卒業の歌
本田有明(著)
/PHP研究所
作品情報
入院中のおばあちゃんに歌をつくった翔太と麻里絵。その話を聞いた友だちの滝田が、校内合唱コンクールの自由曲もクラスの創作曲で挑戦したいと言い出した。何をやってもビリで、やる気もまとまりもない6年3組。だれもが無理だと思っていた。ところが、いつもはやる気のないボスが滝田の提案にのって、創作曲をつくることが決まった。歌の作詞は翔太、作曲は麻里絵。しかも歌詞は、クラス全員が一言ずつだしあってつくることになり・・・・・・翔太は思わぬ展開に頭を悩ませる。歌ができると、今まではサボってばかりの受験組も歌の練習に参加するようになり、次第に盛り上がっていく。そして、今までまとまりがなかったクラスが初めて一つになった。ところが、麻里絵はみんなに隠していたあることを話し・・・・・・。家族、クラス、そして友達。それぞれのつながりのなかで成長していく翔太。卒業を迎えるクラスの姿、子供たちのさまざまな思いを描いたさわやかな作品。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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冒頭───
帰りのそうじ当番をしていたとき、校内放送がかかった。
「六年三組の韮崎翔太くん。至急、職員室に来てください」
スピーカーで名前をよばれるのは、初めてのことだ。
モップを黒板の横に立て…かけ、教室を出ようとして、ボスたちにぶつかった。
「翔太、なにをやらかしたんだ?」
ボスが大きなからだで前をふさいだ。
「さっき、警察のひとが職員室にいたぞ」
「おまえ、逮捕されるんじゃない?」
付き人のデカ丸とチビ丸が言った。いつものことだ。
──────
中学の卒業式のことは鮮明に覚えているけれど、小学校の卒業式はほとんど記憶にない。
僕らの時代、特に地方に住んでいた僕らには、小学校卒業といってもみんなが同じ中学に進学するので離れ離れになるという意識がなく、それほど悲しいイベントではなかったからだろう。
逆に、中学校ってどんな雰囲気なんだろう? 部活動は何をやろうか? というワクワク感のほうが大きかったように思う。
中学校はあくまで小学校の延長線上で、少し大人になっていく程度の気分だったのだ。
中学受験をするやつなんていなかったし、いじめもなかったし、本当にのんびりほのぼのした時代だった。
でも今は違う。
小学校高学年からいじめは存在し、不良と呼ばれるようなかなり危ない子供も結構いるようだ。
荒んだ公立中学を避けるために、或いはいい大学を目指すために、中学受験も当たり前になっている。
だから、中学進学を機にクラスメイトがばらばらになってしまうので、小学校の卒業式でも悲しさが募るのかもしれない。
この作品は、字も大きいし、表現も平易なので、児童文学の範疇に属すると思うけど、大の大人である私が不覚にも落涙してしまった。
純粋な子供たちの友情や、別れへの哀しみが描かれている姿に、感動してしまったのだ。
学年の中で一番駄目な組と思われている六年三組。
私立中学を受験する子が多く、みんなが好き勝手に行動し、順位付けのある学級対抗では最下位が指定席のクラスだ。
その三組が、あることをきっかけに合唱コンクールで一つになっていく。
コンクールの自由曲を主人公の韮崎翔太と帰国子女の細川が力を合わせて作ることになるのだ。
自分たちだけのオリジナルの歌を作る。
それは卒業の歌でもあり、出会いの歌でもあるという意味を込めて───。
こういう学校ものには弱い。
すぐにジーンと来てしまう。
六年三組の子供たちの未来に幸あれと願いたくなる。
児童文学ではあるけれど、大人が読んでもかなり感動できる良作だと思う。続きを読む投稿日:2014.12.10
団結力もやる気もイマイチな6年3組。卒業を控えた秋の校内合唱コンクールで、自由曲を創作するという無謀な挑戦に踏み切ることに。
作詞を任されたのは、ちょっと気弱な主人公 翔太。作曲はアメリカから転校して…きたちょっと訳ありな帰国子女、細田さん。
自分たちの曲を創って練習していくうちに、バラバラだったクラスの気持ちが纏まってきて…。
優しすぎてコミュニケーション下手な少年、滝田くんの成長が良かったな。
やや安直に思える場面もあったけど、王道なストーリーの中に、成長が詰まっていて爽やかな読みごごちでした。続きを読む投稿日:2019.02.14
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