ぼくの短歌ノート
穂村弘(著)
/講談社文庫
作品情報
人気歌人にして名エッセイストの著者が、近現代の短歌の中からテーマ別に選んだ名作・傑作短歌の数々。「コップとパックの歌」、「ゼムクリップの歌」、「賞味期限の歌」、「身も蓋もない歌」、「落ちているものの歌」、「間違いのある歌」、「ハイテンションな歌」「殺意の歌」……などなど著者ならではの鮮やかな視点と鋭い言語感覚で、一つの短歌から新たな世界を発見する、魅力に満ちた短歌案内エッセイ。
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商品情報
- シリーズ
- ぼくの短歌ノート
- 著者
- 穂村弘
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2018.06.14
- Reader Store発売日
- 2018.06.14
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (11件のレビュー)
-
この本は以前地元の文芸の講座に穂村弘さんをお迎えしたときに、予習として単行本を買って読もうとしたのですが、その時はおそらく通読できなかった本です。
初版の2015年発行のものを買っているので9年程前に…なるかもしれません。
今、少し短歌を勉強して、やっと最後まで読めたという感じです。
『群像』誌上に連載していた「現代短歌ノート」をまとめたものだそうです。近現代の名作から中学生の投稿歌までテーマごとに気になる短歌を集めて、あれこれ考えてみられたそうです。
穂村さんの『はじめての短歌』に「現代短歌ノート」に引いた例歌を挙げて話した部分があるそうで、だから最近読んだ短歌や改悪例が載っているのかと思いました。
こういう歌の解説付きの本は短歌初心者の私には大変ありがたいです。
どのような感じか本書から少し引用します。
p97より
今と永遠の通路
<さりげなくさしだされているレストランのグラスが変に美しい朝> 早坂類
解説略
<目の前のコップがびっくりするくらい光ってて、今日犬が出ていった> 陣崎草子
解説略
<夕光のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝きを垂る> 佐藤佐太郎
写実の名作である。「夕光のなかにまぶしく花みちて」という状況説明の中に、眼前の今が特異点になる予兆がある。そしてポイントは「しだれ桜は輝きを垂る」。実際に垂れているのは「しだれ桜」だが、それを「輝きを垂る」と表現することによって、今から永遠への回路が開かれている。しかも、永遠のまぶしさは、あくまでも「夕光」のなかの「しだれ桜」のそれとして現実的にも説明され得る。この踏み留まり方が、前掲の二首とは決定的にちがっていて、短歌共同体の名歌とされる理由でもある。
<湯口より溢れ井でつつ秋の灯に太束の湯かがやきておつ> 宮柊二
解説略
<金色に砂光る刹那刹那あり屋出でて孤り立ちし広場に> 宮柊二
「刹那刹那」とは今、今、今、今、今のことだろう。ここでは目の前にある「砂」に宿った小さな永遠が、連続的に煌めきを放っているのだ。
佐藤佐太郎は斎藤茂吉の、宮柊二は北原白秋のそれぞれ高弟であり,引用歌はさすがに鍛えられた目の力と手の業を感じさせる。しかし、平成の歌人たちは、このような今が永遠に繋がるプロセスをダルマ落としにすることに、倒錯的なリアリティを感じているようにみえる。結果的に現実的な状況から算出できないほどのまぶしさを抱えた歌が生まれてくる。それに伴って短歌の価値観にも変動が生じているようだ。
冒頭の二首の他にも、こんな極端な例がある。
<唐突に村上姓は素敵だと気づき村上さんに言いにいく> 小林真実
解説略
<流れつつ藁も芥も永遠に向ふがごとく水の面にあり>
とうとう目の前に「永遠」の一語が現れた。「藁」や「芥」が、「グラス」「コップ」「村上姓」などよりもさらにありふれた存在であることに注目したい。「宝石」からの距離が遠ければ遠いほど今から「永遠」への通路は開きやすくなる。そのまぶしさの源にあるのは現世的に確定された価値ではなく、不定形な可能性の塊だからだ。続きを読む投稿日:2024.02.14
⚫︎感想
短歌は全くわからないので、鑑賞の説明を読んだり、改悪例と比べたりしながら「なるほど」と思いながら読み進められた。また短歌集や詩集を読んでみて、好きな作家をみつけられたらいいなと思った。いくつ…か気になる短歌をメモに残しておく。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「髪の毛がいっぽん口に飛び込んだだけで世界はこんなにも嫌」。些細な事象で、あっという間に変わってしまう自分と世界の繋がり。道に落ちているものの歌、会社の人の歌、デジタルな歌、殺意の歌etc.時代の光景を言葉ですくい取り、ドラマチックな日常に誘う三十一文字の魔力。人気歌人の短歌読み解きエッセイ。
続きを読む投稿日:2024.02.17
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