異神千夜
恒川光太郎(著者)
/角川文庫
作品情報
鎌倉の山中に庵を結ぶ僧に、謎めいた旅の男が語り聞かせる驚くべき来歴―数奇な運命により、日本人でありながら蒙古軍の間諜として博多に潜入した仁風。本隊の撤退により仲間とともに取り残されるが、やがて追われる身となった一行を、邪神「窮奇」に仕える巫女・鈴華が思いのままに操りはじめる。元寇に際して渡来した一匹の獣は姿形を変え、時に悠然とたたずみ、時に妖しく跳梁する。傑作ダークファンタジー。※本書は二〇一四年十一月、双葉文庫より刊行された『金色の獣、彼方に向かう』を改題したものです。
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商品情報
- シリーズ
- 異神千夜
- 著者
- 恒川光太郎
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2018.05.25
- Reader Store発売日
- 2018.05.25
- ファイルサイズ
- 1.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (13件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
ずっと目をつけてた作品、今月のKindle Unlimited作品になってて念願の読了!
レビューの続きを読む
恒川作品は解説までがセット。今回の解説もそうそうそれそれ!という私の言葉にできない感想を分かりやすく書かれていて満足感があるのと、そういう意味だったのか、と改めてストーリーを理解できるようになっている。
恒川光太郎が宮沢賢治に似ている、というのはフッと笑えた。外見のことだとは思うけど、宮沢賢治を思い出す雰囲気が含まれている小説中身も合わせてのことだと思う。土着的な民俗学ホラーと異世界ファンタジーが融合されている、という一文が恒川作品に共通するもので、私がたまらなく惹かれる要素の1つです。
・異神千夜
大作。歴史好きな人は絶対ハマると思う。
元寇に纏わるある数奇な運命を辿った男の人生奇譚。タイトルにあるように異国の神が関わっている。そしてこちらの作品も恒川さんらしい、風がキーワードになっていた。作品とは全く関係ないけど、出だしの遼慶の草庵で徒然草を思い出した。
仁風のこれまでの生き様が人生何回繰り返してるっていうくらい色々ありすぎた。対馬で生まれて南宋人の養子となり、元の奴隷となった後に元の間諜として蒙古襲来に加担する流れ。歴史的に台風によって日本は侵略から逃れる事ができたけど、食糧が倉庫からなくなっていた、というのは授業で学んだ気がする。船に対馬の女性が吊るされていたっていうのもなんとなく思い出した、、
最近読んだ中島敦「李陵」や司馬遼太郎の「ペルシャの幻術士」でモンゴル兵士の話を知ってはいたけど、共通するのはとにかく実力主義。学も出自も関係なく能力を持っていることが全て。だからこそ李陵も仁風もあっさりと仲間に迎えられる事ができたんだなー。
私が1番悲しかったのは陳さんが処刑されたとこ。
仁風の人生がありすぎて感想がそればっかりになっちゃったけど、間諜仲間の鈴華が異神かつこのストーリーのメイン。感想として女って生き抜く力がすごい。終わりには鈴華と仁風の娘が異神を引き継いだんじゃないか、という結末になっている。
読み返したら初めに草案の説明でしっかり木地師の娘が訪ねてきた、と書かれていて全てが繋がるようになっていた。
スタープレーヤー、夜市、風の古道など不思議な異界の話ばかり読んできたけど、歴史小説まで面白いなんて、、、ただただ歓喜です。
・風天孔参り
またしても風がテーマです。
風天孔と呼ばれる竜巻のような現象の中に入ると存在が消滅する。天に行ったとも言われ、その風の集まりは魅力的でもあり、風天孔参りに参加する人は次々と入っていくという異界の塊みたいなお話。情景も心情もスッと入ってきてその世界観にどんどん飲み込まれていく作品です。一気読み不可避。
他の方の感想に、情景描写と人生を感じさせるテクニックが素晴らしいと書いてありましたが、私も激しく同意です。見たこともない情景や、実際に存在しない生き物、時代も国も知らない場所、人にまつわる話を読んで楽しむ事ができるのが小説の一つの魅力でもありますが、恒川さんの作品は現実とはかけ離れた話が多い中、どれも間違いなく作品の中に入り込む事ができます。そして非現実世界が現実にあるかのように感じます。それは情景描写、世界観が完成されたものであり、読み手の気持ちに違和感を感じさせる事がないからだと思います。今回だと、案内人安藤が「背負ってしまうと下ろせない。そういう荷物がこの世にはあるんです。」という言葉を残して風天孔に入りましたが、人生を感じさせる一言です。
私的にはふっと笑えたのは月野優が風天孔参りの一向を「あの人たちは妖怪」と突然妖怪呼ばわりしたのと、安藤さんが岩さんに10万請求するところ。現実感。
・森の神、夢に還る
実態のない私が人に乗り移って色々な人生を垣間見る。私の正体はこの森で殺された少女サクラだった。だんだん幽霊なんだとわかるけど、幽霊というより森の精霊のような描写がされている。稲光山、イタチが前作から引き継いがれたキーワード。というより、どちらも一作目からつながっているのかも。異神千夜の少女がたどり着いた草庵のある山はおそらく今の稲光山のことだろう。イタチも2作目ではイタチが彫られた杖に登場することから大事な神の使いの様な存在。繋がっていない様で繋がっている。
・金色の獣、彼方に向かう
もうイタチメインのストーリー。
最初からイタチのストーリーだったんだ、と腑に落ちる。鼬行者は千里眼を持つというのも昔から。
稲光山一帯が不思議な怪異が生じる現場となっている。墓掘人の存在も。
穴を掘った先に何がいたのか、墓掘人はなぜ生き延びているのか、不思議が重なる。
投稿日:2022.07.02
4編からなる短編集だが、
それぞれの話に出てくる土地や役職の名称などが別の作品に出てくる上、鼬のような存在がそれぞれの話でキーになる。
それぞれは独立した話で、明確な繋がりもないが、
そこに輪廻のよう…な繋がりのようなものを感じた。
4編の短編を読んだにも関わらず、1作の長編を読んだような錯覚を覚える。続きを読む投稿日:2023.03.25
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