犯罪は老人のたしなみ
カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ(著)
,木村由利子(訳)
/東京創元社
作品情報
オーナーが替わって以来、ダイヤモンドホームはすっかり変わってしまった。コーヒーは自動販売機、食事は冷凍食品ばかりで、外出も厳しく制限される。刑務所の囚人のほうが、まだしも人間らしい暮らしをしている。こんな老後を過ごすはずではなかった。ならば自分たちの手で、変えてみせるとばかり、79歳のメッタは4人のコーラス仲間とともに、老人だけの犯罪組織を結成。誰も傷つけず大金を手に入れようというのだ。老人という立場を隠れ蓑に、犯罪者にあるまじきスローペースとアナログな手段を駆使する老人たち。果たして、その結末は?
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商品情報
- シリーズ
- 犯罪は老人のたしなみ
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2016.09.09
- Reader Store発売日
- 2016.09.10
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 446ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.4 (6件のレビュー)
-
老人ホームに入居しているおばあちゃんがコーラス仲間に声をかけ、5人組の犯罪組織を結成します。
舞台は福祉大国として名高いスウェーデンですが、老人たちはホームへの不満で我慢なりません。
刑務所に入った方…がましと、大金を得るための犯罪を計画します。
豊かな人生経験による知恵、大胆な行動力と積極性を持ち合わせる老人たちですが、犯罪者としてはまったくの素人です。
信じられないほどの杜撰さで計画を実行に移します。
ですが、まさか老人が大それた犯罪をおかすはずがないという先入観を誰もが持つことによって、真相になかなかたどりつけません。
スウェーデンは福祉大国だと聞いていますが、お金への欲求はどこの国でも同じなのだなと思いました。
少しでも多くお金が欲しいと考えるのは老人たちだけでなく、ホームの経営者もホテルの従業員も他の人たちもみんな同じで、事件は複雑にでたらめに転がっていきます。
主人公のおばあちゃんに誘われただけで最初は戸惑っていたメンバーたちも、終盤では犯罪者として立派に成長してしまっているのが可笑しかったです。
老人たちのパワーとユーモアに圧倒される一冊でした。続きを読む投稿日:2024.03.27
スウェーデンの作家「カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ」の長篇ミステリ作品『犯罪は老人のたしなみ(原題:Kaffe med Ran)』を読みました。
「ヨナス・ヨナソン」の『窓から逃げた100歳老…人』に続き、老人が主人公の北欧ミステリです。
-----story-------------
自分の老後は自分で守る!
不可能犯罪ミステリの名品。
新しいオーナーになって、ホームはすっかり変わってしまった。
食事は冷凍食品、外出も厳しく制限される。
こんな老後のはずではなかった。
ならば自分たちの手で変えてみせるとばかり、79歳の「メッタ」は一緒にホームに入った友人4人と、合計年齢392歳の素人犯罪チームを結成する。
美術館の名画を誘拐して身代金を要求しようというのだ。
老人ならではの知恵と手段を駆使して、誰も傷つけず大金を手にすることはできるのか?
訳者あとがき=「木村由利子」
-----------------------
ストックホルムの老人ホーム「ダイヤモンドホーム」では、オーナーが儲け主義の「イングマル・マットソン」に変わってから、コーヒーは自動販売機、食事は冷凍食品ばかりで、外出も厳しく制限されるといった状態で入居者たちの不満はつのるばかり… そこで、ダンディーだがいつでも夜中に腹を空かす園芸愛好家の「プランター(バッティル・エングストロム)」、グループのまとめ役でITに強い発明家の「天才(オスカー・クルップ)」、ベルギーチョコに目がない元帽子職人の「スティーナ・オーケルブロム」、どんなおばさんも真っ青のおばさん中のおばさん「アンナ=グレータ」、そして行動派の元体育教師「メッサ・アンデション」のコーラス仲間の五人は、劣悪な環境となった「ダイヤモンドホーム」で生活するよりは、刑務所で囚人として生活する方が、人間らしい暮らしができると考えて犯罪チームを結成、、、
犯罪チームの名前は「ネンキナー団」… 財団かなんかの名前みたいだけど、れっきとした犯罪集団で、まずは経営陣のオフィスにしのびこんで盗み食いをしたところ、案外うまくいったので、犯罪計画はどんどん本格的になっていく。
老人力、恐るべし… 計画はあまりにもずさんだし、犯罪に対してあまりにも無自覚で、これは絶対に無理でしょうと思っても、「まさかこんなお年寄りがねえ」という人びとの思い込みが味方をして、けっこうあっさり法の目をすりぬけてしまう老人たち、、、
「ダイヤモンドホーム」を抜け出し、グランドホテルのプリンセス・リリアン・スウィートに滞在し、贅沢三昧をしながら、国立美術館の2枚で3千万クローネ相当の名画(「ルノアール」の『会話』及び「モネ」の『シュルト河口からのモチーフ』)を奪い、その身代金として1千万クローネを要求… 完全犯罪かと思われたが、水彩絵具で描き加え、カモフラージュして宿泊していたプリンセス・リリアン・スウィートに飾っていた名画が消え去り、2台のショッピングカートに分けて手に入れた身代金の1千万クローネは1台分(500万クローネ)が消え去ってしまう。
思惑通りにはならなかったものの、現金500万クローネを手に入れた「ネンキナー団」は、グランドホテルの雨樋に現金を隠して警察に自首… 望んだとおり、刑務所に入ることになるが、刑務所で模範的態度を示したことから2ヶ月ほどで出所して「ダイヤモンドホーム」へ戻ることに、、、
そして、数奇な運命を経て「ダイヤモンドホーム」の入所者「ドロレス」の手元にわたっていたショッピングカートから、消え去った身代金500万クローネを発見して取り戻す… しかし、その後も事件は終息せず、消え去った名画は、服役中に知り合った女性犯罪者「リサ」に狙われ、同じく服役中に知り合ったユーゴ人の犯罪者「ユーロ」の現金輸送車襲撃事件に巻き込まれそうになったり、「スティーナ」の息子「アンデシュ」を「ネンキナー団」の仲間にして現金輸送車からの現金強奪を図ったりと、「ネンキナー団」の活躍は、クライマックスに向かって、さらに加速します。
老人という立場を隠れ蓑に、犯罪者にあるまじきスローペースとアナログな手段を駆使する「ネンキナー団」の面々の行動は、笑わそうとしているわけではないのに笑えるところがイイですね… 警察の無能ぶりも物語を盛り上げるのに一役買っていましたね、、、
『窓から逃げた100歳老人』と同様にミステリ要素を織り込みつつ、極上のコメディ&エンターテイメントに仕上がっている作品でした。
「ネンキナー団」の面々同様に、西インド諸島で、余生を幸せに過ごしたいなぁ… と思って読了したのですが、、、
訳者あとがきを読むと、本シリーズには続篇があり、「ネンキナー団」の面々はスウェーデンに戻って、再び、老人力を駆使して大活躍をするようです… いつまでたっても冒険心は衰えないようですね。
以下、主な登場人物です。
「メッサ・アンデション」
ダイヤモンドホームの入居者。コーラス仲間
「スティーナ・オーケルブロム」
ダイヤモンドホームの入居者。コーラス仲間
「アンナ=グレータ」
ダイヤモンドホームの入居者。コーラス仲間
「オスカー・クルップ(天才)」
ダイヤモンドホームの入居者。コーラス仲間
「バッティル・エングストロム(プランター)」
ダイヤモンドホームの入居者。コーラス仲間
「ドロレス」
ダイヤモンドホームの入居者
「イングマル・マットソン」
ダイヤモンドホーム株式会社社長
「バルブロ」
ダイヤモンドホームの看護師
「カーチャ・エリクソン」
バルブロの助手。准看護師
「エンマ」
スティーナの娘
「アンデシュ」
スティーナの息子
「ニッセ・エングストロム」
"プランター"の息子
「ヤンソン」
シリヤ・セレナーデ号の甲板長
「アランソン」
ドロレスの息子。ヤンソンの相棒
「グンナル」
シリヤ・セレナーデ号の乗客
「ペトラ・ストランド」
グランドホテルの清掃係
「ユーロ」
服役中のユーゴ人の犯罪者
「リサ」
服役中の女性犯罪者
「アルネ・リョンベリ」
ノールマルム署の警部
「ペッタション」
クロノベリ署の警部
「ロルフ・ストロムベック」
クロノベリ署の警部。ペッタションの相棒続きを読む投稿日:2023.01.13
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