ガラス張りの誘拐
歌野晶午(著)
/講談社文庫
作品情報
「要求を言います。現金で1億円用意してください」──嫌な仕事が回ってくるとサウナに逃げ込む、さえない中年刑事佐原の娘が誘拐された。世上騒がす連続婦女殺人魔の仕業か!?しかも衆人環視の中で身代金を運べと要求する犯人。刑事を待ち受ける驚天動地の結末とは。鬼才が放つ奇想の超・本格ミステリー!
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商品情報
- シリーズ
- ガラス張りの誘拐
- 著者
- 歌野晶午
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 1995.06.07
- Reader Store発売日
- 2018.11.26
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 316ページ
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この作品のレビュー
平均 3.1 (13件のレビュー)
-
先日読んだ誘拐ミステリ「さらわれたい女」も面白かったのだが、この「ガラス張りの誘拐」もやはり面白かった。やる気のない中年刑事の佐原。妻は数年前に通り魔殺人にあい他界している。親子関係がぎくしゃくしてい…た娘の深雪が誘拐された⁉犯人からの要求は「現金で一億円用意してください」と。しかしその犯人は、身代金をバレバレの状態で運べというではないか。そしていざ身代金を用意して次の指示を待つが、なかなかその後の指示がない。そして娘、深雪の視点でも展開は語られる。養護教諭、占い師…絡まった糸が解ける瞬間が気持ち良い。続きを読む
投稿日:2023.10.15
さて歌野氏がシリーズ物を排して望んだノンシリーズ第1弾がこの『ガラス張りの誘拐』だ。本書の特徴はまず最初に第二の事件があって、第三の事件、そして最後に第一の事件が語られるという構成の妙にある。時系列に…敢えて沿わずに進行する物語はそれ自体トリッキーであり、私は当時観た映画タランティーノの『パルプ・フィクション』を思い浮かべたものだ。
また語られる誘拐事件も犯人が警察を呼べとか、マスコミに知らせろなどと通常タブーとしていることを逆に被害者に強いるところがなかなかトリッキー。読者はその裏に隠された企みを推理しながら読み進めるがなかなか先が読めない。私もその一人だった。
一見何の関係もなさそうな事件が最後になって関連性を持って一つの事件になるというのは現在、連作短編集でよく使われている手法だが、あの手の作品にはちょっとこじつけというか強引さが目立つし、仕掛けが細かすぎて単に作者の自己満足に終っているきらいがないでもない。しかし本作では長編なのにそれぞれの章が独立している短編集のようだという全く逆の味わいがあり、私はこっちの方を好む。読了後私はすぐさま島田荘司氏の『網走発遥かなり』を思い浮かべた。というよりも一読、これはこの作品へのオマージュに違いないと確信した。
逆に云えば、先にそちらを読んでいただけに本作における歌野氏の企みというか試みが二番煎じに感じてしまったのが非常に残念だ。『網走発~』と比べると、どうしても消化不良感が否めなかった。第ニ、第三の事件がもやもやとした形で括られることもあるし、なんだかやはりアイデアを支える技量が不足していると思った。
今までの感想にあったように私もどちらかといえば歌野氏を完成されていない作家として見ており、その成長を見守っているスタンスであるので、どうしても上から目線で批評してしまう姿勢が拭えなかった(これは今ではどうなのか解らない)。そのためもあり、彼の諸作については先達の作品の影がちらついて作品そのものへの正当なる評価が出来ていないように感じることがある。これは反省すべき点だと私も感じている。
さて私が歌野作品から遠ざかって早や20年が経ってしまった。そろそろ彼の作品に触れるべきかも知れない。あの頃と違って私もミステリを数こなし、作品ごとに作者の意図すること、行間に込めたメッセージ、テーマ性、そして当時の社会的背景などを考慮して論じることが、未成熟なりにも出来てきた。次の作品から一読者と一ミステリ作家として対等に取り組んで見ようと思う(すごい偉そうな態度ですな、しかし)。続きを読む投稿日:2016.11.11
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