有栖川有栖選 必読! Selection5 他殺岬
笹沢左保(著)
/徳間文庫 トクマの特選!
作品情報
有栖川有栖が笹沢左保のミステリ作品をセレクトする〈笹沢左保サスペンス〉セレクション第5弾は『他殺岬』。
美容業界のキング・環千之介が黒い過去をメディアに暴かれて自殺し、後継者の一人娘ユキヨも後を追った。その数ヶ月後、告発記事を執筆したルポライター天知昌二郎の息子が、ユキヨの夫によって誘拐される。彼の要求は、ユキヨの死が他殺であることの証明だった――。
本格ミステリ復帰宣言とともに送り出され、著者自身が自選ベストの一本に挙げた“鉄壁アリバイ×タイムリミット誘拐”の醍醐味をご堪能あれ。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 有栖川有栖選 必読! Selection
- 著者
- 笹沢左保
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 徳間書店
- 掲載誌・レーベル
- 徳間文庫 トクマの特選!
- 書籍発売日
- 2022.06.08
- Reader Store発売日
- 2022.06.08
- ファイルサイズ
- 3.9MB
- ページ数
- 386ページ
- シリーズ情報
- 既刊12巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
ルポライターの天知昌二郎の息子、春彦が誘拐される。誘拐したのは、天知の記事がきっかけで自殺をした環ユキヨの夫、環日出夫。ユキヨの自殺の原因が、天知の記事だとして、その復讐のために誘拐をしたという。そのため、通常の誘拐と異なり、身代金等要求しない。120時間=5日間、天知を苦しめ、その後に殺害することが目的
レビューの続きを読む
環ユキヨが、天知の記事が原因で自殺したのではなく、誰かに殺されたのであれば、日出夫には復讐の動機がなくなる。そもそも、天知は、ユキヨが自殺したことに違和感があった。かくして、120時間で、環ユキヨが他殺されたこと、その真犯人を探すための捜査を始める。
天地は、①自殺として処理されたものが他殺だったことを立証する、②その犯人を特定する、③犯人が偽装したアリバイを崩す、という3つの課題をクリアする必要がある。タイムリミットがある捜査。全5章の章立ては、残り120時間34分→残り91時間30分→残り57時間0分→残り35時間4分→残り2時間10分となっており、サスペンス感満点の盛り上がりを見せる。
犯人になり得る条件として、①断崖の上で会っても警戒されない人物、②手紙を遺書と利用するため、ユキヨのバッグに入れることができる、③ユキヨの行動を熟知している、という3つの条件から、枝川秀明、鶴見麗子、十文字敏也の3人をピックアップする。しかし、枝川と鶴見の二人にはそうそうにアリバイが成立。この作品は、基本的には十文字敏也を容疑者とし、十文字が犯人であることを立証するための捜査という展開を見せる。
他殺岬という作品にある最大の意外性は、天知の住むマンションの大家でもある宝田真知子の存在。28歳で独身。再生不良性貧血という病気で、結婚を諦め、好きな人がいるとして、ボランティアで春彦の世話をし、捜査にも協力をしている女性。この真知子が好意を寄せている男性が、天知であると見せかけて…実際は、黒幕である十文字を愛しており、この犯罪の実行犯的存在であるという展開。この点は大きな意外性となっている。
冒頭で、春彦が通う保育園で、保母さんが変死するという事件が描かれているが、この事件も関わってくる。それどころか、この保育園が廃園になれば、「桜トップス」という企業の建設用地が確保される。十文字は、この桜トップスのディベロッパーであり、大きな利益を有する。
この保母である花形アキ子は、偶然、春彦の誘拐犯である環日出夫と宝田真知子が一緒にいる姿を見ていた。この目撃者を消さないと、誘拐時に疑われるのは必至。そのため、宝田真知子が、花形アキ子を殺害する。
こういうご都合主義的な偶然があるのが、笹沢佐保のミステリの特徴でもあり、欠点のようにも思う。物語に意外性を付与し、面白い筋書きにするためには仕方ないといえるか。
整理すると、この物語には、環日出夫という自殺した環ユキヨの夫が、自身の借金等を理由として、自殺に見せかけてユキヨを殺したことから始まる。
ユキヨは自殺として処理されており、一見、完全犯罪に思えたが、この自殺が不自然だと見抜いた十文字が、他殺であると気付き、環日出夫に天知の息子、春彦を誘拐させる。その目的は、最終的に、春彦の通う保育園を廃園に追い込むということ。この誘拐に、普段は春彦の世話をしている天知に近しい人物である宝田真知子が協力する。
日出夫と真知子が一緒にいる場面を目撃した、保育園の保母も殺害。誘拐、殺人事件等が続き、園長は保育園を続けることを諦める。十文字は目的を達する。
天地は真相には気付くが、宝田真知子は、全ての罪をかぶり、十文字は関係ないという。そういったやるせない終わり方を見せる。
誘拐の動機がしっくりこない部分はある。この作品の中では、保育園は廃園に向かうので、目的を達成しているが、目的達成のための手段といては不確か過ぎる。やや動機が不自然。あとは、花形アキ子殺害の動機となる日出夫と真知子が一緒にいる場面をアキ子が目撃したという偶然。この偶然も、物語の重要な部分でもあり、偶然で片付けるのはやや苦しい。このアキ子殺しがなければ、保育園が廃園にはつながらなかったようにも感じる。
とはいえ、自殺をしたユキヨの復讐をしていたと思われた日出夫こそがユキヨ殺しの犯人だったという意外性。自ら、ユキヨが自殺として処理されているのに、疑惑の目を抱かせるような誘拐をするという展開は面白いプロットである。あとは、宝田真知子の存在。天知のために捜査に協力するヒロインと見せかけ、共犯者。しかも黒幕の罪を被ろうとするほどの忠誠心を見せる実行犯。愛する十文字のために、花形アキ子の殺害までしていたというのは意外性が高い。
トータルで見て、サスペンスと意外性が高い、誘拐モノの傑作といっていいデキ。★4で。投稿日:2022.12.24
自分の書いた記事によりある父娘を自殺に追いやってしまった天知。彼の息子が自殺した娘の夫に誘拐された。ただ復讐のための誘拐であり、犯人との交渉の余地はないと思える中、天知はもし娘の死が自殺でなく他殺であ…ったのなら復讐の意味がなくなると考え、事件の捜査に奔走する。迫るタイムリミットの中、彼は真相にたどり着き息子を取り戻すことができるのか。サスペンス感溢れるミステリです。
なにその斜め上の発想! と感嘆してしまいました。自殺として何の違和感もない事件を、まさかそんな理由から他殺として捜査しようとは。そしてきっと他殺ということになるのだろうな、とは思ったものの。調査が進むほどに自殺の印象が強められるし、手掛かりのなさにも呆然。いやこれ絶対に無理でしょ。絶望的な徒労しか見えないのでは。
ところが。もちろんそのままではないのですねえ。あれよあれよという間に思いがけない展開に。序盤から描かれていた別のある事件も当然関係はあるのだろうと思っていましたが。そう繋がるのか! そして誘拐に隠された真の意味にも驚愕でした。続きを読む投稿日:2023.01.08
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。