実説 城谷怪談 撰集十四
城谷歩(著)
/パンローリング
作品情報
1.「こつこつ」
藤田さんという男性が、29歳の夏に体験した出来事。小さい頃から可愛がってくれていた祖母が亡くなり帰省した新潟の実家で、久方ぶりに対面した祖母は、北側の暗く涼しい部屋で静かに横たわっていた。その晩は祖母の横で眠ることにした藤田さんが夜中トイレに起きると、廊下の奥からコツコツ…と何かの音が近づいて来るのを聴く。やがてその音はトイレのすぐ前にまで近づいてきて。
2.「赤い部屋」
石川さんが高校生の頃。住んでいた横浜の某駅付近には、かつて火事で全焼し人は誰も住んでいない立ち腐れたままになっていた、ある企業の社宅アパートがあった。ところが、10階建ての建物の最上階にたった一つだけ今も火事による被害を一切受けず、綺麗なまま残っている部屋があり、そこには人ならぬものが住んでいるらしいという噂が独り歩きしていたそうだ。ある時、悪友三人と連れ立ってその部屋を探索に訪れてみるのだが、それがすべての怪異の始まりとなってしまう。
3.「天井の隅」
城谷が小学生のころ、暮れも押し迫った十二月のある晩、父と弟と三人でトランプをして遊んでいた時の事。トランプに飽きた城谷は、その世界からぱったりと音という音が消え、同時に視界からは色が失われ、まるっきり時間が止まってしまった感覚に陥ってしまった。不意に襲い掛かった異変に躊躇していると、天井の隅にもぞもぞと蠢くモノがみとめられた。それは次第次第に大きく膨らみ、やがて…。
4.「鈴の音」
吉野さんという男性が少年時代の話。当時同級生と連れ立って訪れた公園には大きなグラウンドと、サッカーゴールがあった。また併せて少し妙な噂もある公園でもあった。暗くなるまでシュートの練習で汗を流したが、そろそろ帰ろうということになり、足元に転がってきたボールを正面の友人にポーンと蹴り飛ばした時のことだ。ボールは放物線を描いて飛んでいったが急に空中でピタリと止まりボトンと地面に落ちてしまった。気が付くと正面にいたはずの友人の姿はなく駐車場から「早く帰ろうぜ」と声を掛けられた。今蹴り飛ばしたはずのボールは駐車場にいる友人の手元に抱きか抱えられている。吉野さんという男性はこの日の出来事を三十九歳になって急に思い出したのだが、その訳とは。
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