虫めづる姫君~堤中納言物語~
作者未詳(著)
,蜂飼耳(訳)
/光文社古典新訳文庫
作品情報
風流な貴公子の失敗談、「花を手折る人(花桜折る中将)」。年ごろなのに夢中になるのは虫ばかりの姫、「あたしは虫が好き(虫めづる姫君)」。一人の男をめぐる二人の女の明暗をあぶり出す「黒い眉墨(はいずみ)」・・・・・・。無類の面白さと意外性に富む11編が、躍動するみずみずしい訳文で蘇ります。平安朝後期の物語文学に潜む普遍性――恋、ユーモア、悩み、人々の感情の行方――を、訳者による書き下ろしエッセイとともに!
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商品情報
- シリーズ
- 虫めづる姫君~堤中納言物語~
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社古典新訳文庫
- 書籍発売日
- 2015.09.20
- Reader Store発売日
- 2015.12.25
- ファイルサイズ
- 3.8MB
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この作品のレビュー
平均 3.4 (7件のレビュー)
-
前に「わたしの推しの光文社古典新訳文庫」を紹介した時に読みたい本として挙げていた本。図書館になかったので、リクエストしました(買わせました)。良書です。現代語訳のみではなくて、豊富な図版、注釈もあり、…堅苦しくない解説文もついています。2015年発行なので、最新学説が載っていると思われます。
平安文学を読み慣れている方には常識なのかもしれませんが、「堤中納言」て人の名前と思っていました。何故このタイトルなのかわかっていないそうです。一説には「ひとつつみにまとめられた物語」だからということです。作者は不詳です。短編集だということは知っていましたが、ほとんど繋がりのないアンソロジーとは知りませんでした。
それぞれ趣向を凝らして面白いのですが、流石「虫めづる姫君」は、発見がたくさんありました。ストーリーは単純で、虫大好き少女が、宮廷常識からは呆(あき)れられるお話です。
・この姫君、わりと当時の一般教養もしっかりお持ちです。「世間では蝶とかの儚いものをもてはやすけど、その考えは浅いね。人間っていうものは、誠実な心を持って物事の本質を追求してこそ、優れているといえるんだから」と、ちゃんと「一般常識」の本質も押さえながらも、批判精神を持ち世間の嘲笑をモノともしないのです。彼女が、何処からこの思想信条を得たのか、とても気になります。読書から?中国の古典典籍に同様なことが書かれているかどうかは、ちょっと研究対象ですね。単純に自然の弛まない観察からこれを見出したとすれば、アリストテレスに勝るとも劣らない哲学思考の持ち主と言えるかもしれません。
・所謂、眉を剃らない、お歯黒をしない等々で、みっともないと言われている彼女ですが、現代の美的感覚からは、ほとんど美少女の部類に入る可能性が大変高い。何度かドラマ化されている気もしますが、誰が演じていたのだろう。
・男の子を集めて、毛虫を集めさせるリーダーシップも発揮しています。男の子には虫に因んだあだ名をつけています。「けらお(オケラ)、ひきまろ(ヒキガエル)、いなかたち(稲蜻蛉もしくは蛇)、いなごまろ(イナゴ)、あまびこ(ヤスデ)」この昔の虫の呼び名自体がとても興味深い。また、虫に因んだ俗謡を男の子と一緒に歌っているよう。やはり人々の日常生活は歌と共にあったのである。
・物語の構造は、まるで少女漫画みたいに、いけてない女子に興味を示す貴公子・右馬佐さんが登場します。最初はイタズラを仕掛けるのだけど、実際に彼女のことを知ると好感を示すのです。ただ贈った歌に彼女は返事を書かなかった。侍女がどっちつかずの返事を書く。その歌を見て貴公子は笑った。「貴女にかなう人はいませんよ」そう笑い、帰っていったと人づてに聞くのです。この物語の恐ろしいのは、その後の終わり方なのです。「さてさて、この続きはニの巻にあるはずです。気になる読者の方は読んでください」えー?!バッドエンドなの?ハッピーエンドなの?「あるいは、ここまで読んできたみなさんが、続きの物語を考えてくださいますように」と締めるのです。かなりくだけた翻訳なので、どこまで意訳が入っているのかわからないのですが、現代漫画ならば必ず続きがあるはずですが、当時は続きを匂わせるこういう終わり方そのものがあったようです。この物語が、「風の谷のナウシカ」に繋がるということだけで有名だったのですが、「永遠に終わらない物語」という趣向も凝らしているのだと知って、ビックリしている私です。
繋がりのないアンソロジーなのですが、基本的には男女の話になっていて、万葉集にしろ、日本の古典の大きなところは、男女の話です。これは英雄譚が大きな比率を占める西洋文学とは一線を画しています。男女物語(恋のお話)は、日本文学の伝統なのです。だから私は思います。かつての少女漫画がそうであったように、日本の漫画そのものが男女話でいっぱいになった可能性もあったのかもしれません。そうならなかったのは、ひとえにその最初に「天才」手塚治虫が居たからなのかもしれない、とふと気がつきました。
閑話休題。
日向坂46の宮田愛萌さんが推している短編は実は「花のごとき女たち(はなだの女御)」という作品だそうです。プレイボーイの男が知り合いの女がいるらしいと聞いて、屋敷に忍び込めば20人ほどの女御が、仕えている女性たちの噂話(花へのたとえ)をしています。実は男はその多くの女たちを知っていた‥‥、というストーリーです。が、それだけでは終わらないミステリ部分があると宮田さんは評価します。終盤にどんでん返しが2つ以上あるのが、昨今の若者の好みなのでしょうか。
訳者・蜂飼耳(はちかいみみ)さんは、詩人・作家らしいです。かなり丁寧な読解文が付いていました。入門書に適しています。
続きを読む投稿日:2023.08.06
原文が記載されえいると思いきや、全くなし。ネットで購入したのでやんぬるかな(⌒-⌒;)海外の文学ならいざ知らず、自国の書物を現代文の訳だけで対応しているとは、まことに情けない。
投稿日:2022.02.08
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