新にっぽん奥地紀行 ~イザベラ・バードを鉄道でゆく~
芦原 伸(著)
/天夢人
作品情報
明治11年。開国間もないニッポンに、ひとりの英国貴婦人がやってきた。イザベラ・ルーシー・バード。旧街道を引き馬に乗ってゆく過酷な旅路を歩いた彼女の目に、いまだ江戸の面影を残す東北、北海道の景色はどのように映ったのか??。鉄道・歴史紀行文の名手である著者が、バードの足跡を訪ねて歩いた鉄道の旅。彼女が見た明治期の日本を探しながら、現代日本の地方都市を歩き、人と出会い、風景と食、そして酒を堪能しつつ“近代日本”の真の姿を考える。雑誌『旅と鉄道』誌上で16回にわたり掲載された連載ルポ、待望の単行本化。【目次】序章/第1章「横浜」/第2章「東京」/第3章「日光」/第4章「会津(前編)/第5章「会津(後編)」/第6章「新潟」/第7章「置賜」/第8章「上山」/第9章「秋田」/第10章「大館」/第11章「黒石」/第12章「函館」/第13章「噴火湾」/第14章「室蘭」/第15章「勇払原野」/第16章「平取」/あとがき
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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明治11年。東京や横浜はいざ知らず、少し地方にいけば、まだ十分江戸時代が残っていた頃、イギリス人女性がたった一人で日本の奥地(東北・北海道)を旅する。それも47歳という年齢で!
イザベラ・バードは引…き馬に乗って、または人力車で、どうしようもないところは徒歩で旅をつづけたけれど、この本ではそれらの道を基本的には鈍行列車で旅をする。
鈍行列車の車窓から見える景色は、まだ、バードが歩いたころの風景が残っている場合が車よりも多いから。
そういう旅もあるんだなあと思った。
平取で彼女が歩いた道を少し歩いたことがある。
自然以外に何もないその道は、けれども全くの手つかずの自然というわけではなく、きれいに手入れされていた。
それよりは、山深い田舎の、線路わきの原生林の方が、よほど当時を偲ばせるかもしれない。
日光を過ぎ、会津からのみちのくを旅しながら、バードは宿の臭さと蚤(のみ)に悩まされ続ける。
それと食事の貧しさにも。
函館で久しぶりに洋食を食べたこともあるのかもしれないが、北海道に入ってからはかなり開放的な気分になったことが記述から伺われる。
梅雨前線と共に北上したため、北海道に梅雨がなかったのも影響したかもしれない。
そしてアイヌの存在。
”(アイヌは)素朴な未開人であるが、正直で、人には優しく、とても丁寧で、自然な優美さがあり、とバードは讃えている。とりわけ低く歌うように語る声の響きに魅了された。それまで出会ったどの和人よりも、バードはアイヌを愛していることが分かる。”
通訳兼ガイドの伊藤は「アイヌに丁寧な態度をとは!人間じゃなく犬にすぎないのに」と言ってもとりあわず、熱心にアイヌ語も勉強してその文化を称賛する。
それは、当時アイヌはへき地に遺されたコーカソイド(白人)と思われていたから。
人種的バイアスがあったのかもしれない。
何しろバードに日本行きを勧めたのは、進化論で有名なダーウィンなのだから。
強者が弱者を駆逐する過程を、バードは見たかったのかもしれない。
単純に紀行文として『日本奥地紀行』を読んだけれど、それだけではない様々な思惑というものがあることをこの本を通じて垣間見ることができた。続きを読む投稿日:2019.04.29
このレビューはネタバレを含みます
神を押し付け、信じないものは排斥すると言う一神教の教えは強引であり、果ては戦いを生むばかりだ
レビューの続きを読む
その時、車窓に突然同様のアルカディアのような風景が現れた。赤湯をすぎて中川に着く手前、車窓右手である
バー…ドはキリストの教えが未開地に文明をもたらすと信じていたが、ハーンは逆にキリスト教を忌み嫌い、日本古来の神仏集合、多神教に思いを投じた
幌別、紋別など別のついた地名が多いが、これはアイヌ語で川を意味する、とも書いており、北海道に入ってさほど日数が経っていないバードが、もはやしっかりとアイヌ語を取得していることに驚かされる
バードの紀行の中には、明治の日本人の姿が散見する。そこには貧しいけれど、潔癖であり、偽りのない人々の姿が活写されている続きを読む投稿日:2019.11.22
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