この作品のレビュー
平均 4.8 (8件のレビュー)
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ラッパーのECDの家族とは、という視点で自らの家族、人生を振り返ったエッセイ。
2018年1月にECDが亡くなったことを考えながら読むとどうしても感傷的になってしまうのでは、と思ったが、この本を読ん…でいる間はそんなことも思い出さないほど、生々しく活き活きと語られ、まるでまだ生きている人のような気がした。
それは、語り口が素朴で淡々としていて、友達や仲の良い知り合いに語りかけるような親密な雰囲気があるからだと思う。ECDが語りかけてくれているような本。
内容としては、執筆の途中に、弟の自殺、父の入院、自らの癌が判明と、次々に家族に災難が起こることで、非常にドラマチックなのに、静かな本になっている。
これはECDの人となりなのだろう。
日本語ラップの黎明期に重要な役割を果たした人なのだから、本来、偉ぶったり、自分を大きく見せることもできるとおもうのだが、自分がやりたいことを、淡々といつまでも1個人として取り組んでいる。そんな部分がこの本の静かな雰囲気にも出ているのではないだろうか。
前半は自分の家族の話、父母の話兄弟の話が中心だ。
親たちの世代の核家族への変動によるカエルの卵のように未分化な家族から脱出するために、ロック、劇団、ラップと走っていったこと。
母親の精神が安定せずに、別居、死去、父親の再婚等、紆余曲折があったことなど。
そしてその事実に対して、何故起こったか、家族だからといって、理由を語りあうこともなく(どこの仮定でも、結構そういうものな気がする。重要な重いことほど語りづらいのでは。)、それぞれが何となく腑に落としていながら、悶々としていることが良く伝わる。
この家族の部分だけでも、ECDのアーティストとしての土壌が垣間見れるし、ロックやラップが持っている、凝り固まり滞留しているよどんだ世界に対する、反動のような衝動が、やはりECDの根底を支え、アーティストとして本物たらしめているのではないかと思う。
弟の自殺、父の入院、自らの癌発症、入退院という部分はやはり過酷な内容。
このことが発生したことで、前半の家族の考え方が、後半、より一層深まっている。
そして、ECDというアーティストの本質が、私小説のような形での文学として表出されている。
そもそもECDの本を読もうと思ったのは、ECDの奥さんの植本一子の「かなわない」を読んで、石田家の過酷な状況への捉え方、また植本さんの言っている不満を、ECDがどんな風に感じているのだろう、と興味があったから。
読後、確かに夫婦で見えている風景は違うのだなと思った。
ECDは恋愛などにある程度距離を置いているような部分があり、植本さんは、恋愛中毒症というか、感情が渦巻いているマグマのような状態で、ある意味その関係がうまくバランスとれている部分と、どうしようもなくうまくいかなく空中分解しそうな部分があるのではないかと思った。
2つの本を読むことで、夫婦としての視点の違い、性格の違い、考え方の違いが分かる。そして、どうしようもない夫婦のすれ違いにも気づく。
ECDが亡くなるという、破綻、発散していきそうな夫婦の関係をある意味収束させるような結末。ご都合主義の物語のような、夫婦の最後に哀しみのようなものを感じる。
私は植本さんの本を読んでいる時にも、やはりECDの静かさ、大きさ、鈍感さも含めたアーティスト性に惹かれて読めたのだと思う。
石田家その後という部分にも興味があるので、植本さんお本も読みたい気もするが、今後、植本さんだけの話になると、そのアンカーのような重りがなくなってしまうので、少し辛い気がする。続きを読む投稿日:2018.08.09
大学のとき、Amazonのおすすめに出てきてからタイトルが好きでずっと気になっていたのに読んでいなくて5年以上経って植本さんのファンになり、植本さんの本を読み尽くし、この本を読んでなんとなく感慨深かっ…た。続きを読む
投稿日:2022.02.06
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