この作品のレビュー
平均 4.0 (23件のレビュー)
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フィンランドはトランジットで一度降り立ったきりだが、外が真っ暗だったにも拘らず何故かほっこりしたのを覚えている。「乗り換えと言わず、いつかこの国でガッツリ過ごしてみたい」と思ったのも。
その後もSNS…でフィンランドの幻影を追い続けていた中で、akikobbさんに本書をご紹介いただいた。(有難うございます^ ^♪)
留学のため1970年代後半に渡芬(漢字表記にすると「芬蘭土(フィンランド)」)した著者の、フィンランド語奮闘記。…だけでなく、現地での生活模様や文化の違いが赤裸々に明かされている。
それなりに厳しい面もあっただろうなーと感じることもあったが、ますます彼の国への憧れを募らせる運びとなった。
「三年近く住んでいたが、いやなことは何もなかった。ただ、脳ミソの中に少しバターが混ざったかな、という感じだけだ」
こんな感じの程々にユルくて、(自分が冒頭で感じたような)ほっこりする留学生活を目の当たりにすれば、誰だって憧れを募らせるだろう。ついでに自分は著者のどっしり構える精神にも惚れました。
本書の解説を担当された言語学者の黒田龍之介氏は、やはりフィンランドの言語システムに興味津々だった。氏は氏でフィンランド語への憧れが増大しているようだ。
母音音素が8つあって日本人には発音しやすいが、Rの発音は巻き舌が必須。(著者同様、巻き舌が苦手な自分は終始涙目になると思う…) 三人称単数系がたった一つしかないため「彼」か「彼女」か性別が分からないことがある。
あの文体からかそこまでがむしゃらな感じはしなかったけど、翻訳アプリもなかった時代にこうしたハンデを乗り切るには、絶対本には書ききれないほどの勉強量があったはず…。
フィンランドの方言や古代語の学習に取り組むなど、チャレンジの幅も凄い。更には趣味とはいえ、フィンランド語でモダンバレエやピアノを習おうとしてみたりと、外国に住むとここまでアクティブになれるものなのか…と感嘆する。
何もかも熱心に吸収するこの姿勢こそが、真の留学と呼べるのかしらん。
姿勢といえば、厳寒をマスターしていくところも面白かったし勉強になったな。
例えばサウナ。学生寮やアパートにある共同サウナでのエピソードは読んでいるこっちも温まってきた。お隣のおばさんと退室後に食事を共にしたりと、充実したサウナーライフも満喫していたようだ。(アクシデントで退室できなくなった話には冷や汗をかいたが…)
他にも寒暖計を確認せずに零下何度かを当てる「マイナスごっこ」をしてみたりと、寒さをマスターするどころか手懐けているように見えた。
「もし今誰かに、フィンランド語は難しいかときかれたら、『いいえ、ゲームのように楽しいわ。だって文法が十分に複雑なんですもの』と答えるだろう」
ふと思う。フィンランドには刺激が少ないと仰っていたけど、生きていく上で必要な分の刺激は語学学習で摂取されていたんじゃないかと。それも無意識のうちに。続きを読む投稿日:2023.10.26
表題への?と北欧への興味から読み始めた。
筆者の留学生活について、言語に重きを置いて書かれていた。
外国での生活は、彼女の圧倒的な努力によって色づいたものなのだと感じた。
現地の人との関わりや、寒さに…対しての言及があった章が特に印象深かった。
私は、恥ずかしながら留学について抽象的なイメージしか持っていないが、やはり楽しさと共に、些細な所で感じる言語の壁や望郷の念など様々な苦悩があるのだと思う。
フィンランドに関して特に何も知識はなかったが、さほど専門的な内容はなく、楽しく読めた。続きを読む投稿日:2023.12.04
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