ちいさこべ
山本周五郎(著)
/新潮社
作品情報
江戸の大火ですべてを失いながら、みなしご達の面倒まで引き受けて再建に奮闘してゆく大工の若棟梁の心意気がさわやかな感動を呼ぶ表題作、藩政改革に奔走する夫のために藩からの弾圧を受けつつも、真実の人間性に目を見ひらいてゆく健気な女の生き方を描く『花筵』、人間はどこまで人間を宥しうるかの限界に真正面から挑んだ野心作『ちくしょう谷』など、中編の傑作4編を収録する。
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この作品のレビュー
平均 3.7 (20件のレビュー)
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4つの物語から成る短編集である。どの物語も歴史を設定に置いた時代小説とよばれるものである。
一つ目の物語”花筵”は、藩の政治における不正やそれをめぐる武家同士の対立を、何も知らずに武家へ嫁いだ主人公…•お市の視点から描いている。起承転結がはっきりしており、ラストへと向かう展開もまさに時代小説の王道として描ききっていると思う。
二つの目の物語”ちいさこべ”は、火事により両親を失い、若棟梁となった大工の茂次が、お店の再建、火事により孤児となった子供たちの世話などに奔走する物語である。主人公は茂次なのだが、茂次の心の底にある本音の部分が始めは描かれない。それ故、茂次の頑固さに周囲の人々と同様に苛立ってしまうだろう。しかし、物語が進み、茂次の心情が明らかになると、底にあった誠実さに胸を打たれる。そういった物語の展開に沿った心情の描き方などの上手さに唸ってしまう。
三つ目の物語”ちくしょう谷”は、はたしあいによって兄を亡くした朝田隼人が、志願し木戸という部落の番頭を勤めることとなる。しかし、木戸は兄とはたしあいを行った西沢半四郎が勤める所でもあったのだ。このような流れがありながらも、物語の中心となるのは復讐ではない。木戸の流人村、通称ちくしょう谷に存在する退廃、諦め、人の卑しさとの戦いである。村の現状を知り、改善していこうと孤軍奮闘する朝田隼人であるが、長年わたり疎外されてきた村に漂う暗澹とした雰囲気に迷い、誘惑に負けそうになる。そこに西沢半四郎が絡み、話は進む。まるで修行僧のごとくひたすら苦難に耐えていく朝田。この物語ではそれら全てが解決はしない。それら苦難と対峙しながら、朝田がある決心を固めるところまでなのだ。しかし、この記述に清々しい気持ちになるだろう。ちくしょう谷が象徴している負の部分、貧困と無教育、何の娯楽もなく性を貪る状態。それらは現代でも世界中に見受けられる光景だ。そういった現代との共通点にも考えさせられるものがある。
四つ目の物語”へちまの木”は、千二百石の旗本の三男•房二郎は養子に出されるのを拒み、家出をする。居酒屋で知り合いとなった木内桜谷の勤め先、出版社•文華堂に自分も働かせてもらえることとなる。しかし、そこで目にしたのは市井の人々の暮らしぶり、虚実関係なく売れるネタなら何でも良いといった文華堂の姿勢に辟易し、自分の考えの甘さや将来の見えない暮らしの不安と対峙させられる。この”へちまの木”も”ちくしょう谷”で見られた市井の人々の暮らしの中にある醜さやずる賢さ、漂う悲しみを描いている。時代小説を読む時、その華やかさや人情に目を惹かれがちであるが、そういった時代にも貧困や嘲笑が町にあふれていたことを忘れるべきではないだろう。そういったことを改めて思い出させてくれる作品でもある。続きを読む投稿日:2012.04.30
あんまり頭に入ってこなかったなぁ。
改めて思いましたが、山本周五郎って連続して読むにはちょっとしんどい、個人的には。
たまにふと手に取って何気に読むのが一番相応しい気がします、暗さがベースにある作家だ…けに。続きを読む投稿日:2021.05.16
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