コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状
村山早紀(著)
/ポプラ文庫ピュアフル
作品情報
大事な探しものがある人だけがたどり着ける、不思議なコンビニたそがれ堂。ミステリアスな店長が笑顔で迎えるのは、大好きな友だちに会いたいと願う10歳のさゆき、あるきっかけからひきこもりになってしまった17歳の真衣、学生時代の恋をふと思い出した作家の薫子・・・そこで彼女たちが見つけるものとは? ほのかに懐かしくて限りなくあたたかい4編を収録したシリーズ第2弾、文庫書き下ろしで登場。
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商品情報
- シリーズ
- コンビニたそがれ堂
- 著者
- 村山早紀
- 出版社
- ポプラ社
- 掲載誌・レーベル
- ポプラ文庫ピュアフル
- 書籍発売日
- 2010.01.18
- Reader Store発売日
- 2021.09.30
- ファイルサイズ
- 2MB
- ページ数
- 287ページ
- シリーズ情報
- 既刊4巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (89件のレビュー)
-
日々の暮らしになくてはならないものの代表格、それが”コンビニ”だという答えにあなたは異議を唱えられるでしょうか?日本全国津々浦々まで進出した”コンビニ”。出勤途中に立ち寄って、帰宅途中にも立ち寄って、…そして出張に出かけたらホテルに入る前に、まず”コンビニ”の場所をチェックする。お金を下ろすのも、コンサートのチケットを取るのも、さらには大学の卒業証明書がなぜか自宅近くのコンビニで手に入ってしまうという、まるで魔法じゃなかろうかと思えるくらいに、ある意味夢を見せてくれる場所、それが”コンビニ”だと思います。
『そのコンビニには
この世で売っている すべてのものが
並んでいて
そうして
この世には売っていないはずのものまでが
なんでもそろっている』
『風早』という街の駅前商店街のはずれに、とても不思議な”コンビニ”を見つけることがあるのだそうです。ただし、『そのコンビニには、大事な探しものがある人しか行くことができない』のだそうです。『ほんとうにほしいものがある人しか、たどり着けない』というそのお店。朱色に光る看板には『たそがれ堂』の文字と『稲穂の紋』があるというそのお店。
『店の名前は たそがれ堂』、不思議なことが起こる魔法の”コンビニ”です。そんな”コンビニ”を舞台にしたこの作品、村山早紀さんが描く奇跡の物語です。
村山さんの作品の舞台に必ず登場する『風早(かざはや)の街』。一見、日本の普通の街並みの中に、不思議世界が隣り合わせになっていて、その境界線は曖昧で、どこまでが現実世界で、どこからが不思議世界かが、よく分からない。そんな絶妙さがたまらなく読者を魅了する、それが村山さんの描くファンタジーの世界になくてはならない街、『風早』です。そんな『風早の街』を描いた作品の中で最も有名な作品が「コンビニたそがれ堂」の物語です。元々は児童書として書かれた物語を大人向けに味付けしたこの作品には、一気に心を持っていかれるだけの魅力がたっぷり詰まっています。今回手にしたこの作品「コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状」はその続編となる物語です。ただ、続編と言っても元々が連作短編の形式を取る作品なので、この作品が初めてという方も、何ら違和感なく入っていけると思います。そして、この作品は一作目と異なり、元々が大人向けに書かれたものということもあり、中でも二編目の〈人魚姫〉は、ホラー色に溢れた描写が連続する、その内容にビックリ!してしまった作品でした。でも、そんな二編目も含めて共通するのは、物語の結末の清々しさ。嵐が去って天上から一筋の光が射し、それが世界を柔らかく包んでいくような、しあわせ感に満たされる読後が最後に待っているという点です。そんな短編四つから構成されたこの作品。かなり色合いの異なる短編ばかりで、読者によって好みはかなり変わるように思います。そんな中で、私の心を、”直球ど真ん中”で射抜いたのは一編目の〈雪うさぎ〉でした。
『一月のある夕方』、『駅前商店街のあたりで道に迷い、途方に暮れてい』るのは『この街に引っ越してきてから、まだ一週間』という小学4年生の さゆき。『…ここって、どこなんだろう?』と思う さゆきは『ママが嫌いで、わざと帰るのが遅くなったなんて誤解されたらどうしよう?』と心配します。『いっしょに暮らし始めたばかりの新しいママ』、『明るい笑顔と優しい声。あの人を傷つけようなんて、ぜんぜん思ってもいないのに』勘違いされたら、と焦ります。そして『この街に来る前、二週間の冬休みの間を過ごした、田舎のおばあちゃんの家』のことを思い出す さゆき。『昔に死んだママの故郷の家』の近くに『童話の中に出てくるような大きな森があり』、そこで『雪だるま二つと雪うさぎを一羽作って、お話したりして遊』んだ冬休み。『炭の切れ端で、笑顔の形に目と口を作った、大きいのと小さいのと、二つの雪だるま』、そして『枯れ木で作った二本の腕。そして切り株の上に置いた、小さなかわいい雪うさぎ』。『編みものが得意な さゆきは、夜、家にいるときに、雪だるまたちと雪うさぎに、おそろいのマフラーを三本編み』、『これはわたしたちの友情の証。絶対に大切にしなくちゃだめなのよ』と首にかけてあげました。そんな さゆきは『雪うさぎ』を『手袋の上にのせて』いろんな話をします。『パパが、図書館で出会った優しいきれいなお姉さんと結婚する』こと、『その人が さゆきの新しいママになってくれる』こと、『赤ちゃんのときに死んじゃったママのことも大好きだけど、そのお姉さんのことも大好きだ』ということ、そして『冬休みが終わったら、パパとママと三人の暮らしが始まる』こと、それを楽しみにしていることを『雪うさぎ』に語って聞かせた さゆき。そんな冬休みも終わり、帰る道に迷った さゆきは『森に帰りたいな』と思います。『内気で、引っ込み思案な』さゆきは『またずっと、ひとりぼっちだったら…』と新しい生活を不安に感じています。一方で早く帰らないと、と焦る さゆき。そんな時『たくさんの古くて赤い鳥居が』ある場所に行き着きます。『薄暗がりの中に、赤い看板』を目にした さゆき。そこには『コンビニたそがれ堂』の文字。さゆきは『ガラスの扉を押して開け』ます。『ふんわりといい匂い』がしたという店内。『道に迷って辛かったね。ここはあったかいからちょっと休んでいきなさい』と声をかけてくれた『長い銀色の髪と透き通る金色の目』の店員さん。そして、元気をなくした さゆきを励ます奇跡の物語が始まります…というこの短編。人によっては、子供っぽいと感じられる方もいるかもしれません。でも私にとっては、一年分の涙を全て流してしまったくらいに、涙無くしては語れない物語がそこにはありました。何歳になろうが、この世界観に涙できる人間であり続けたい!そう誓った絶品!でした。
そして残りの三つの短編のうち〈人魚姫〉では、この作品の副題とも言える『奇跡の招待状』が登場します。恐らく今回の続編で村山さんが最も力を注がれた短編だと思います。そこでは、不登校となって自室に閉じこもり、ゲームの世界で一日を過ごす主人公・小野真衣の姿が描かれていきます。『もうずっと遊んでいるオンラインゲーム』の中で『どんな怪我人でも癒しの魔法の力で治してしまう高位の高官』であり、『いまや知る人ぞ知る、ヒーローのような存在』という真衣。『たくさんのプレイヤーたちからお礼を言われ、喝采を浴び』るゲーム世界の中の真衣。そんな真衣に『おまえさ、リアルじゃ「廃人」だろう?』と、通りすがりのプレイヤーに言葉を投げかけられた真衣。『ゲームの世界では、長い時間そのゲームで遊ぶだけでレベルが上がるようになって』いる、つまり、『現実世界で過ごすべき時間を捨てて、現実から逃避して、一見明るく見える、電脳世界のまぶしい暗がりの中で遊んでいるだけ』という事実を、改めて突きつけられる真衣。そんな真衣は、2年前に亡くなった いとこの秋姫(あき)のことを思い出します。『よし、まずは、家を出て、街に行くところまで、やってみよう』と勇気を振り絞る真衣。そんな街に出た真衣の前に『オレンジ色の灯り』が目に入りました。『光る看板に書かれた名前は、「コンビニたそがれ堂」』。『たそがれ時には、魔界の扉が開くんだ』という秋姫の言葉を思い出す真衣…と展開していくこの作品は、まさかのホラー的展開を経て、光射す美しい結末へと進みます。少し冗長さを感じないではありませんが、ゲームの中の世界から出ても、そこは村山さんのファンタジーの世界だったという、なんとも不思議感に溢れる世界観が楽しめる点、そして『まだあたしの人生はゲームオーバーになっていないんだもの。冒険は、まだまだできる。あたしは、何回だって、旅立てる』という主人公・真衣の力強い決意が強く印象に残った好編でした。
そんな四つの短編に共通するのは、何かしらの出来事により、主人公が大切に思っていた人がいなくなったという起点から、再び立ち上がり、前を向いて進んでいく、そんな主人公たちの生き様が描かれている点でした。『コンビニたそがれ堂』は、誰もが容易に訪れることのできる、もしくは行き着ける場所ではありません。しかし一方で『大事な探しものがある人』、『ほんとうにほしいものがある人』の前にはその姿を現してくれます。それは、生きることに悩み、苦しみ、そして前に進むことの出来なくなった人の背中を、そっと優しく押してくれる存在でもありました。
『あたしは、幸せに生きる。元気に、強く生きる。きっと人生の旅を楽しんでみせる』と再び前を向く主人公たち。そんな彼らの笑顔を見る結末に、笑顔のある人生ってやっぱり素晴らしい!改めてそんなことを感じた作品でした。続きを読む投稿日:2020.10.04
このレビューはネタバレを含みます
雪うさぎの旅
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さゆき風間の街に引っ越してきてまだ一週間くらい。四年生。
人魚姫
小野真衣
背が低くてやせっぽちの、病気がちな少女。十七歳。
真衣の母
パソコンソフトを開発する会社に勤めているSE…。
磯良秋姫
真衣と同い年のいとこ。
魔法の振り子
薫子
ティーン向けの雑誌の小説新人賞を受賞して作家デビュー。
佐藤薫
薫子の学生時代の友人。
莉子
サークル仲間の親友。
中村航一
ホテル風早の宿泊部長。
エンディング〜ねここや、ねここ
続きを読む投稿日:2024.04.25
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