この作品のレビュー
平均 3.8 (9件のレビュー)
-
BLを知らない男性向けのBL入門書。原著は2016年、文庫は2018年。
本書において「やおい」は次のように定義される。則ちそれは、世界を原作としてそこに個々独自の解釈を施すことで、世界をファンタジ…ーへと改変しようとする、知的遊戯であると。その改変の仕方には、以下のふたつの約束事がある。
① まず、ふたつの対象をキャラクタライズする。ただし、両者とも男性とする。なぜなら、女性と男性の組合せにしてしまうと、②でそこに設定することになる関係性が既存のジェンダーバイアスに引きずられたものになってしまい、さらにどうしても女性としてキャラクタライズした対象に女性である自己を重ねてしまうことによって、現実とは別個の世界として独立させたいファンタジーの中に現実世界の自己の影が不純物のように残存してしまうから。空想の世界を男性だけにしてしまえば、自己を透明な観察者としてそこから切り離すことが可能となり、それをヨリ純粋なファンタジーとして楽しめるから。
② 両者の間に何らかの関係性を設定する。ただし、両者は恋愛や性愛の枠組みにおいて解釈される。なぜなら、一般に多くの女性に共通の関心事項とされる恋愛や性愛の形式をとることで、女性同士でそのファンタジーを共有することが容易になるから。
サンキュータツオによると「BL」「やおい」は日本人女性による発明だそうだが、本書のなかでも指摘されているように、そこに在り得たかもしれない関係性の可能性をあれこれ空想する楽しみというのは、別に女性だけのものではなくて、男であっても自分のなかでさまざまな物語を妄想するときに同じようなことをして楽しんでいるのではないかと思う。尤も、そこに設定される関係性の多様さや精妙さには差があるかもしれないが。それでも、自分好みの関係性を対象に読み込むというのは、フィクションを楽しむ際の普遍的な営みではないかと思う。とするならば、男がポルノを消費するのと同じように女も性的欲求を満たすために「BL」を享受しているとする憶測は、必ずしも妥当ではないことがわかる。
かつて『ユリイカ2005年11月号=文化系女子カタログ』所収の速水筒「ひとでなしのゲーム」の文中に、「森羅万象はやおいだ」という強烈な一文を見つけ、そこで取り上げられていた「無機物やおい」という想像力の遊戯に驚かされたことがある。それ自体では無関係な個物の集合に、あたかも位相構造を導入するかのようにして、そこに関係性を打ち立てていく。この図抜けた想像力は、やはり面白いと思う。
しかし、そこに読み込まれるさまざまなキャラクターとその関係性とは、既に記号化されてしまっているものであって、所詮は既存の約束事の順列・組合せでしかないようにも思われる。この「既に囲い込まれてしまっている」という感じが、ひっかかる。約束事を共有している者同士でそれを確認し合って面白がっているという、それこそ約束事を踏襲しているだけのやりとり=「内輪ノリ」は、不毛なもののように感じてしまうが、部外者が口を出すことではないし、ひょっとしたら表現とその共有ということにおいては普遍的な光景であるといえるのかもしれない。
□
後半、春日太一が自分の身体についてある個人的な告白をする興味深い箇所がある。確かにこれまで、一般に男性の身体性に関しては、男によっても女によっても、限定された仕方でしか語られてこなかったように思う。男性の身体には、当事者が知らずにいるだけで、ひょっとしたら未だ現実化されていない性愛上の可能性が潜在しているのかもしれない。続きを読む投稿日:2021.01.11
この手のBL論的な本は結局気になってしまうところに書き手が男性となればそりゃ読むよという。しかもタツオさん。ファンです!
「BLとは何か」というお決まりの論調だけど男性が男性に解説するというスタイルが…新しいです。そんで解説された春日太一さんが腐思考にたのしく目覚めていくのが面白かった。とくに自分は受けに感情移入してしまって云々のとこが目鱗でしたね。女王様とかじゃなくて、ふつーに(?)攻められるのが好きな男性もいるよね。
でもなんか知った口きくなというかほっとけー! とも思っちゃうのは心が狭いのかな? あんま掘られると恥ずかしいよ! タツオさんのこと好きだけどやっぱりタツオさんは腐男子なのよ。どれだけ周りに腐女子といわれても腐女子ではないのよ男だから。男がBL読むのは全然いいけどそこ名誉みたいに言わないでほしいなーと個人的には思っちゃいましたね、どれだけ腐の思考回路を鍛えても男性は腐女子にはなれない、と思っててほしいというか……腐女子も腐女子で一種のでけえタコツボなので……続きを読む投稿日:2021.10.12
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。