実説 城谷怪談 撰集十五
城谷歩(著)
/パンローリング
作品情報
1.「白い子」
因縁因果とは何か。イワサキさんという営業の仕事をしている男性が、打ち合わせに訪れた都内某所の街を夕刻一人ぶらぶらと歩いていた時、思いがけず幼い子供の声を耳にする。気が付くと小学生くらいの男の子が現れる。誘われるようにその子についていくとオフィス街の中に思いもよらぬ公園がある。傍にあったベンチに腰を下ろし一息ついて目を閉じると喧騒が嘘のように消え、代わりにぴちゃぴちゃと水の滴る音が聞こえてきたのだが…。
2.「いらっしゃいませ」
今から二十年ほど前の事。八王子駅の近くにあった商業ビルの地階のオープンスペースには小さな居酒屋がお祭りの露店のようにひしめき合っていた。そのうち一つの店でアルバイトをしていたKさんは当時高校三年生。はす向かいのハワイアンバルの店長と特に仲が良く、ある日気掛かりなことを聞かされた。「この地階のオープンスペースには目に見えない客がいる。それは生者の客に混じって当たり前に現れる」と。冗談めかして話してくれたその話は過日現実になってKさんと店長の身にふりかかかることになった。
3.「湯煙に紛れて」
サカキさんは現在四十代の開業医である。彼がまだ駆け出しのインターン時代の事。勤めていた大学病院では冬になると若手の医者向けに長期出張のアルバイトの募集がかかった。N県のとあるリゾート施設で三食昼寝付きのアルバイト。内容は冬場雪山で遭難死された遺体の確認である。カチカチに凍り付いた遺体を温泉の湯気と蒸気を利用しいったん解凍させ、そこからがサカキさんの仕事だった。半月何もなく過ぎたある午後、遂に最初の仕事がやってくる。検死確認の仕事を終え、疲れ切ったサカキさんを思いもよらぬできごとが襲い掛かる。
4.「隣人」
都会ではビルとビルの間が非常に狭い場所が多々見受けられる。柿沢さんが住んでいた6階建ての集合住宅のワンルームも正にそんな条件の建物だった。暗く湿ったワンルームの窓のひとつは、隣接する隣の建物側に向いていた。そしてまた、奇しくも隣の建物の窓も同じように柿沢さん側に向いて設置されていた。ある日、柿崎さんがその窓のカーテンを開けてしまったのだが…。
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