いつも彼らはどこかに
小川洋子(著)
/新潮文庫
作品情報
たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。――動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。
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商品情報
- シリーズ
- いつも彼らはどこかに
- 著者
- 小川洋子
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2016.01.01
- Reader Store発売日
- 2016.06.17
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (41件のレビュー)
-
時間を忘れて一気に読破したくなるサスペンスフルな小説もいいけど、
不思議でシュールでユーモラスな1つの短編の世界に
1日の終わりにじっくりと浸るのも読書の醍醐味だ。
本書はまさに寝る前に1話ずつ
ゆ…っくりと読んで欲しい短編集。
たちまち非日常にさらってゆく魔力と甘美な陶酔。
残り香のように漂う異国情緒。
小川作品に顕著な、
物語の中、息を潜めた死の匂いとうっすらとした狂気。
どの話も様々な動物たちをモチーフに、
そこにしか居場所のない
小さな場所に生きている人を描いている。
スーパーマーケットで試食品のデモンストレーションガールをする女性は
狭いモノレール沿線から抜け出せない自分の心情を、
フランスの凱旋門賞に向かうディープインパクトの帯同馬ピカレスクコートに重ねて彼の無事を祈る
『帯同馬』、
交流のあった異国に住む翻訳家の死を機に
彼の息子とその恋人に会いに行く小説家の「私」。
ビーバーの小枝を登場人物に見立てて翻訳作業にかかるシーンが詩情に溢れ心に残った
『ビーバーの小枝』、
ドールハウスを作ることに没頭する引きこもりの妹と
それを支え手助けする兄と祖父。
まるでラッセ・ハルストレム監督の「ギルバート・グレイプ」や
クレイグ・ギレスピー監督の「ラースと、その彼女」、
若きジョニー・デップとメアリー・スチュアート・マスターソンの「妹の恋人」などを彷彿とさせる
微笑ましく暖かな世界観がかなりツボだった
『愛犬ベネディクト』、
何かしらの理由で旅ができない人のため、身代わりとなる品をガラス瓶に入れ、依頼主に成り代わって指定のルートを巡る仕事をしている女性。
幼くして亡くなった弟への美しい思い出を胸に旅をする彼女がどこか哀しい
『竜の子幼稚園』
などが特に印象的だった。
それにしても小川洋子の物語る腕力、恐るべし!
試食品を食べに毎日スーパーマーケットに現れる嘘つきな小母さんや
仕事の帰り道にアイスクリームを買って食べることを唯一の楽しみにしている売店のおばさんの孤独に胸を打たれ、
「ハモニカ兎」で野球というスポーツを初めて見た人たちの反応に笑い、
落丁本だけを扱う「落丁図書室」に心ときめき、
自分の誕生日と同じ日付の賞味期限が記された食品を宝箱にコレクションする男の子にシンパシーを感じ、
寄生虫に侵された蝸牛が床中を這い回るシーンのホラー的展開に戦慄を覚え、
旅ができない依頼人の身代わりをガラス壜に詰め、各地を旅する仕事には
果てしない浪漫を感じて、
しばし僕自身、この物語の奇妙な登場人物たちと
一緒に旅をした気分に浸ってしまった。
そして、なんと巧みな想像力なのだろう!
ページをめくるたびに
異国の御伽噺を読んでいるかのような錯覚に陥ること必至の極上の心地良さ。
メールや電話なんか無視してベッドに潜り込み、
1日の終わりに本書を慈しむようにめくる幸せは
何ものにも代え難い至福の時を約束してくれる。続きを読む投稿日:2018.01.13
気に入った2編
- ビーバーの小枝
緩やかに繋がり関係し合ういのち。
一生懸命に手元の小枝を食んで、残るのはその痕跡だけ
- チーター準備中
特別なコトはなくて、誰もがかけがえのない特別投稿日:2024.05.05
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