七時間半
獅子文六(著)
/ちくま文庫
この作品のレビュー
平均 3.8 (47件のレビュー)
-
いやぁ~面白かった!
ぶらぶら本屋を行ったり来たり彷徨うこと3時間(笑)
書店員さんの熱烈なオススメで手にしたのだけれど、
コレは読んで良かったなぁ~。
1960年に書かれたとは思えない、
(昭和3…5年といえば、東京オリンピックが開催される4年前で、JRがまだ国鉄で、東海道新幹線もなく、ビートルズもストーンズもまだデビューする前ですぜ!)
歯切れのいい、竹を割ったような文章と、
(古さからくる読みにくさは僕は感じませんでした)
ジェットコースターのように
ハラハラドキドキを撒き散らしながら転がるストーリーとスピード感。
乗務員や乗客たちの恋の鞘当てをコミカルに描いたガーリーなポップ感。
昭和のホームコメディドラマを彷彿とさせる安心感。
しかも獅子文六は
当時70歳に近い年齢でこの作品を書いたっていうんだから、驚きです!(笑)
ちくま文庫の帯には、
『今まで文庫にならなかったのが奇跡、こんなに面白い小説がまだあるんだ!』
っとありますが、
この売り文句がまんざら大袈裟じゃないくらい、
ページをめくる手が止められなかったし、
近年再評価著しい伝説の女流作家、尾崎翠が
この作品の著者である獅子文六を好んで愛読していたことを知り、
余計にこの作品にのめり込んだのでした(笑)
舞台は品川~大阪間を7時間半で結ぶ豪華特急『ちどり』。
働き者のウェイトレスとコックの恋、
それをなんとか阻止しようと企む美人乗務員、
そしてその美人乗務員を今日こそ射止めようと列車に乗り込んだ
大阪のコテコテの商売人社長と大学院生とその母親。
さらには総理大臣を乗せたこの列車に
あろうことか爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
車内はパニックに…。
登場人物たちの恋のゆくえはどうなるのか?
走る列車内での爆弾事件の結末は?
たくさんの乗務員と乗客たちの人生模様を同時進行で描いた
ロードムービー風エンターテイメント群像ラブコメです(笑)
(なんのこっちゃ)
登場人物は、
往年の女優、田中絹代に似た、
給仕係リーダーの23歳、藤倉サヨ子。
仕事熱心で誠実、一本気で喧嘩も強いが
唯一ドモリの欠点がある、
食堂車コック助手の矢板喜一。
華族出身でフランスの女優ブリジッド・バルドーに似た
美人乗務員で『ミス・ちどり』の22歳、
今出川有女子(いまでがわ・うめこ)。
浪速の商人でハゲ頭の
『ブリンナーさん』こと、岸和田社長。
東大の大学院に籍を置く27歳の気弱な学生、甲賀恭雄と
藤倉サヨ子の働きっぷりに惚れこみ、
恭雄との縁談を画策する恭雄の母、甲賀げん。
そして岸和田社長に近づく、謎の美女と、
食堂車に陣取り、不穏なひとりごとを漏らす謎の酔っぱらい男。
(他にメインキャラではないけど、矢板喜一の上司で兄貴分のチーフ・コック・渡瀬さんの男気に僕はシビれたし、いちばんのお気にいりキャラでした)
この一癖も二癖もあるメインメンバーが、
入り乱れ、画策し合いながら
果たして列車が大阪に着くまでの7時間半の間に
それぞれの恋は成就するのか?というのがひとつの見どころです。
(この設定だけでもワクワクするでしょ笑)
そして、もう1つの見どころ(読みどころか笑)は、
列車という特殊な環境で働く人たちの裏側が覗ける点。
ウェイトレスや売子さんや
GI帽にスチュワーデス風のセクシーな衣装に身を包んだ『ちどり・ガール』と呼ばれる美人乗務員や
食堂車に勤務するコックさんや車掌まで、
さまざまな仕事をこなすスペシャリストたちの仕事っぷりや苦労、
職員にしか分からない裏側がリアルに描かれているので、
NHKの潜入ドキュメント番組を観てる感覚で楽しめます。
そしてなんと言っても、
物語の舞台を、
走る列車内に限定し、
7時間半の間に爆弾事件を解決し、
恋の結論を出さなきゃいけないという設定が
コミカルな物語に程よい緊迫感を生み、
手に汗握らざるを得ない、
実にいい効果をもたらしています。
列車や飛行機という乗り物は、
何があっても車と違って好きなところで降りるわけにはいかないし、
スピードを出して走るので、
速い乗り物に乗るときの『潜在的不安』っていうのが
必ずあるんですよね。
終盤、列車内に爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
自分がもしや死ぬかもしれないという危機感から、
登場人物たちの心に
さまざまな変化が訪れるのも面白いし、よく練られています。
死を覚悟した若きウェイトレスたちが、
列車に電話が装備されてないことを呪う場面は
さすがに時代を感じさせて、
今がいかに便利かをあらためて、考えさせられました。
(けれど、携帯電話やテレビやネットがないからこそ、楽しい時代でもあったんですよね。旅を楽しむ乗客たちの会話にもそれが窺えます)
便利は想像力も、
創造力さえも奪っていくのかな~なんて
しみじみ考えたりなんかして。
何もない時代に、
これだけ面白い小説が存在してたことに驚きを禁じ得ないし。
恩田陸の群像コメディの傑作『ドミノ』や、
(実は恩田さん、かなり影響受けてるかも笑)
キアヌ・リーブスを一躍スターに押し上げた映画『スピード』が好きな人、
旅行や鉄道好きの人、
ハラハラドキドキに飢えてる人(笑)、
にやりと笑えて面白い小説をお探しのあなたに
オススメします。続きを読む投稿日:2018.01.30
ずっと昔に一冊読んだきりの獅子文六。
電車コメディは昔から好きなジャンルなので手にとってみた。
まずはタイトルから鮮烈。
1960年には東京ー大阪が7時間半もかかったのか。
新幹線の出現前、ちどりと…いう名の特急列車の物語。
このころ、既に、ちどりより速いものが出始めたが、それでも7時間くらいはかかるみたい。
表紙をみた子供から、「名作くんだ!」と言われたけど本それ(笑)。
和む表紙で楽しい一冊に仕上がっている。
ちなみに、作者は『はなかっぱ』の《獅子じゅうろく》博士の元ネタだと教えといた。
ちどりが出発するまでの登場人物紹介や列車のトリビア、準備シーンが長くて少しダレた印象はあるが、わかりやすい恋の鞘当てに、列車テロ予告、泥棒は誰だ、など、ドキドキワクワクのエンタメのもとがぜんぶきれいに並ぶさまはまさに幕の内弁当。
そして、幕の内弁当というか、駅弁も楽しいけれも、食堂車にはロマンがあるよねという作品。
おもに食堂車が舞台となる。
このスピード感だからこその食堂車。
こんな時代の空気を想像して楽しくなる。
でもまあ、客車もタバコ当然の時代、紫煙もくもくの電車は辛いよねーとも思った。
有女子のラストには、ちょっと驚かされたけど、まあまあ順当な物語だと思った。
泥棒の正体もわかりやすくて良い(ニッコリ)。
個人的にはこの時代の自由な表記が大好きなので、文六らしい読点の付け方やカタカナ表記が出るたびにニヤニヤしてしまう。
《チャーンと》とか可愛い。
車内放送の出だしの《ミ、ナ、サマ》も好き。
あとは頻出する関西弁?があまりわからなくて困った。
ネキってなんだろう?
姉貴じゃないのはわかるけど、と調べたら、ネキは近く、の意味。
ほかにも関西弁満開だけど、文六は上手だなあ。横浜の人なのにすごい。
そのほかの用語メモ。
メレボは、雌列車ボーイの略。いろいろひどい。
ちぼ、スリのこと。
プルニエ定食はミックスフライのことらしい。
列車ネタ、列車用語が楽しかった。
いずれ、悦っちゃんを読んでみたい。続きを読む投稿日:2024.05.04
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