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燃えあがる緑の木―第三部 大いなる日に―
大江健三郎(著)
/新潮文庫
作品情報
教会を離れた私が性の遍歴から帰還すると、襲撃を受け障害者となったギー兄さんは、遥かに大きな存在となっていた。しかし、戦闘力を増す農場派と巡礼団の対立が深まり、巨大化と外的緊張の中で分裂の危機を迎える教会のメンバーに、ギー兄さんは最後の告白を行った。そしてその夜「緑の木」が燃えあがる!「神」に極限まで近づき、なお新たな道を求めるライフワーク、完結編。
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商品情報
- シリーズ
- 燃えあがる緑の木
- 著者
- 大江健三郎
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 1998.03.01
- Reader Store発売日
- 2014.06.27
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- シリーズ情報
- 既刊3巻
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この作品のレビュー
平均 4.4 (9件のレビュー)
-
『魂のこと(魂の救済)』という個人的な追及と『救い主』という宗教集団の長としてのギャップ:ギ―にいさんの想いを考えることは難しい。
第一部・二部を読んだのが1年半ほど前なので、途中記憶を手繰りながら何とか第三部を読了。何といっても『燃え上がる緑の木』は大江小説前期の集大成。この作品は難解ではあるが、読後としては興味深い。結局のとこ…ろ、『魂のこと』に専念したいと言って、ある意味で世俗からの人生を断ち切ったギ―にいさんの想い・生涯は何だったのか。『救い主として集団から祭り上げられてしまったギ―にいさんの救い主に繋がるものとしての責任感』と『魂のことを全うしたいという個人的な希求』とのギャップ、痛ましいまでのギ―にいさんの想い、本小説で一人称で登場する半陰陽・サッチャンの気持ちをキチンと確認するために、もう一度、第一部から続けて読みなおそう。
【第一部~第三部 通読】
かって散発的に読んだ一部~三部を立て続けに読んだ。前回読了の際に、何となく空しく死んだと思われたギ―にいさんの死が、キリスト教でいうイエスの再来、しかも排他的な宗教の再来ではなく、より普遍的な“宗教=精神の拠り所”となる物語の再来と感じる。『おのおのが辿り着く場所で、一滴の水のように地面にしみ込むことを目指そう!』・・・純文学に不慣れ故、読了までしんどかったけど素晴らしい物語だった。続きを読む投稿日:2016.06.03
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燃えあがる緑の木
三部作ということで長かったですが、本当に読んで良かった。
今年は大江健三郎を読み続けてきました。後期の作品はまだ1作も読んでいませんが、一旦ここで大江さんからは離れようと思います。
…この作品を自分に落とし込むのに十分な時間が欲しいため、そして後述しますが、”勉強”による“集中”も行なっていきたいため…。
以下、感想ですが、冗長で妄想まじりです。
ギー兄さんは、膨張しすぎた自らの教会の構成員に対し、“魂のこと”にあらためて個人個人がそれぞれ専念するため、こう説教します。
「本当に“魂のこと”をしようとねがう者は、水の流れに加わるよりも、一滴の水が地面にしみとおるように、それぞれ自分ひとりの場所で『救い主』と繋がるよう祈るべきなのだ。」
さらに、こちらは引用されている、哲学者シモーヌ・ヴェイユの言葉。
「神は不幸の苦しみを慰さめない」
これらの言葉に触れて考えたこと。
第一部、第二部と「“魂のこと”=魂の救済」と解釈して読んできましたが、私は部分的に間違っていたことに気づきました。
孤立無援で真っ暗闇の“道”(=“魂の暗夜”)を進んでいく、光がどこかに見えてくるかはわからない、光の方から近づいて来てくれることも期待できない、だがしかし、私にできることはただ一つ、光が現れることを、孤独に強く祈り続けること…!
これが私の“魂のこと”の再解釈です。
魂は救済される、と私たちが能動的に祈り続ける、この効果のアヤフヤな祈り自体が魂の救済であり、超越者の差し伸べる手を待ち続けること自体は救済に繋がらない、これが内実だと思います。
この再解釈に伴って思い出したのは、高校生の頃に聞いていたBon joviの誰もが知る曲の歌詞。
“We’re half way there/ Livin’ on a prayer”
これは前述した、魂の暗夜で祈る私(たち)そのものではないか?
さらに話を広げて、一時期YouTubeでよく流れてきた、電車の中でBon joviを熱唱するボンジョビおじさん。
彼はBon joviの詞を祈りの言葉として、自分ひとりの場所で(実際には電車内で周りに沢山人がいたわけだが)祈り続けていたのではないか?
そしてある時、周りの人々まで彼につられて熱唱しだす。それは、彼のアヤフヤな祈りが、彼の祈りの中心にある“何か”に届いた、その顕現なのではないか??
その大合唱の光景は、おそらく彼自身から見ても、部外者の私が映像として見ても、まさに「一瞬よりはいくらか長く続く間」の光景だった…
もうひとつ、私の凝り固まった考えを、解きほぐし良い方向へ矯正してくれた話がありました。
またシモーヌ・ヴェイユですが、
「祈りが注意力によってなりたつ」
そしてヴェイユは著書で、祈りに必要な注意力・集中力は、学校の勉強に取り組む時の注意力・集中力に鍛えられるといいます。(今読んでいる『神を待ちのぞむ』より)
私はとくにここ最近、中期の大江健三郎やイェイツを読んでいて神秘主義(オカルティズム)に傾倒しすぎることを恐れて、オカルトと、いわゆる学校での合理的な勉強(自分は理系なので)とを、意識的にキッパリと隔てて考えるようにしていました。
だからこそ、勉強での集中力、祈りの注意力がお互いを増強し合っている、すなわち隔たりがあるどころか、良い結びつきをもつ両者をひとつながりに考えることに、かなり衝撃を受けたのです。
そしてこの2つの対極が、しかししっかりと繋がりをもつイメージ。これは作中で何度も登場したイェイツの”Vacillation”の、以下の冒頭そのものではありませんか?
“Between extremities / Man runs his course;”
最後に、僕のこれからの“魂のこと”の話だけ。
前述した「祈りが注意力によって成り立つ」ことについてですが、人が人に眼を向けるとき、または気を配るとき、このようなときも“集中”“注意”を向けているのであって、祈りの一つの形態であると大江さんは言います。
このような場面を読んでいて、ふと思い出したのは、そこそこ親しくなったバイト先の社員さんが辞職する際に私にくれた手紙。
「優しくて色んな人のことを見てて、考えてくれるんだろうな〜と思います。」(晒してごめんなさい)
第一部、第二部と読んできて、私は“魂のこと”なんて今まで取り組んでこなかった、これからも“魂のこと”に向かう分岐点に立ったとき、ちゃんとそちらへ向かうことができるだろうか、と煩悶してきました。
しかし、この手紙を思い出した後、私はしっかり祈ってきたのだ、無意識に“魂のこと”に取り組んできたのだと、慰められるようでした。
これからも、自分の内外どちらにも注意を向けていきたいと思います。
この祈りを忘れないように、作中でも祈りの言葉とされてきたこの英単語を、私も絶えず心の中で響かせていきます。
———Rejoice!続きを読む投稿日:2023.08.18
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