保健室経由、かねやま本館。
松素めぐり(著)
,おとないちあき(イラスト)
/講談社
作品情報
第60回 講談社児童文学新人賞 受賞作!
〇あらすじ
ずっとクラスの人気者として生きてきた中学生の佐藤まえみ(通称:サーマ)。父親の異動に伴い、夢の東京生活がはじまった。東京生活になじめなかったのか兄の慈恵(じけい)は突然不登校に。サーマは東京でもうまくやっていけるって信じてたけど、「サーマって、なんていうか……ちょっとしんどい」と、仲良しグループにはじかれて……。
学校に行きたくないけど、両親に心配されるから休みたくもない。
葛藤しながら保健室に向かい、扉に手をかけようとした瞬間。
「ちょっとちょっと、あんたはこっち!」
手招きしてきた不気味な白衣のオバさん・銀山先生に導かれ、いぶかしみながらも保健室の隣の【第二保健室】で休むことに。その地下にあったのは、中学生専門の湯治場「かねやま本館」だった――。
銀山先生って何者? かねやま本館って何? 温泉には効能が?
「疲れたら、休んでもいいんだ」
かねやま本館で出会う子どもたちとの交流や、温泉での休憩を通し、自分自身の悩みに向き合っていく、心温まる物語。
〇第60回 講談社児童文学新人賞 受賞作
選考委員、大絶賛!
「嫌なことがあったときは、のんびり休んでいいんだよ! というメッセージに元気をもらえます。」――小林深雪氏
「読者の共感を得る設定。ひとつ抜きんでていた作品。」――那須田淳氏
「ストーリーがたのしく、温泉旅館も、実に魅力的。」――茂市久美子氏
〇下記にひとつでもあてはまる子は、必読!
□ 友だちというよりは、親友がほしい
□ 学校生活で、悩みがある
□ 学校に行くのが、ちょっとしんどい
□ 最近、兄と気まずい
□ 湯治場(トージバ)って、なに?
□ 温泉が、好き!
〇シリーズについて
「保健室経由、かねやま本館。」シリーズ
<2巻> 2020年8月発売(予定)
<3巻> 2020年10月発売(予定)
〇著者紹介
松素めぐり
1985年生まれ。東京都出身(東京都在住)。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。
『保健室経由、かねやま本館。』で第60回講談社児童文学新人賞受賞。
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商品情報
- シリーズ
- 保健室経由、かねやま本館。
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2020.06.03
- Reader Store発売日
- 2020.06.02
- ファイルサイズ
- 6.6MB
- ページ数
- 224ページ
- シリーズ情報
- 既刊7巻
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この作品のレビュー
平均 4.6 (38件のレビュー)
-
最初は今風な文体に、少々戸惑いを覚えましたが、次第にそんなのどうでも良くなり、読み終えた後に、改めてこれは画期的というか、目から鱗の素晴らしいアイデアだと思い、全ての中学校(出来れば高校も)に温泉作っ…てくれって、本気で思いました。
ただし、予約制で、一度に入れるのは二人までということで。
『あたしたちにとって、教室で起こること、友達からの評価はすべてであり、ちょっとした失言が、ささいな失敗が、命取りになる』
客観的に思えば、絶対ではないということになるのかもしれないが、あくまで、それは当事者の視点でないと分からないことであり、しかも、多人数で閉鎖的なクラス内において、ただでさえ、多感な年頃の子達が集まって、多数派少数派のグループが形成されていく過程を目の当たりにするのだから、ここで繰り広げられている事のみが、正解で絶対なんだと思ってしまっても仕方のない事だと思う。
しかし、これも客観的に間違っていると思い、何故なら、そもそも正解なんて無いのだから、たとえ、それに共感できず異を唱える子がいても、「なんで?」ではなくて、当然なのであり、そこにひとつの問題点があると、私は思うのです。
たとえば、本書の主人公「佐藤まえみ」こと、「サーマ」の場合、仲良しグループの中で浮き始めてしまい、なにかを言うたびに、みんながちょっと黙って顔を見合わせて、やがて「ちょっとしんどい」と言われてしまうのだが、サーマはこの致命的な台詞を言われる前から、自分の立ち位置を既に意識し始める、繊細な女の子で、何とかしようと気遣いを続けたあげくにたどり着いたのが、下記の思い。
『一生懸命がんばって、良い人間でいられるよう努力してきたけど、それを認めてもらえないなら、いっそのこともう嫌なやつでいい』
これは性格的な問題もあるとは思いつつ、未だに私も実感することで、ならば、なぜ良い人間でいたいのかとか、認めてもらいたいのかって思うのかというと、自分の存在を認めて欲しいからであり、自分もこの世界の一員であることを実感したいからであるのだが、まあ、無理に頑張らなくてもいいんだし、良い人間って何だよ、というのが、大人になった私の思考法であり、それでも無意識にそう感じるのは、まだまだ私の視野の狭さがそうさせているのだと、実感しております。
ただ、サーマの場合は、なんだろうな。
サーマの所為だとは思えないんだよね。
私、中学の頃とかは、大人になったら完璧な人もいるんだろうな、なんて思ったこともあるけれど、そんな単純じゃないよね、人間って。見た目とは裏腹に、頭の中で私には想像もつかない事を考えていたりさ。
そもそも、何を持って完璧というのか分からないし、それと、それぞれの幸せが必ずしも一致するとは限らないし、一見、理解し難い事に於いても、自分事にたとえて考えてみれば分かってみたりとか、そうした気付きを中学生たちに口頭で伝えて促してみるのは簡単だけど、それを自分事にすることとは、全く別物であると私は思い、そこには体感してみないと、どうしても心まで届かないものもありそうな気がするし、やはり、限られた環境がそうさせている部分も否めないと思うから、サーマは努力するしかないと思ったのだし、兄の「慈恵」に関しても、そうした目に見えるものしか見ていないことから生まれた悲劇だと感じ、やるせない。
そこで、そうした気付きを促すのに最適なのが
『温泉』で、まずはゆっくり疲れを取るところから始めて自分自身を開放し、疲れが取れれば心に余裕が生まれ、自分自身を見つめ直すことができて、更に裸の付き合いという凄い作用によって、温泉で出会った人との会話というのは、何故か心を開かせる作用があるようで、ここでは自分も他人も真っ新な心境になれるから、まさに、これまでの膿を洗い流して、生まれたてのような新鮮な視点で物事を見ることが出来るからこそ、あんなに気さくで心温まる雰囲気になるのだと思い、本書の「かねやま本館」では、これを、その時の悩みに適した効用を設定することで、より分かりやすく教えてくれており、この多様な効用を見るだけで、人間は単純ではなく、とても複雑で繊細な生き物なんだということが実感できて、これは意外にも学校では教えられなかった気がする。
『気持ちを相手にぶつけることは、いいことではないかもしれない。でも、それと、自分の気持ちを吐き出すことは、ぜんぜん違うものだと思う。苦しい気持ちは上手に吐き出せばいい』
『怒りたいときは怒っていいし、泣きたいときは泣いていい。がまんしなくていい』
また、同じ効用(悩み)の温泉に他の人が居合わせる場合もあり、そこでは、自分一人ではなかったんだという、自分の存在を認められた気持ちになり、明るく見える子だって、いろんな思いを抱えているし、自分と似たもの同士の存在を知ることができることは、自分を見つめ直すことの大切さも教えてくれて、まさにそれは、自分以外の人の行いを見ないと、なかなか気付くことのできない貴重な機会だと思い、ファンタジーとはいえ、こうした提示には色々考えさせられる。
しかし、これでもまだ納得できない部分が、サーマにはあって、それは私も痛いほど共感できるのだが、この納得できない事の表現の仕方が素晴らしいと感じ、ネタばれにならないよう、ちょっとだけ掲載すると
『もう戻ってくんなよー』
誰かが小声でそう言った。
台詞の内容も酷いが、ここで重要なのは、実はこの後に続く文章であり、これは我慢できなかった。
そう、その通りなんだよ。
その通りすぎて、すっきりするのかと思ったら、全く逆の気持ちになり、まさにこれが、
『自分ごとのように考える』
ってことだと感じ、私も昔、あれだけの酷いことをされて、絶対に許せないとか思っていたけど、こうして小説の形で、その望みが実現されたのを読んでみると、悲しみしか湧き上がってこなかった。
自分がされて嫌だと思った事を、相手にすればどう思うのか?
答えは歴然としてますよね。
でも、それが分からなかった。
というよりは納得できなかった。
こういうところは、おそらく、こうして文章にして書かないと認めないのかもしれないし、私も今こうして、文章にすることで、また気分が違ってくるのを感じている。
ということで、私の場合は、本から気付きを促すことが多くて、本を読んでいなければ今頃どうなっていたのか、想像したくもないが、改めて、本に感謝したい気持ちでいっぱいです。
最後に改めて、かねやま本館の温泉の効能を記載することで、繊細で大切な問題を解決する糸口となってくれればと、願っております。
傷ついた心が癒やされる
自分のことを見つめ直すことができる
本音でしゃべれる人がいる
グループじゃなくて、ひとりずつ来るから、心の奥の奥を分かり合える
ひとりじゃないってことを実感できる
そのまんまの自分でいいってこと
なおなおさん
素晴らしい作品をありがとうございます。
なおなおさんが、これを選んだ理由、分かったような気がいたしまして、読んでいる途中で、自然と涙が流れているのが、それを証明していると思いました。続きを読む投稿日:2023.03.21
児童書でも大人でも刺さりますね。
学生時代を思い出す…。私もこの時代あったなー。湯治場行きたかったー。
行かないでも素晴らしい友人の良いところを模範として生き直したから良かったけど投稿日:2024.03.30
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