栄花物語
山本周五郎(著)
/新潮社
作品情報
徳川中期、時の先覚者として政治改革を理想に、非難と悪罵の怒号のなか、頑なまでに己れの意志を貫き通す老中田沼意次――従来、賄賂政治の代名詞のような存在であった田沼親子は、商業資本の擡頭を見通した進取の政治家であったという、新しい視点から、絶望の淵にあって、孤独に耐え、改革を押し進めんとする不屈の人間像を、時流に翻弄される男女の諸相を通して描く歴史長編。
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この作品のレビュー
平均 3.7 (20件のレビュー)
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栄花物語
田沼意次と言えば悪政というイメージばあったが、こんな見方もあるのかと興味深く読んだ。一方から見れば英雄でも反目する側からすれば奸物のよい例である。貨幣経済で台頭する大商人と幕藩体制を守ろうとする意次の…争いは、時代の流れの中で悲壮感を感じる。幕府を守るという大儀を見いだし命を賭して立ち向かう姿に武士としての矜持を感じた。そんな時代をを主人公青山信二郎を通して描いていて読みごたえがあった。
続きを読む投稿日:2016.02.26
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山本周五郎の長篇小説『栄花物語』を読みました。
『日日平安―青春時代小説』、『松風の門』に続き、山本周五郎の作品です。
-----story-------------
非難と悪罵を浴びながら、意志堅…く改革に取り組んだ老中田沼意次を描く感動の歴史長編。
徳川中期、農村が疲弊し、都市部の商人が力を持ち始めた転換点。
老中首座の重責を担う田沼意次は、貧者への重税、賄賂政治、恣意的人材登用と非難にまみれていた。
――悪政の噂は本当なのか。
出所はどこなのか。
絶望の淵にあっても、孤独に耐え、改革を押し進めた田沼意次という不屈の人間像を新しい視点から描く傑作歴史長編。
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読売新聞東京本社が発行する週刊誌『週刊読売』に、1953年(昭和28年)1月から9月まで連載された作品です。
江戸時代中期、老中田沼意次は金権政治家の汚名にまみれていた… 田沼批判の戯文を書いて出頭を命じられた旗本の青山信二郎は、意次と対面し、その清廉な人柄に引きつけられる、、、
しかし、失脚をもくろむ反田沼派の魔手はいたるところにのびていた… やがて、最愛の息子、意知が城中で斬りつけられ、意次は絶望の淵へと追いつめられてゆく―。
田沼意次曰く、「たとえゆき着くところが身の破滅だとしても、そのときが来るまではこの仕事を続けてゆく、いかなるものも、おれをこの仕事から離すことはできない」田沼意次父子を進取の政治・経済改革者として大胆に捉え直し、従来の歴史観を覆した名作! 経済小説の先駆でもある。
田沼意次は賄賂政治の代名詞のような存在という先入観、イメージがあったのですが… 本作品は、田沼意次、意知父子の視点だけでなく、田沼父子に関わることになる、下級武士の青山信二郎や河合(藤代)保之助、佐野善左衛門、一揆を率いた盗賊の新助(もとは人足の千吉)等の複眼的の視点から、その存在を見直し、商業資本の擡頭を見通した進取の政治家であったという、新しい視点から、絶望の淵にあって、孤独に耐え、改革を押し進めんとする不屈の人間像が描かれていましたね、、、
そして、田沼父子のことだけを描くのではなく、著者らしい市井のドラマ… 男女と友情、政争、思想と家族等も巧く織り込み、時代の流れに振り回される人々のドラマが重層的に展開するところが印象的でしたね。
新助が息を引き取る際に、信二郎が呟く、
「~前略~ 人間は生きている限り、飲んだり食ったり、愛したり憎んだりすることから離れるわけにはいかないものだ、どんなに大きな悲しみも、いつかは忘れてしまうものだし、だからこそ生きてもゆかれるんだ― ~後略~」
という言葉が印象に残りました… 当たり前なことなんだけど、改めてそうなんだよなー と感じましたね。続きを読む投稿日:2022.11.05
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