小説の読み方
平野啓一郎(作者)
/コルク
作品情報
本書は、現代の純文学からミステリーまでの11作品を題材に、物語をより深く楽しく味わうコツを、人気小説家がわかりやすく解説。小説を読んだ後、SNSで、作品の感想を書いたり、意見交換ができるようになる1冊です。
「冒頭で、私は、動物行動学者のティンバーゲンによる『四つの質問』を紹介している。これは、文学に限らず、映画にも美術にも通用する問いであり、何かを鑑賞したあと、人とそれについて話をしたり、自分で感想を書いたりする際には有効な着眼点となるだろう」(本書「文庫版によせて」より抜粋)
<本書で解説する作品>
●ポール・オースター『幽霊たち』
●綿矢りさ『蹴りたい背中』
●ミルチャ・エリアーデ『若さなき若さ』
●高橋源一郎『日本文学盛衰史――本当はもっと怖い「半日」』
●古井由吉『辻――「半日の花」』
●伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
●瀬戸内寂聴『髪――「幻」』
●イアン・マキューアン『アムステルダム』
●美嘉『恋空』
●フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』
●平野啓一郎『本心』
PHP新書版に、『罪と罰』『本心』の解説を新規追加し、再編集。
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.9 (14件のレビュー)
-
【読もうと思った理由】
前回、同著の「本の読み方」を既読済であり、シリーズ第2弾ということで、元々読むつもりで既に購入していた。前作から得た知識として、「助詞・助動詞に着目する」や、「接続詞に注意する…」や、「書き出し(冒頭文)に作者はこだわる」など読書の際は、今までより、少しでも理解力が上がるように、自分で出来ることは実施していた。今回さらなる小説を読む際の知恵をアップデートするため、読むに至る。
【本書の概要】
大きくは2部構成になっており、小説を読む際のポイントを明示してくれる、どちらかと言えば、実用書に近いと感じた。
1部は、小説を読むための準備として、「そもそも小説とは?」から始まり、小説を読む際のテクニックや、注意点を具体的に示してくれている。2部は実際の小説を元に、1部で紹介したテクニックをどう活用するかを詳細に説明してくれている。
(1部の概要)
・世の中のことを「小さく説く」もの
・小説を「4つの質問」から考えてみる
・小説が持っている時間の矢印
・「知りたい」という欲求と「主語」「述語」
・「究極の述語」への長い旅
・大きな矢印は無数の小さな矢印の積み重ね
「主語」になる登場人物
・話の展開が早い小説・遅い小説
・述語に取り込まれる主語
・期待と裏切り
・事前の組み立てと即興性
・愛し方に役立てる
(2部の概要)
・ポール・オースター 「幽霊たち」
・綿矢りさ 「蹴りたい背中」
・ミルチャ・エリアーデ 「若さなき若さ」
・高橋源一郎 「日本文学盛衰史 本当はもっと怖い『半日』
・古井由吉 『辻 半日の花』
・伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
・瀬戸内寂聴 『髪 「幻」』
・イアン・マキューアン 「アムステルダム」
・美嘉 「恋空」
・フョードル・ドストエフスキー 『罪と罰』
・平野啓一郎 「本心」
【内容】
小説を読む際の指南書として、かなり実用的で且つ、純粋に楽しめる本だ。
「小説とは?」に対する筆者の考えは、「具体的で、生き生きとしていて、滑稽で、かなしくて、胸が躍るようで、切なくて、美しくもあり、また馬鹿馬鹿しくもある、感動的な話が人間にはあるはずだと信じること。そんなしゃくはちばった言葉では、到底掬い取れないような現実が、人間にはあるのだと信じること。それが、小説が求められる理由だろう」と語ってくれている。 流石、売れてる作家さんは、説得力が一般人とは全く違うことを、この文章で知らしめてくれる。
また「小説とは?」という問いに森鴎外が、解答を示してくれていた。「何をどんな風に書いても良い。」と言っており、自由に書きたいことを書くことにこそ、意味があると明示してくれている。
〈知りたいという欲求と主語、述語〉
そもそもの話、人はどうして小説を手に取るのか?→それがどんな話か知りたいからだ。
この知りたいという欲求こそが、ページを捲らせる原動力であり、「先を知りたい」という気持ちの根底には、最後まで辿り着いて、全体を知りたいという欲求がある。
私たちは、世界の圧倒的な情報を全て処理することなど到底出来ないし、する必要もない。そのうち極一部を取り出しては、「これは……だ。」という一本の時間の流れの中で処理できる形に整理し、なるほどそうかと納得して、次の情報に取り掛かるということを繰り返している。それを可能としているのが、主語+述語というワンセットが基本となっている文法の仕組みだ。
古典文学の新訳ブームの中で注目された「カラマーゾフの兄弟」を例にとる。小説もまたこの世の中に掃いて捨てるほど溢れかえっているモノの一つであり、「カラマーゾフの兄弟」というタイトルもまた、その時点では、方向性を持たない、単なる単語に過ぎない。しかし、何かの拍子に、この「カラマーゾフの兄弟」に興味を持ち、1ページ目の文章に目を落とす。この最初のささやかな行為の一瞬こそが、「カラマーゾフの兄弟」という単語に「は」という助詞をくっつけて、主語を作る作業なのだ。『「カラマーゾフの兄弟」は、……だ。』という〈矢印〉を持った文法構造の中に引っ張り込まれ、絡め取られることになる。当然、隠された「……だ。」が知りたくなる。プロットというのはこのタイトルを主語とした究極の一文の述語「……だ。」に至るまでの〈大きな矢印〉のことである。私たちはこの矢印の案内に従って、泣いたり笑ったり、考え込んだりしながら、最後の一行まで目指す。そして最後のページを閉じた時に『「カラマーゾフの兄弟」は、……だ。』という自分なりの述語が得られればゴールである。例えば、『「カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーの最高傑作だ」、「父殺しの小説だ」、「人間の絶望と希望を死に物狂いで描いた物語だ」、「圧倒的な言葉の世界だ」と、そこにはありとあらゆる述語が当てはまる。
→(感想)そうか、最初は好奇心から始まり、興味を持って読み始めれば、最後は自分なりの答えを求めるために、読んでいるんだと腑に落ちた。
これでも本書のほんの一部分の抜粋だ。結構小難しく感じるところも多々あるが、56〜57ページにこう書いてある。以下を読んでやっぱり基本は楽しんで読まないとなぁと原点に帰る。
『本書では前作「本の読み方」同様、あるいはそれ以上に小説の分析的な読み方について、多くのページが割かれている。それについて、本とはもっと、感情を揺さぶられながら読むもので、考えるよりも、感じることのほうが、優先されるべきではといった疑問を抱く人もいると思う。基本的には私も同意見だ。自分が小説を読むときには、やっぱり感動しながら読みたいし、自分の小説を読んでもらうときには、なおさらだ。』
【感想】
小説に関しては、以前はエンタメ小説(純文学以外)を中心に読んできたし、特段それが悪いこととも思っていなかった。だが以前、ある純文学好きの方から言われたことで、ハッとしたことがあった。「純文学の良いところは、すぐにその小説を理解できないところが良いんだ。理解できないから、なんとか理解しようと複数回読んだりする。それでも理解できないと、同じ作者の別の作品やエッセイを読んだりして、その作者のバックボーンや、普段何を考えているかを理解しようとする。それから時が経って、もう一度その作品を読むと、以前とは違った感想を持てるようになる。その瞬間が自分が向上できたような気がして、純文学はそこが良い」と。
この話をきっかけに小説に対する向き合い方が変わった。今までは、小説はあくまで娯楽で、数時間をかけてもし理解できなければ、その時間が無駄になってしまったような気がして、時間が勿体ないという思いが大半を占めていた。だがこの話を聞いてから、「小説を読んでも勉強になるし、理解力向上に役立てる」とパラダイムシフトできたことが、何よりも自分にとって収穫だった。
今回この本を読んで最大の収穫は、古井由吉氏の作品との出会い(再会)だ。古井由吉氏のことは、平野啓一郎氏も「小説家が尊敬する小説家」と形容している。
実際一部抜粋の「辻 半日の花」を読んで、まず最初に「なんだこれ、すごく日本語が綺麗だ」と素直に感じた。今まで一度も出会ったことがない程に、一種文体だけで感動すら覚えるほどの精緻な文章だ。こんな作家さんがいたんだ、と。あれ?けど、この名前以前どこかで聞いたような、どこだ?
あっ!思い出した。以前、伊坂幸太郎氏が編者として刊行したアンソロジーの「小説の惑星 ノーザンブルーベリー編」だ。
そのアンソロジーでは、古井由吉氏の作品は「先導獣の話」という短編を載せていた。
この本読了後すぐに「小説の惑星」を本棚から引っ張り出してすぐに読む。
伊坂幸太郎氏が編者あとがきで、『「完璧な小説は?」と聞かれれば、「先導獣の話」を上げるかもしれない』と書いている。
以前この短編を読んだ時は、全く印象に残っていなかった。だが今回は、同著の作品で感動を受けるほどの衝撃だったので、以前読んだ時よりは、読解力や理解力が上がったのかなと感じられ、少し嬉しくなった。
【雑感】
小説家(平野啓一郎氏も)の方もそうだし、ある程度小説を読んだ方ほとんどが、ドストエフスキーを絶賛しているなぁとつくづく思う。
まだ僕は「罪と罰」しか読んでないが、やはりどこかのタイミングで、ドストエフスキー5大長編の残り4作品(カラマーゾフの兄弟、白痴、悪霊、未成年)を読まないとなぁと思う。
ドストエフスキーもそうだが、今読みたい本が沢山ありすぎる。
元々歴史好きなので、司馬遼太郎氏の文庫になってる作品は全て読んでみたいし、今ハマって読んでいる古典(哲学・古典文学)を、光文社古典新訳文庫で有名どころは押さえたいし、今村翔吾氏は少なくとも文庫化された書籍は読みたい。これだけで軽く200冊以上はいくんだろうなぁ。
読む優先順位を、そろそろ本気で考えようと思う。続きを読む投稿日:2023.02.28
平野啓一郎さんだし、こ難しくて面倒くさい本に違いない…と思いつつ読んでみた。
予想を裏切り読みやすかった。
自分がいかに上っ面しか読んでいないことがよくわかる。同時に自分はとても物書きにはなれないと…思わせる本だった。
取り上げられている本が蹴りたい背中とゴールデンスランバーしか読んだことなかったので、それぞれの作品を読んでからの方が良いのかと身構えたが、丁寧なあらすじと長めの引用でよくわかった。
今後に活かせるか…はさておき、楽しく読めた。続きを読む投稿日:2024.05.26
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。