菜の花の沖(五)
司馬遼太郎(著)
/文春文庫
作品情報
ロシアは、その東部の寒冷地帯の運営を円滑にするために、日本に食糧の供給を求めた。が、幕府が交易を拒絶したことから、報復の連鎖反応が始まった。ロシア船が北方の日本の漁場を襲撃すれば、幕府も千島で測量中のロシア海軍少佐を捕縛する。商人にすぎない嘉兵衛の未来にも、両国の軋轢が次第に重くのしかかってくる・・・。
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商品情報
- シリーズ
- 菜の花の沖
- 著者
- 司馬遼太郎
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2000.09.10
- Reader Store発売日
- 2015.07.03
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 432ページ
- シリーズ情報
- 既刊6巻
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この作品のレビュー
平均 3.9 (28件のレビュー)
-
▼こ、これはすごい・・・。江戸後期の船乗り/商人である、高田屋嘉兵衛さんの生涯とその時代を描く司馬ワールドなんですが、この五巻はすごかった・・・。
▼高田屋嘉兵衛さんは、その生涯の後半というか終盤の…あるポイントで、「ロシア軍艦に身柄を拉致される。そして軟禁生活を送るが、最終的にロシア人と信頼関係を築き、身柄の解放を勝ち取る。そして日本に軟禁されているロシア軍人の解放に尽力して実現する」という、言ってみれば日本史の舞台に躍り出る訳です。それはまあ、ある程度こちらも織り込み済みで読んでいます。その事件がなかったら、高田屋嘉兵衛さんはさほど歴史にゴシック大文字で残るような存在では、恐らく無かった。この本が書かれることも、無かったわけですから。
▼そして四巻までかかって、大雑把理に言うと、その、「大事件」の前夜までが描かれるんです。「いよいよ、事件が始まるかな!」と思って第五巻を開く訳です。読み始めると、まずは、「えっとね、一旦、嘉兵衛から離れて、事件が起こるまでのロシアと北海道の成り行きというか、事情っていうか、そういうものを紐解いて話すね」というような感じ。つまり、事件を味わうための予備知識直前再注入!という。
(四巻まででも、ちょいちょい、かなりな量のそういう閑話休題があったんですけれど)
▼そうしたら・・・その、「ロシア&北海道の歴史事情解説」が、長いんです。そして・・・なんと、五巻はほぼほぼそれだけで終わってしまうんです・・・。な、なんて大胆なというか・・・なんて自由なと言うか・・・。
駆け出しの小説家だったら、編集者が秒で却下して絶対に許さない所業です。
▼で、それが面白いのかと言うと、「全然おもしろくないよ!いい加減にしろ!ドラマチックな小説を読ませろ!」という読者もいっぱい、いっぱい、居ると思うんです。個人的にも恐らく10年20年前なら、そうだったと思います(今、50代なんですが)。
▼なんだけど、今の自分としては、この五巻も大変に面白かった(笑)。分かりやすいし、「へ~なるほど」がキラキラと散りばめられています。俯瞰の語りの中に、躍動するロシアの軍人や、北海道の日本人や、当時の幕閣までが体温を感じられます。
▼要は帝政勃興と隆盛発展とともに東へ東へシベリアへと、貂の毛皮を求めて進んできたロシアの冒険的人物たち(ほぼほぼアウトローな人々)が、皇帝のお墨付きを得て、ロシアそのものとして「遅れた帝国主義の暴虐強引さ」をもって、満州へ、あるいは樺太へ、そして北海道へと迫ってくる歴史的な成り行き。
(その暴虐強引さ、って言うのは大正昭和と、日露戦勝後の日本もなぞっていくものなんですが・・・)
▼それがヒタヒタと、江戸幕府体制に迫ってくる。幕府は鎖国してます。摩擦を起こしていく。そういう「個々の人格の問題もあるけれど、それに惑わされちゃいけない全体状況」みたいなものが、ものすごく指紋露わに見えてくる感じです。
▼日本史で言うとこの温度が、ペリー来航で沸点に達して、明治維新が起きる。明治維新っていうのは、江戸時代の商品経済の爛熟(高田屋嘉兵衛的な)と、西欧帝国主義(嘉兵衛が拉致されるロシア艦隊的な)の接近。このふたつが出会って、、、、「俺たちは十分文化も経済も満ち満ちてるんだから、清国みたいに植民地化されたくないよ!武力が強いからってあんまりにも横暴だろ!」という戦いとして始まるんですね。無意識下でしょうが。
(同様の構造上の、加害者に、昭和日本はなるんですが)
▼帝国主義の時代には、言ってみれば先進国はみんなプーチンさんやトランプさんみたいだった、とも言えます。ついこの間まで奴隷貿易してた方々ですから。「力こそ正義なり」。対抗するには富国強兵しかありません。その手段としての維新。欧米化。旧制度の反発と鎮圧(西南戦争)。手段としての憲法、議会。そして日露戦の勝利=近代史上初の有色人種の白人種への勝利。それで、言ってみれば幕末維新は、読点が打たれるんだなあ、と思いました。
(だからその後は、加害者への守勢から、「自分が加害者になる」という方針転換になる。その時点で、新たな価値軸を見いだせなかった。仕方ないことかも知れませんが)続きを読む投稿日:2024.03.24
わたしが読んだのは公立図書館の単行本。ずいぶん汚れていた。本好きな人は,公的な本も丁寧に扱ってほしいものだ。まあ,昭和57年発行だから,無理もないけど。
この巻(全348ページ)のほとんど(p.4…5~p.325まで)が,当時のロシア事情の説明にあてられている。それくらい,当時の日本は,蝦夷地(樺太も含む)を巡って,ロシアとの関係が深かったようだ。もっとも,関係を深くしたかったのはロシアの方だけで,日本の幕府は鎖国中なのであったのだが。それでも,開国や貿易の巡ってのイザコザは,なかなか大きな出来事だったらしい。この辺りのことについての知識は全くなかったので,ほほ~という感じで読んだ。がしかし,嘉兵衛の話がなかなかでてこなくて,ときどき眠りに襲われて中断しいしいの読書だったのだが。
この分だと,第6巻では,どんな流れが待っているのか。ほとんど,幕末歴史書と化しているのかも知れない。襟を正して,手に取るとするか(^^;;
「あとがき」には,福井三国港のお話があって,これは興味深く読んだ。一度,見学してみたい。まだあるかな,資料館。続きを読む投稿日:2021.05.09
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