夢と魔法の国のリドル(新潮文庫nex)
七河迦南(著)
/新潮文庫nex
作品情報
楽しい遊園地デートになるはずだった杏那と優。しかし二人は突如別々の世界に引き裂かれた。杏那は異世界を魔王から救う役目を担わされ、残された優は遊園地で起きた密室殺人事件の謎を解く羽目に……。現実と夢の国、二つの密室、パズルと魔法の謎を解き、二人は再会できるのか? 紙とペンを用意して読んでも必ず欺(だま)される、異色の新感覚本格ミステリ。『わたしの隣の王国』改題。
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商品情報
- シリーズ
- 夢と魔法の国のリドル(新潮文庫)
- 著者
- 七河迦南
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫nex
- 書籍発売日
- 2019.06.01
- Reader Store発売日
- 2019.06.07
- ファイルサイズ
- 13.4MB
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この作品のレビュー
平均 2.6 (7件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
2018年に読んだミステリの中でベスト1に選出した傑作,「アルバトロスは羽ばたかない」の著者である七河迦南の著作。「アルバトロスは羽ばたかない」と「七つの海を照らす星」のデキは素晴らしく,この著者の他の作品も読んでみたいと思っていた。しかし,七河迦南は寡作の作家で,なかなか他の作品が見当たらない。そんな状態で,偶然にこの作品を本屋で発見し,すぐさま購入,読破した。やはり期待が高すぎたのか,残念ながら「アルバトロスは羽ばたかない」と「七つの海を照らす星」にはとても及ばないデキだった。とはいえ,著者の本格ミステリ魂というか,読者を驚かせたいという意気込みは分かる。この作品のメインとなる仕掛けは,巻頭にある「主な登場人物」に登場しない人物が犯人であるというもの。この作品の中の「夢の国」ハッピーファンタジアの親会社である株式会社ハッピーアイランズの社長であり,メインキャラクターであるハッピー・パピーを作り出した奥谷光二。その兄である奥谷光一が犯人。この奥谷光一の存在は,物語の中できっちりと示されているものの,さすが七河迦南と思わせる叙述トリックが披露されている。
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登場人物外の人物である奥谷光一は,ハッピー・パピーの声優。そして,ハッピー・パピーの声優は謎の人物であることは,作中でもきっちりと描かれている。ヒロインである神流川杏奈は,ハッピー・パピーの声を誰よりも知っていて,聞き間違えないという点も伏線として示されており,杏奈がハッピー・パピーの声を聞いたのだから,その声優が犯行現場にいたはず,という推理はできるはず。著者はそのように考えて,登場人物外の人物が犯人であるという仕掛けをしたのだろう。
残念ながら,この企みは「アルバトロスは羽ばたかない」のときのようにハマっていない。その理由は,この仕掛けは大きな驚きをもたらすほどの仕掛けではないからだと思う。この作品はヒロインである杏奈がハッピーファンタジアの中をキャラクターとともに冒険するという,ファンタジー要素があり,それと併行してヒロインの彼氏である相田優が,株式会社ハッピーアイランズの専務である椎野利雄が殺害された事件に巻き込まれるという構成になっている。殺人事件は1つしか起こらず,杏奈のハッピーファンタジアでの冒険というファンタジー要素が目立つ構成となっているのだが,その部分と「登場人物外の人物が犯人」というミステリとしての仕掛けの相性が悪い。え?こんなファンタジックな冒険をして,トリックがそれなの?という違和感を感じてしまう,著者としても「登場人物外の人物が犯人」というトリックだけでは物足りないと思って,ハッピーファンタジアでの冒険というファンタジー要素を持ち込んだのかもしれないが,ファンタジーぶぶんとミステリ部分が噛み合わず,ただチグハグとなり,驚かせようという意気込みは分かるけど,ちょっと驚けないチャチな作品という印象になってしまっている。
その印象に拍車を掛けるのが,細かい仕掛け。魔法陣やアナグラムを取り入れ,杏奈を夢の世界では「リドル=謎」と呼ぶなど,ファンタジー部分にも謎の要素を入れ,パズル的な楽しさを出そうとしているのかもしれないが,9次魔法陣や積魔法陣は謎として面白いとまではいえず,アナグラムもスマアトホン→ほんまあすと,Keita Idenwa→いたいけウェンダとか,上手いというほどでもない。全体的にパズル的な謎も弱く,総合的な評価として謎が拙いと感じてしまった。
そもそも,登場人物外の人物が犯人というトリックは短編〜中編で使うべきトリックだろう。ハッピー・パピーの声優=謎の人物が犯人という部分だけ捉えると,それなりに上手く「登場人物外の人物が犯人」という仕掛けをさばいているように思える。それをファンタジー的な部分と合わせて長編にすることで,仕掛けから目をそらそうとした点が失敗しているように感じる。「アルバトロスは羽ばたかない」では,野中佳音を北沢春菜と誤信させる叙述トリックを4つの短編で目眩しにするという仕掛けが見事にハマっていたので,同じような効果を狙ったのだろうけど,一発もののトリックを,そのほかの物語に紛れ込ませて炸裂されるという構成は,難しいのだろう。
「登場人物外の人物が犯人」という仕掛けで,中編くらいの構成で,もっとシンプルに仕上げていれば,それなりの作品になっていたとは思う。ただ,やはり登場人物外の人物が犯人というのは難しいと思う。見事に決まってもアルバトロスは羽ばたかないほどの衝撃はなかったと思う。
出来としては★★程度。メイントリックを効果的に生かせない構成となっている点もマイナスだが,登場するキャラクターにもそれほど魅力がない。ユーモア要素,パズル要素も空回り。残念ながら高評価はできない作品だった。投稿日:2020.10.23
面白そうなので期待して読み始めたが、夢と魔法の国にたどり着くまでの冒頭の20ページほどがつまらなすぎてやめてしまった。
章と章の間に童話のような短い話が挟んであり、それが魔法の国の出来事なのだろうとわ…かっているのだが・・・。
読んでる人もたくさんいるので、読み切ればきっと面白かったという感想を持てるんだと思う。
しかし、そこにたどり着くまでに読みたいと思えなかったので投げてしまった。
残念。続きを読む投稿日:2019.11.25
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