アンチェルの蝶
遠田潤子(著)
/光文社文庫
作品情報
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太(とうた)の元へ、中学の同級生・秋雄(あきお)が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨(いんさん)な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく――。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
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商品情報
- シリーズ
- アンチェルの蝶
- 著者
- 遠田潤子
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社文庫
- 書籍発売日
- 2014.01.01
- Reader Store発売日
- 2014.03.28
- ファイルサイズ
- 0.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (44件のレビュー)
-
う~ん。ウ~ン。
小説は本当に起こりそうなことを書くフィクションだというけれど、この小説に出てくる、“酒”“暴力”“ギャンブル”に溺れ、子供を子供とも思わない最低な親は世の中に沢山いるかもしれない…が、いずみちゃんほどひどい目に合い続ける子は本当にいるのだろうか。そう思う時点で、私は葉山和美弁護士のように世間知らずなのかもしれない。
舞台は大阪の南のほう。暖簾も壁も何年も掃除していない油ギトギトの場末の居酒屋<まつ>。店主は足を引きずり、客は堅気かどうか分からないような最低の客ばっかり。店主であり主人公の藤太は「どうせこんな店」「自分はいつ死んでもいい」と思いながら、生きるために、ずっと店をやり続けている。
そんなある日、店を閉めてからひと目で“負け”を感じてしまうような、小ぎれいな男が小5くらいの女の子を連れて訪ねて来た。「藤太、久し振りやな。」という。よく見るとそれは、かつて親友であったが25年間一度も会わなかった秋雄であった。
25年前に何かがあって一度も会わなくなったということは、彼らは60歳くらいなのかと思った。だけど「中学卒業以来一度も会っていない」という。そして、連れていた女の子は同じく彼らの同級生で25年間会っていない“いずみ”の子供の“ほずみ”だという。今や少年犯罪の件で有名な弁護士となっていた秋雄は何故かほずみの保護者となっており、「今俺は危ないことに巻き込まれているから、ほずみを預かってくれ」と言ってきた。
たった15歳の時に彼らに何があって25年間も会えなくなったのか。そして、それでも仲間の子供を預かるほどの彼らの絆って何だったのか?
そしてもう一つ謎だったのが、このような店でちょっと場違いに思われるような(失礼)、ドヴォルザークの「新世界より」……それもカレル・アンチェル指揮、チェコ・フィルのが彼らの拠り所になっていて、特に「家族全員がナチの収容所のガス室で虐殺された」というアンチェルの人生がキーワードになっていて、ますます訳が分からなくなった。
舞台は彼らが小5の時に飛び、藤太、秋雄、いずみの父親は麻雀仲間で酒とギャンブルに溺れ、子供に暴力をふるう飛んでもない親たちだった。その共通項で寄り添いあった彼ら三人は親友というより恋人というより家族のような絆で結ばれていた。
彼らとドヴォルザーク交響曲「新世界より」の出会いは、小学校の時の音楽のリコーダーのテストだった。一緒に「遠き山に日は落ちて」(「新世界より」第二楽章)を練習していた彼らは
「“遠き山に”って大阪には山なんかあらへんし、分からへんやん。」
「天保山があるやんか。」
「やっぱり本物聞かな分からんのちゃうかと思て、お母さんのレコード持ってきたわ。」
といずみの持ってきたレコードを秋雄の家のステレオで三人で聴いたのが、カレル・アンチェル指揮、チェコ・フィルのドヴォルザーク交響曲 第9番「新世界より」。
聴きながら、いずみは解説に載っているアンチェルの経歴を読んだ。ユダヤ人であったため、家族全員をナチの収容所で殺されたが、戦後チェコ・フィルの音楽監督となり………。
「すごいな。こんなつらい目に合ってもこんな素晴らしい演奏ができるんやね。」
「俺は、決めた。俺は新世界に行く。あんな親父に<まつ>を任せられへん。おれは、もっと料理を勉強して、店をきれいにして、<まつ>を一流の料亭にするんだ。」
「私も、一緒にやる。」といずみ。
アンチェルの「新世界より」は彼らにとって希望の音楽だった。
でも、まさかそれが彼らを一生苦しめる音楽になるとは…。
ちょっと書きすぎました。
貧しさ、苦しさ、悪い大人、純粋な子供、友情、愛、絆、希望、絶望…そんな色んな要素が“アンチェル”と“蝶”に反映されてうまく盛り込まれていたと思います。けれど、“盛り込まれすぎ”感もありました。あと登場する大人たちがどうしてこうも劣悪非道な者たちばかりなのかという点とその子供たちが良い子過ぎることと、小説を盛り上げるために、登場する子供たちを不幸にし過ぎている感に違和感を感じてしまいました。続きを読む投稿日:2022.08.14
彼が触れられたくない過去は何なのか新世界よりにどんな秘密があるのか、気になってグイグイ読んでしまった。飲んだくれでも黙々と働く藤太の姿を客とほづみはちゃんと見てたんだな。
藤太がへたれとかいづみちゃん…が可哀想すぎるとか色々思うことはあるけど。事件があってから卒業までいづみと接触しなかったのはなぜかちょっとモヤる。過去のことはもう変えられないし死んだ人は戻ってこないから、身を寄せ合った2人の未来が良いものであるようただ祈りたい。続きを読む投稿日:2023.12.20
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