実説 城谷怪談 撰集十六
城谷歩(著)
/パンローリング
作品情報
1.「千葉県某公園警備員」
長距離トラックの運転手をしている体験者の男性は、当時50代のベテランドライバー。その日も深夜長距離の運転に疲れ、運転手仲間の間で有名な、千葉県のとある閑静な住宅街にある大きな公園脇に、いつものようにトラックを停め、しばし休憩を取るつもりでいた。その公園は取り締まりの目からも逃れられ、大きな車両を駐車していても咎められることがない場所だった。シートを倒し目を閉じた時…コンコン。誰かが助手席側のドアをノックした。
2.「玄関の覗き窓」
自転車で日本を縦断中という若い青年。その年の夏、地元長崎県で不思議な出来事に遭遇した。訳あって母親と二人引っ越したのは新築でセキュリティーの整ったマンション一階の一室。盛夏の昼間、自室で彼は玄関の呼び鈴が鳴るのを二度聞いた。母親が内受けのインターホンモニター越しに対応している様子だったが、玄関に出向く様子もない。聞けば呼び鈴が鳴っているのに玄関先には誰もいないというのである。ピンポーン…。止むを得ず男性が玄関に向かうと、後ろで見ていた母親が真っ青な顔をして…。
3.「一人多い修学旅行」
怖い話をしたり聞いたりしていると、人ならぬものがいつの間にか近くに忍び寄ってきていると言われる。城谷が小学校六年生の修学旅行で出逢った怪奇。夜、先生の見回りも済んだころ、同じクラスの女子が八人連れ立ってやってきた。「怪談話を聞かせてほしい」というのである。同部屋の男子は怖い話が苦手だと言い、空になっている今来た女子の部屋で待っているという。かくして女子八人と城谷の合わせて九人で怪談話を始めることになったのだが…。
4.「重たい金縛り」
金縛りには二つのパターンが存在するという。肉体疲労と脳の覚醒からくる身体の不動。もう一つは…。城谷がまだ十歳のころ、寝室代わりの仏間に家族四人で布団を延べて寝ていたある夜中、妙な感覚に襲われ目が覚めた。両目を開いてみると嫌な怖気が全身に広がり、指先一つ動かせないことに気が付いた。そして自分の布団の足元からゆっくりと何かが這い上がってくるのを感じる。そして遂に這い上がってきたものが胸元に押し迫った時、とうとうそれを見てしまうことになる…。
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