向井帯刀の発心 物書同心居眠り紋蔵(八)
佐藤雅美(著)
/講談社文庫
作品情報
次男の紋次郎にまで養子話が出て跡継ぎに頭を悩ませる紋蔵。貰い子の文吉も侠客・不動岩の伜に世話になると家を飛び出した。が、紋次郎が剣術の稽古でいじめられていると知って仕返ししたらしい。子供の喧嘩にしゃしゃり出てきた親は上役の吟味方与力・黒川静右衛門。逆恨みの無理難題を切り抜けられるか。
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商品情報
- シリーズ
- 敵討ちか主殺しか 物書同心居眠り紋蔵
- 著者
- 佐藤雅美
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2010.01.15
- Reader Store発売日
- 2013.03.08
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 416ページ
- シリーズ情報
- 既刊15巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
目次
・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
・歩行新宿旅籠屋(ほこうしんじゅくたびかごや)
・逃げる文吉
・黒川清右衛門の報復
・韓信の胯(また)くぐり
・どうして九両(くれよう)三分二…朱
・旗本向井帯刀(たてわき)の発心(ほっしん)
何の落ち度もないのに、というか逆に仕事ができすぎて、誰も紋蔵のように古文書の事例を扱えないので、せっかくの定廻り同心から物書き同心へ逆戻り。
収入も10分の1に戻る。
そんな時、紋次郎に養子縁組の話が持ち上がる。
長男を養子に出したので、次男まで養子に出してしまうと紋蔵の家の跡取りがいなくなってしまう。
断ろうとずるずるしているうちに…。
文吉も家を出てしまい、次女の麦も養女へ貰われていくことが決まり、紋蔵の家も寂しくなってきた。
家族の時が過ぎるってこういうことだなあ。
表題作「旗本向井帯刀の発心」は、なんとも切ない。
どこの誰の子どもに生れ落ちるか、それは選べるものではない。
あの日そこに落雷がなければ、馬が暴れなければ、向井帯刀が風邪をひかなければ、紋蔵に絵を見る目がなければ…。
数々の偶然が重なった結果明かされた、向井帯刀の生まれの秘密。
そしてそれを知った彼が旗本であることをやめ、仏門に帰依すると決めたことで起きた事件がまた、何の罪もない子どもにこの先苦労を強いることになるのだろう。
『親の因果が子に報い』とは、今よりももっと重い言葉だったのだろうと思う。
向井帯刀がいい人であればこそ、余計に残念な事件であった。
この件では紋蔵はかなり苦しい立場に立たされるが、最後までしらを切りとおすのである。意外と根性がある。
それに引き換え、家柄の良さを鼻にかけ、親子でねちねちと紋蔵一家に絡んでくる黒川清右衛門はたちが悪い。
とりあえず今回は閑職に落とされて一件落着だけど、いつか復活してくるかもしれないなあ。
さて「歩行新宿旅籠屋」は正しくは(かちしんしゅくはたごや)と読む。
この読み間違いが、紋次郎の運命を決めた。
漢字、奥が深いなあ。続きを読む投稿日:2019.01.16
・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
・歩行新宿 旅籠屋(ほこうしんじゅく たびかごや)
・逃げる文吉
・黒川静右衛門の報復
・韓信の胯くぐり
・どうして九両(くれよう)三分二朱
・旗本…向井帯刀の発心
武士の、家で役職を代々受け継いでいくということの厳しさ苦しさというのをここまで深く実感させられたことはない。自分の職場の上司も同僚も後輩もみんな親から引き継いだ仕事なのだ。親の後輩から仕事を教えられ、自分の同僚の子を後輩に持ち、上司の子がまた自分と自分の子の上司になりるのだ。とてもとても恐ろしいほどに狭い世界で生きている。
自分の跡取り息子を与力から養子にと言われれば断れず、子供同士の喧嘩なのに、相手が上司の息子なら、ゆくゆくは自分の息子の上司になるわけだから、自分だけが我慢すればいい話ではない。波風立てずに穏便に治めなくては、自分だけでなく、息子の希望の配属にも関わってくるのである。大変窮屈で気苦労の多い生活である。
武士は「お家(いえ)が一番」というのは分かっていたが、こうやって丁寧に書かれている小説は殆どなく、改めて日々の些細な出来事を処理する時にこの狭い環境で適切な対人関係を考慮しなくては生活できないということが理解できた。
武士って想像以上に苦しい環境だ。続きを読む投稿日:2017.03.30
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