兄 かぞくのくに
ヤンヨンヒ(著)
/小学館
作品情報
各賞総ナメの映画「かぞくのくに」の原作本。
人生に「もしも」はない。私たちの家族のひとりが「もしも・・・」と口にした時点で、きっと私たちの間で何かが壊れる。それが「何か」はわからないけれど、私たちの誰もが、この言葉を口にしたことがない。でも私は思ってしまう。もしも兄が帰国していなかったら?(本文より)~1960~80年代に日本から北朝鮮に10万人ちかくが移住した「帰国事業」。旗振り役だった総連幹部の一人娘として生まれたヤンヨンヒ監督。パラダイスを夢見て北朝鮮に渡っていった3人の実兄と日本に残った両親とヤン監督。国家や思想によって引き裂かれてしまった「かぞく」に突きつけられた厳しい現実をリアルに綴った感涙のドキュメンタリーノベル。昨年「映画芸術」2012年日本映画ベストテン第一位、第86回キネマ旬報日本映画ベストテン第一位、第55回ブルーリボン賞作品賞、第64回讀賣文学賞戯曲・シナリオ賞ほか各賞を総ナメした話題の映画「かぞくのくに」の監督が涙ながらに綴った原作本。
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商品情報
- シリーズ
- 兄 かぞくのくに
- 著者
- ヤンヨンヒ
- 出版社
- 小学館
- 書籍発売日
- 2013.06.01
- Reader Store発売日
- 2013.09.06
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 336ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (7件のレビュー)
-
3人の兄が北朝鮮に「帰国」した、映画監督ヤン・ヨンヒ氏の手記。同タイトルの映画「かぞくのくに」を見た後、この本を手にとった。
私は朝鮮半島を専門にしているが、数年前まで「在日」という人々について深く…考えることはなかった。いや、避けていたといっていい。
私がもっとも多くのコリアン(在日だけでなく在米も含め)と知り合ったのは、韓国で韓国語を学んでいるときだった。私のクラスは日本人も、在日も、在米もみな仲が良かったが、日本語で話せるという気安さから在日の友人とよく遊んだ。そんなとき、自分が外国にいるという意識から彼らを「日本人」のカテゴリに含めた話し方をしてしまうと「私は日本人じゃない!」と反発する人がいた。一方で「自分のことは日本人だと思ってるんだけど」という人もいた。
ただでさえ加害者と被害者という関係に単純化されやすい日韓の間で、韓国との付き合い方を暗闇の中で模索していたような私にとって、「在日とはなにか」を考えるのはある意味、重荷になった。だから私は長らくその問題から顔をそむけてきた。
帰国者を題材にした本を読むようになったのは最近である。日本で暮らし、日本的な価値観を持った人たちが、貧しく、思想の自由すらない北朝鮮に「帰国」し、日本に戻ることもできずに生きていくーーそんな地獄が、存在している。それは一人や二人のことではなく、10万人にも及ぶ人々が経験していることなのだ。
著者の父は総連大阪支部の幹部だったという。革命に燃え、帰国運動を積極的に後押しし、結果、年の離れた末っ子の著者以外の全ての息子を北朝鮮に送る。
繊細な長男は北朝鮮で躁鬱病にかかってその後死亡し、次男は妻に逃げられ、2番目の妻も病院の誤診によって死亡する。三男は頬の奥に腫瘍ができ、北朝鮮では治療が困難だという。両親は様々な手を使って三男を治療のために三ヶ月だけ日本に帰国させることに成功するが、その治療すら行えないまま、2週間後に北朝鮮に呼び戻されてしまう。
帰国事業を推し進めていた総連の幹部は、それなりに理想や希望に燃えていたのだろうと思う。北朝鮮の本当の状況がわからない中、いろいろと差別される日本にいるよりは祖国のほうが未来が拓ける、と思ったのかもしれない。
その結果、病気になっても治療すらままならない息子を見る父はどのような気持ちだったのか。北朝鮮で暮らす兄たちの生活を知り、父に「なんで息子を北に送ったのか」と責めたい気持ちを持ちつつも、やはり口にはできない著者の気持ちもあちこちから読み取れる。日本に生まれ、日本で育ったにも関わらず、分断の悲劇に巻き込まれた家族が、この国にいる。私はいまだ、この問題にどういう姿勢で向かい合えばいいのかわからない。
北朝鮮にいる兄たちを題材にして映画を撮ったヤン監督は、北朝鮮の入国を拒否され、北の家族と会うことすらかなわなくなったという。分断はいまも家族を引き裂いているのだ。続きを読む投稿日:2020.01.28
やっぱり現実は、想像を超える。
日本人拉致被害者も大変だとは思うが、在日の人たちは、帰国しても日本にいても大変だということがよくわかる。
映画化もされたみたいなので、機会があったら観てみたい。
この…後引き続き「朝鮮大学校」を読む気になった。続きを読む投稿日:2019.07.14
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