきます。このあたりは、さすがミステリ界隈からも評価を受けただけのある作品だと感じました。
そして、クライマックス。真相が明らかになり犯人の動機が語られるとき、これが戦争ということなのか、と考えてしまいました。
この状況で、そしておそらく日本軍でしか起こりえない事件と動機の設定に加えて、軍の暗部、兵士の哀しみを折り込み、戦争に狂わされた人生の悲哀と戦争の業を描いていたと思います。
先に書いたように特に戦闘シーンもないので、これを戦争小説でやる意味はあるのか、と思わなくもなかったのですが、読み終えてみると、これは確かに戦争小説であることが分かるのです。
いつも思うのですが古処さんの戦争小説は、他の戦争小説とは一線を画しているように感じます。戦争の悲劇や死をドラマチックに描くことを避け、反戦や厭戦の意味を物語に積極的に込めるわけでもない。
徹底して冷徹に、そしてリアルに戦争という極限状態での人の業を見つめる作品を書かれているように思います。
だからこそ逆に人の業を通して、戦争の目に見えない部分。ドラマチックに語られがちな戦争の悲劇とは違う、表面化させることが許されなかった人々の叫びが、聞こえてくるように思うのです。
精緻に練られた構成に、抜群のリアリティの本作は、特殊状況下のミステリとして、ホワイダニットのミステリとしてはもちろん、戦争小説としても、とても強い力を持った作品でした。
以下、余談。
この作品が賞を二つ取って、このミスでもランクインしたので、これを機に絶版になっていたり、文庫化されていない古処作品に何らかの動きがないか、ちょっと期待した自分が当時いたのですが、結局何もなかったなあ。確かに売れにくいジャンルだとは思うけど、勿体ないよなあ……少なくとも自分は買うのに。
第71回日本推理作家協会賞
第71回毎日出版文化賞
2018年版このミステリーがすごい!5位続きを読む投稿日:2020.02.09
太平洋戦争でのビルマを舞台にした戦争小説のようなサスペンスもので、まさかのオチがあり普通に面白かった。主人公が通訳という立場なのも、中立的視点となって良かった。
また、ビルマ人・日本人の人々の人間性が…それぞれのキャラに表れていて、日本人としては共感とともに反省しないといけない一面があるなと、、続きを読む投稿日:2023.04.11
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