悩んでもがいて、作家になった彼女たち イタリア人が語る日本の近現代文学
イザベラ・ディオニシオ(著)
/淡交社
作品情報
周囲の厳しい目にも負けず信念を貫き生き抜いた10人の女性作家(与謝野晶子・宇野千代・瀬戸内寂聴・樋口一葉・円地文子・向田邦子・有吉佐和子・林芙美子・森茉莉・幸田文)たち。自らをさらけ出した作品は、今も色褪せることなく現代に生きる私たちの心に訴えかける。日本人以上に日本の文学を愛してやまないイタリア人女性が、日本を代表する近現代の女性作家が紡ぎ出した作品と各人の生きざまをひもとくことで、新たな視点で文学へ誘う一書。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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レビューの前に、本書のテーマにまつわる私怨を成仏させたい。(いい迷惑)
高校の現代文で文学が苦手になった。
作家や代表作を時代順に暗記させられる。あんな実を伴わないカリキュラムと空気感では読んでみよ…うと思う方が難しい。
本書にも取り上げられている与謝野晶子は「恋心を情熱的に詠った歌人」という超絶ライトタッチな解説で、情熱よりもよそよそしさの実感が湧いた。そんな風に文学の垣根は次第に高くなっていき、越えようとする気力も削がれていった。
でもイザベラさんは違う。
日本文学者の彼女が大好きな10名の女流作家(「女流」を付けることに”NO”と言う風潮は自分も賛同する)を本書に集結させ、作風や作家自身を好きなように解説している。
長い在日生活によって日本人化が進んでいるのか、彼女は良い意味でイタリア人らしくない。今昔の日本語をたくみに操り(「アウト・オブ・眼中」は久々に聞いた笑)、燃えるような恋愛には奥手、大の銭湯好きで湯船では頭の上に畳んだタオルを乗せている。
しかし「彼女たち」の話になると、水を得た魚のように生き生きと語り出す。手垢までつきそうなくらいにベタベタと作家たちに触れ、時にはゾッとするくらいに褒めちぎる。そこはさすがイタリア人と言うべきか…。
でもそのくらい力説してくれると却って興味が芽生えやすく、結果また積読リストが膨れ上がった。私怨を完全に晴らすべく他の著書も読みたいし、何なら彼女の授業を受けてみたい!笑
彼女たちの生き方はまさに「十人十色」という言葉通りだが、時代の規範からはみ出しながらも自分らしさを貫いた点は共通している。
そこから紡がれる物語や登場人物も、世間がイメージする「女性らしさ」で片付くものでは決してない。樋口一葉の作品も、原文が難しいだけで人物設定から何まで巧妙に計算し尽されている。
「女だって好い児になれ、女だって好い児になれ」
たおやかな女性の代表格みたいに思っていた幸田文さんですら、そういった複雑さを作品の中で垣間見せていた。
幼少期より父 露伴から(!)家政学の手ほどきを受けてきたが、それがのちの作品に活きてくる。世間がいう「女性らしさ」に該当する一面もありながら、よく見ると一筋縄ではいかない。
それが男性評論家やフェミニスト達をも上手く騙しているみたいで地味に痛快だった。『風とともに去りぬ』のメラニーにちょっと近い?
大好きな有吉佐和子さんもピックアップされている。
しかし賞に恵まれなかったのは、「文学」から程遠かったから…という見解が本当だったとしたら、それはいただけない。冒頭に戻るみたいだけど、「これだから文学は!」だ。現代にも通じるトピックを器用に練り込んだ上質なストーリーなのに、一体何を考えとるんだ。
有吉さんはそれを無念と捉えていなかったかもしれないが、やっぱり腑に落ちない。有吉作品の布教を目論む著者とともに、自分もいっぱいレビューしていこう!
あれ、ひょっとしてイザベラさんから熱貰っちゃった…?続きを読む投稿日:2024.03.22
導入が面白いし、読み込みが深いし、大好き。
とにかく有吉佐和子さんの全ての著者を読み尽くしたくなった!!投稿日:2023.12.02
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