ドン・カズムッホ
マシャード・ジ・アシス(著)
,武田千香(訳)
/光文社古典新訳文庫
作品情報
「いつもいっしょ・・・・・・」「こっそりと・・・・・・」「もし二人が恋仲にでもなったら・・・・・・」。彼女は視線をゆっくり上げ、私たちは互いにみつめあった・・・・・・。みずみずしい描写で語られる愛と友情。美少女と美少年の美しくせつない「恋」と「疑惑」の物語。小説史上まれにみる魅力的なヒロインが、こんなところに隠れていた。一見「普通の」温かな回想記のような印象を与えるが、画期的な文学技法上で書かれたブラジル文学の傑作。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- ドン・カズムッホ
- 著者
- マシャード・ジ・アシス, 武田千香
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社古典新訳文庫
- 書籍発売日
- 2014.02.01
- Reader Store発売日
- 2014.09.26
- ファイルサイズ
- 0.7MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.3 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
2023/6/28〜7/5
レビューの続きを読む
計:6日間
6/28水 p.73(17章)まで
やっぱアシスの文章くそ好きだわ〜〜
一人称でガッツリ読者に語り掛けてくる姿勢はリスペクトル『星の時』なんかにも受け継がれているのかな。
細かい言い回しがほんと良い。
7章「ドナ・グロリア」 お母さんについて
>まだ子どもだったし、わたしは生まれないまま人生を始めてしまったのだ。 p.34
9章「オペラ」やばすぎ。最高
人生を、地球を、人類をオペラとして喩えるどころか神話的に説明するイタリア人元オペラ歌手のおっさんの挿話。こういう、一気にスケールがデカくなるプチ挿話は『ブラス・クーバスの死後の回想』にもあった。
6/29木
p.157 38章まで
ベッタベタなヘテロ幼馴染モノ… カピトゥ最高!!!
6/30金
p.243 61章まで
神学校へ入学した
ジョゼ・ジアス、俗物だけど良いキャラだな〜 主人公に対して敵でも味方でもある絶妙なポジション
7/3月
p.324 89章まで
62章「イヤーゴウの微かな兆し」
>そして・・・・・・・何だというのだ? それ以外に何を交換するのかはおわかりだろう。自分で答えがみつけられなければ、もうこの章の残りも、本の残りも読む必要はない。わたしがいくら語源の各文字に至るまで述べたてても、それ以上はみつけないだろうから。だがみつけたとすれば、わたしが身震いしたあと、すぐに門を飛び出していきたいという衝動に駆られたことがおわかりだろう。 p.246
64章「あるアイデアとためらい」
>この章を終える前に、 わたしは窓辺に行き、夢はなぜ瞬くあいだ、あるいは寝返りを打つあいだにも消えてしまうほどはかなく、 続こうとしないのかと夜に訊ねた。 夜はすぐには答えてくれなかった。夜は心地よく美しく、丘は青白く月光を浴び、空間は死んだように静まり返っていた。 わたしがしつこく訊ねると、夢はもう自分の管轄ではないと答えた。 夢がまだルキアノスがくれた島に住んでいたころならば、 夜はそこに豪邸を構え、そこからさまざまな様相を夢にとらせて送り出していたから、説明することもできただろう。だが、時代がすべてを変えてしまった。 昔の夢は引退し、近代の夢が人間の脳に住んでいる。こちらの夢は昔の夢を真似ようとするが、それは無理というものだろう。 夢の島は、愛の島や、すべての海のすべての島と同じように、いまはヨーロッパと合衆国の野望と競争心の対象となっている。 p.252
67章「罪」
>涙を拭いたが、 ジョゼ・ジアスの言葉のすべてのなかでたった一語だけがわたしの心に残った。[* きわめて悪い]という言葉だった。あとで、彼が言いたかったのはたんに[* 悪い]であったことがわかったが、最上級を使うと、口を開いている時間が長くなるたジョゼ・ジアスはその時間への愛情ゆえに、わたしの悲しみを増やしたことになる。もしこの本に同じような例をみつけたら、読者よ、第二版では修正するから教えてほしい。きわめて簡潔な考えにきわめて長い足をつけること以上に、みっともないことはない。繰り返しになるが、わたしは涙を拭い、歩きながら、いまはとにかく早く家に帰り、胸に抱いた悪しき考えを母に謝りたくてしかたなかった。 p.264
71章のエスコバールの顔の描写すばらしい。彼との友情と、カピトゥとの恋愛がどう絡むのか。もしや三角関係には……
>エスコバールの目は、すでに述べたように、明るい色できわめて甘美だった。このような定義を与えたのはジョゼ・ジアスで、 エスコバールが帰ったあとのことだったが、もう四十年の時がたっているとはいえそのまま残そう。これに関して、食客の誇張はなかった。きれいに剃られた顔は、白くすべすべだった。額こそ少し狭く、髪の分け目が左眉のすぐ上にまで迫っていたが、他の部位とぶつかったり、その魅力を損なったりしないだけの必要な高さはつねに保っていた。なんとも人を惹きつける顔立ちで、冗談がよく飛びだす薄い唇、華奢で曲がった鼻。ときどき右肩を揺する癖があったが、あるとき神学校で仲間の一人がそれを指摘すると、癖はなくなった。 人間が細かい欠点をみごとに直せるのを見た、最初の例だった。
75章「絶望」
>食客から逃げ、母の寝室へ行かないことで母からも逃げたが、わたし自身からは逃げられなかった。自分の部屋に駆けこんだが、わたしは自分のあとについて入ることになった。 わたしは自分に話しかけ、自分につきまとい、自分をベッドの上に投げ出し、自分とともに転げ回り、泣いて、こみ上げる嗚咽をシーツの裾で押さえた。 p.288
いや〜ほんと、アシスの文章・文体と、読者(語られ手)への距離の取り方がものすごく好みだ。世界中にこれ以上に自分に合う文学は存在しないと思えるほどに。
だから、物語とか、思想とかは二の次。そういうところではなくて、ひたすらにこの語りが心地よい。
7/4火 112章まで
お~ マジで結婚した
エスコバールとカピトゥが不倫してる可能性もあると思います!
反出生主義っぽかった『ブラス・クーバス』と対照的に、ものすごく出生主義だ
7/5水
おい、まさかそっちが不倫するのか…?
122章。これまで女性に対してしか使ってこなかった「被造物」という語を、ここにきて親友と自分自身にまとめて使うのすごい深い。
うわ~…… やっぱそうだったんかい
幼馴染の妻と、神学生時代からの親友が不倫していた……のを、親友の死後に察する男の話。
文学におけるもっとも、あるいはゆいいつ重要な主題は不倫である、というみかんさんの言が迫真性を帯びてくる。
二番目に価値のある主題は自殺である。
日本では、「ブラジルの夏目漱石」とか紹介されることの多いマシャードだけど、単にその国の近代小説の最も偉大なオリジネーターであるというだけでなく、三角関係と自殺を主題にしている点も共通しているんだな。
文章がすごいよう さらっと書いてるけど相当だぞこれ
読み終わった!!!
たしかにこれはものすごく完成度たけぇよ…… 前半は、『ブラス・クーバス』と実質同じで、回想録の語り手が死者ではなく生者であるぶん一応地に足がついている程度の違いしかないかと思っていたが、後半というか終盤で一気に物語が収束し、文体はほとんど変わらないままに、静かにすごいことを成し遂げている。
けっきょく、カピトゥとエスコバールは本当に不倫をしていて、エゼキエルはふたりの子供であったのか、それともすべては語り手ベンチーニョ(ドン・カズムッホ)の文字通り偏執的な嫉妬の誇大妄想なのか、という真相がぎりぎり宙吊りにされているってことでいいんだよね? ベンチーニョは完全にエゼキエルにエスコバールを写し見ているけれど、それがイコールで真実であるとは限らず、むしろ本作の語り手の信頼できなさを急激に上昇させていく効果を持っていると読んだ。はじめから信頼できなさを全面に押し出している『ブラス・クーバス』とはこの点も対照的である。どちらも不倫を扱っているのに、おもしろい。
ほんとうにすごい小説だと思うけれど、いまのわたしにはそのすごさを十全に語ることなど到底できない。物語の完成度や人生・人間に対する洞察の深さなどもさることながら、やっぱり文章がずっとすごいんだよな。とんでもねえ。
・訳者解説 読んだ
1900年に出版され、1960年にアメリカの女性研究者ヘレン・コードウェルに指摘されるまで、カピトゥの不倫が疑われることはほぼ無かったとかいう衝撃の事実。世界中の読者よ、60年間もなにしてたんだ……。(むろん、今日の最新研究に基づいて、武田さんが翻訳したものを自分は読んでいるのだから、その翻訳によって、上記のような「宙吊り」解釈にすぐ辿り着けた、というのは忘れてはならない。)
「記憶」を主題として本作を読み解いている。やっぱとんでもない傑作だよな~~という思いを新たにする。ベンチーニョはカピトゥの不義を告発するためにこの回想録を書いているわけではない。それはそう。
シェイクスピア『オセロー』読むか・・・。
マシャードは文学教養のあるポルトガル出身の妻と仲睦まじかったそうだけど、子供はいたのかが気になる。
やっぱり、マシャードは2作品とも、出生主義/反出生主義 というテーマはめちゃくちゃ重要だと思うんだよなぁ。本作でいえば、最終的に自分の子ではないと思い込むようになったエゼキエルの存在じたいが不確かで複雑な意味合いを帯びていくのだし、子供を欲しがっていた~育児中のベタな出生主義が事後的に攪乱されていることは明らかだ。究極的には「自分」にしか興味のない語り手が、自分自身の複製・分身として「創造」したはずの息子が、じつは他人(親友)の子であるという疑念・不安は、そのまま自分という存在の不安へと跳ね返ってくるだろう。投稿日:2023.07.06
主人公ベンチーニョの語りで話が進む。隣に住む少女カピトゥに恋い焦がれていると同時に、母親には将来神父にと望まれている。母に背くことが出来ずいったんは神学校に入るが・・・。
大人へとなっていく過程や、心…の葛藤がきめ細やかに描かれている。
4分の3ページは恋愛と将来、4分の1ページは死について深く味わい深い作品でした。続きを読む投稿日:2016.07.20
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。